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●12月23日
もう1つの期待のニューカマー     Epsilan EuskadiがEE-LMP1-07の風洞実験モデルを公開

Photo:Epsilan Euskadi/Special Thanks:Mike Fuller(mulsanne's corner)

 2年ほど前から、イプシロン・エスカディがLMPプロジェクトを推進していることが知られていた。最初の計画は、“屋根無し”のLMP2カーの販売を目論んでいたようだが、次第に自身のファクトリーチームによるP1プロジェクトに変化して、“屋根付き”のP1カーの開発が進められていた。
 しかし、これまで、イプシロン・エスカディから提供されたのは、コンピューターによって作られた3Dイラストだけだったため、新規参入者の計画の進展具合を確認するのが先と判断していた。

 ところが、彼らは本気だったようだ。2007年から本格的な開発に取り組んみ、チーフデザイナーとしてジョン・トラビスを雇うと、イタリアのエアロラボの風洞で12週間、600時間!に及ぶ風洞実験を行っていた。エアロラボの名前を知らない方々も多いだろうが、ボローギャ近郊のサンタアガタにある旧フォンドメタルの風洞をベースとして、フォンドメタルの後継であるフォンドテックとダラーラのジョイントベンチャーをして誕生した風洞施設だ。ミュルサンヌコーナーのマイク・フラーによると、プジョー908やポルシェRSスパイダーも使用しているらしい。
 600時間とは、新規参入チームでありながら、思い切った決断によって大きな費用を投入したのだろう。

 イラストを見ると判るように、オリジナル路線の童夢と比べると、どうしても屋根を被せたポルシェRSスパイダーの印象は拭い切れないが、非常に細かい部分まで実験してデザインされたのが理解出来る。

 最先端の空力デザインと違って、幾つかの気になる点が存在する。たぶん、新規参入チーム故、彼らがACOレギュレーションを100%解読出来てないのだろうが、モノコックの作り方や形状等に、レギュレーションブックを真っ正直に作った部分が少なくない。そのため、モノコックの完全な後ろにエンジンは取り付けられる。そのため、前後の重量配分が心配となってしまうが、どうやら、ラジエターを前に積んで前後の重量配分を良好に仕立てようとしているようで、サイドカウルのかなり前方に開口部が開けられている。

 組み合わせられるエンジンはジャドのGV5.5S2だ。童夢S102と同じ1月にモノコックが完成して、たぶん、同じ頃にクラッシュテストを行い、2月にシェイクダウンすることとなるだろう。
 カーボンファイーバーコンポジット製モノコックの開発について、ダラーラの関与をうかがわせる意見もあるため、大きな予算によって、確実に開発が進められているのだろう。
 もし、トランスミッションや各種コントロールシステムに致命的な失敗が無いのであれば、童夢と共にガソリンエンジンカーのリーディングカーとなるかもしれない。
 どうやら、2008年のルマンが、大きくレベルアップすることは間違いないようだ。

●12月22日
2008年のアジアでのLMS開催は11月2日の上海!  2009年10月にFUJIで開催!?

Photo:Sports-Car Racing

 11月末ACOは、2009年から日本を中心として、5年か6年の開催を約束出来るアジアのルマンシリーズの体制作りに取り組んでいること公表している。JLMCが復活する際、FUJIスピードウェイとツインリンクもてぎで開催される可能性が高いことも明かとしていた。
 同時に、2008年には単独のイベントとしてFUJIスピードウェイで開催される可能性も示唆した。しかし、9月29日にシンガポールでF1GPが開催されることが決定したため、FUJIスピードウェイでのF1GPは10月12日にスケジュールが移動されてしまった。つまり、どう考えても、10月にFUJIスピードウェイでLMSを開催するのは不可能と思われていた。

 今週エンデュランス・インフォからの連絡によると、非公式であると前置きして、2008年にアジアでのLMS開催は、中国の上海であることを確認したと言う。スケジュールも11月2日に決定したようだ。
 しかし、現在に至っても、ACOはブラジルの主催者と、2007年の後処理を含めた話し合いを行っているため、たぶん、1月まで正式に発表されることはないだろう。

 では、日本での開催はどうなってしまうのか?と言うと、2009年10月にFUJIスピードウェイでの開催を目標として、話し合いは進んでいるようだ。たぶん、2009年の日本F1GPは鈴鹿で行われるため、空いた10月のスケジュールに誘致されるのだろう。
 当方が直接ACOと話合ってないため、エンデュランス・インフォに対して、開催件料について質問したところ、「話し合いが完了してない理由は、そこだろう」と、彼らも同じ意見であることを確認出来た。

 FUJIスピードウェイと上海だけではシリーズとは言えないから、ACOは、それに、もてぎやSUGOを加えたいのだろうが、フェラーリGT1エンジンが有利となっても、即一ツ山レーシングがプロトタイプカーに復帰するとは考え難く、日本国内の冷え込んだ状況を考えると、困難が予想される。
 2008年の上海での開催について、ALMS(アジアンルマンシリーズ)やCLMS(チャイナルマンシリーズ)等、名前は上がっているらしいが、1回の開催でシリーズを名乗るのは無理がある。参加チームのほとんどがLMSから遠征するため、現実的には、2007年のブラジルのようにLMSの1戦となるだろう。
 と言う事は、それにFUJIスピードウェイを加えれば、事実上の世界選手権が実現する。

 可能性の話しとなってしまうが、このNEWSが知らされた時、ちょうど童夢がS101.5を使ったテストをSUGOで行っていた。その時、当方は開催される場所が上海であることを確認してなかったが、童夢の鮒子田寛ディレクターは、童夢が上海のLMSへ遠征する可能性が高いことを認めていた。
 もちろん、その際に中国へ上陸するのは、最新スペックのS102クーペとなる。

●12月22日
童夢が再びS101.5を使ったシステム開発テストを実施

Photo:Sports-Car Racing

 童夢は、11月にSUGOとFUJIスピードウェイで、S101.5を使って、S102クーペのためのシステム開発テストを行っている。このテストの最大のテーマは、パドルシフトシステムだった。しかし、その時はパドルシフトシステムについて、充分な成果を上げることが出来なかったようだ。

 S102クーペには、ザイテック製の電磁石を使ったパドルシフトシステムとXトラック製Type529をベースとした専用のトランスミッション、そして、現在最強のP1ガソリンエンジンであるジャドのGV5.5S2 5.5リットルV10エンジンが使われる。しかし、Xトラック製トランスミッションとジャドエンジンは、これまでザイテックの電磁石を使ったパドルシフトシステムと組み合わせられたことがなかった。
 データを収集するためには、必要不可欠なテストだったのだろう。

 11月のテストの後、慎重に開発を行って、やっと彼らは終了試験に臨むこととなった。
 しかし、FUJIスピードウェイや岡山等は、スケジュールが一杯で、コースを借りられなかったため、雪の不安はあるものの、19日と20日SUGOでテストは行われた。

 12月後半のSUGOであるから、当たり前かもしれないが、非常に低温の中でのテストとなった。しかし、天気に恵まれたことから、順調にテストは行われた。テストドライバーは片岡達也が担当した。
 1日目、まだ、シフトチェンジのタイミングとエンジンコントロールが完全に一致しないようで、彼方此方のコーナーで片岡達也が、慌てる場面もあった。しかし、次第にタイミングは一致するようになって、2日目になると、全開での走行も可能となった。

 非常に低温であるため、タイヤもマッチしている訳がないが、連続走行を行いながら、片岡達也の操るS101.5は非公式のコースレコードを樹立している。

詳しいテストの状況は、こちらをご覧ください。
http://www.dome.co.jp/news/racereport/dt_370.html

 システム開発テストが一段落したため、次ぎのテストは、たぶんS102クーペのシェイクダウンとなる。
 9月にディメンションを公開した後、細かい部分の開発が本格的に行われるようになったため、外側のデザインだけでなく、様々な部分が変わっている。例えば、9月にホイールベースを2,950mmと発表しているが、その後の開発によって2,900mmまで短縮されている。他にも多くの点で進化している。
 現在モノコックの製作が進んでいるため、予定通りであれば、1月末にクラッシュテストを行って、その後組み立てを行い、2月末に日本国内でシェイクダウンテストは行われる。
 現在40%スケールモデルを使った風洞実験が行われて、細かい部分の煮詰めが進んでいるため、先週公開された風洞実験モデルから、さらに細かいデザインは手が加えられることとなるだろう。

●12月22日
ACOが2008年レギュレーションを発表    最も有利なLMP1エンジンはフェラーリ550用V12か!

Photo:Sports-Car Racing

 これまでの状況を知らない方には理解出来ないかもしれないが、来年の3月には、このレギュレーションを使った最初のレースが行われるにも関わらず、ACOは、昨日2008年のレギュレーションを発表した。しかし、新しいレギュレーションの総てが非公開だった訳ではない。大筋では、9月にACOが公表した内容と考えても間違いないだろう。GT1とGT2カーに大きな変更はなく、大きくモデファイされたのは、LMP1とLMP2の2つのプロトタイプクラスに集中している。

 LMP1は、車重が25kg軽い900kgとなる。さらに、ガソリンエンジンカーは、リストリクターの大きさを3%大きくされる。LMP2は、逆に50kg重い825kgの車重となる。燃料タンクの容量も10リットル小さい80リットルとされる。
 これらの変更は、1.7%のラップタイムの差を設けて作られたにも関わらず、LMP2クラスの方が有利と判断されたことから、LMP2を遅くする一方、LMP1クラスに限ると、ガソリンエンジンカーが大きく不利であることから、ガソリンエンジンカーの性能の引き上げを目標としている。

 同時にLMP2にも、ディーゼルターボエンジンの項目が追加された。LMP2の場合、LMP1と違って、プロダクションエンジンのパーツを使うことが条件で、排気量も4.4リットルまで許される。BMWやメルセデス等、DTM用のレーシングエンジンと基本設計が同じプロダクションディーゼルV8ターボエンジンを持つメーカーが幾つか存在するため、今後採用するチームが増えることだろう。
 また、バイオ燃料についても、取り敢えず燃料タンクの項目が追加された。バイオ燃料を使う場合、LMP1とLMP2が、それぞれ規定の燃料タンクの大きさを10%大きく出来る。

 ところが、昨日発表されたレギュレーションブックを良く読んでみると、最も大きなポイントは違うページに書かれていることが明かとなった。

 ファクトリーチームが望んでいるディーゼルターボエンジンは、メーカーの参加を促進するACOによって、同じ大きさのガソリンエンジンと比べると、理論上200馬力近く大きな出力を発生することが出来る。2007年の場合、その差は100馬力以上であったと考えられている。
 もちろん、ガソリンエンジンを使うレーシングチーム(多くはプライベートチームだ)から、大きな不満の声が聞かれたため、ACOは、ガソリンエンジンのリストリクターを3%だけ大きくした。
 しかし、ガソリンエンジンを使うプライベートチームのポテンシャルアップを構想する課程で、ACOは、非常に面白い方法を編み出した。

 ちょっとだけ見る方向を変えてみると、現在GT1クラスには非常に魅力的なエンジンが存在している。6リットルから7リットルの大排気量から600馬力前後を絞り出して、高性能と信頼性を両立している。しかも、これらのGT1エンジンは、一部の人々しか知らない、ジャドやAERと言った、レース業界のエンジニアリング会社の名前でなく、フェラーリやアストンマーティンと言った、スポーツカーファンでなくても、誰でも知っている魅力的な名前が付けられている。

 しかし、これらのGT1エンジンは、レース専用で作られた訳ではないため、大きく重いだけでなく、LMPカーに求められる、エンジンをフレームとして活用することも配慮されていない。
 そこで、ACOは、GT1エンジンをLMP1カーに使う場合、極端に大きなリストリクターを与えた。
 どれくらい大きいかと言うと、現在最強のガソリンP1エンジンと考えられるジャドの5.5リットルV10に与えられるリストリクターが32.9mm×2(それでも2007年と比べて0.5mm拡大)であるのに対して、同じ5.5リットルのGT1エンジンは33.7mm×2まで拡大される。
 33.7mm×2のリストリクターは充分に700馬力を発生可能と考えられる。つまり、純レーシングエンジンであるジャドV10より、フェラーリやアストンマーティンに積まれているGT1エンジンをベースとすると、約50馬力大きな出力を得ることが可能となる。

 それでもディーゼルターボより少ないことは事実だが、5.5リットルV12のディーゼルターボエンジンは、補器類を総て含めると250kg以上の重さとなるため、生産エンジンの発展型と言っても、GT1エンジンには大きなアドバンテージが存在するのは明かだろう。

 明かに有利な内容だが、事実上のレーシングエンジンを積むGTレースカーも存在するため、同時にACOは、GT1エンジンの概念をホモロゲイションエンジンとして明かとした。あまり知られていないが、これまでもLMP2では、純レーシングエンジンとは別にホモロゲイションエンジンの項目が存在した。LMP2用のホモロゲイションエンジンは、純レーシングエンジンが3.4リットルであるのに対して、600cc大きい4リットルが許されていた。ホモロゲイションエンジンは、年間1000機以上生産されるプロダクションエンジンをベースとしていると同時に、ストレスマウント出来ないことが条件となっている。このホモロゲイションエンジンのレギュレーションが、今回明確に規定された。

 しかし、現在のGT1クラスの最大排気量が8リットルであるのに対して、LMP1に使う場合6リットルに制限される。
 他にも幾つかの工夫が盛り込まれているが、フェラーリ550や575、そしてアストンマーティンDBR9の6リットルV12、排気量を6リットルに減らしたコルベットやサリーンのプッシュロッドV8が、一躍注目の存在としてクローズアップされたのは言うまでもない。

 詳しいことは判らないが、GT1エンジンをLMP1へ導入するプランについては、元々2010年に新しいLMPカーとして、1990年代のかつてのGT1カーのようなレギュレーションを導入するのに合わせて、水面下で構想されていることが知られていた。しかし、それが突然現れた理由は不明だ。
 しかも、ACOに近い人々の間でも知られてなかったようだ。なぜなら、先週ORECAは、2008年にORACAクラージュにジャドV10を積むことを公表しているのだ。ORECAは、2006年からサリーンS7R用としてフォードV8の開発を行っている。もし、ド・ショーナックがこのことを知っていたら、間違いなく、2008年にORECAクラージュにはフォードのプッシュロッドV8を積んだことだろう。
 12月末に発表されても、エンジン本体のモデファイは間に合ったとしても、ストレスマウントでないGT1エンジン故、LMPカーには強固なサブフレームを追加しなければならないのだ。どんなに優秀なコンストラクターであっても、6月までに仕事を完了出来るとは思えない。

 もしかしたら、現在ORECAはジャドとの契約を解約して、フォードのプッシュロッドV8を積むため、リアのサブフレームのデザインを開始したかもしれないし、未だにデリバリー先を発表しないローラの“屋根付き”のLMP1カーは、フェラーリ550エンジンを積むのかもしれない。

●12月15日
21世紀の童夢デザイン   童夢がS102の風洞実験モデルを公開

Photo:Dome
 左が25%スケールモデルによる風洞実験、右が40%スケールモデルによる風洞実験だ。見たいところを巧妙に隠しているが、童夢
デザインの先進性は明かだ。


 9月に公開されたS102のイメージスケッチは、非常に怪しいものだった。たぶん、ACOのレギュレーション通りの寸法をシュミレーションした3Dイメージをベースとして作成されたものだっただろう。しかし、フロントノーズ等、細かなデザインは何も手を加えられてないだけでなく、最も不可解だったのは、このイメージスケッチには童夢らしさが、まったく感じられないことだった。そのため、当方も、このイラストに対して、かなりの部分がカモフラージュされているという説明を加えて、掲載しなければならなかった。

 どうやら、その頃、決まっていたのは基本的なディメンションだけで、25%風洞モデルによる風洞実験のが盛んに行われて、毎日S102のカタチは変化していたようだ。
 11月に入って、やっとS102基本的なカタチは決定して、40%風洞モデルによる風洞実験も始まった。現在、童夢では25%スケールモデルと40%スケールモデルの両方を使って風洞実験が行われている。

 S102の基本的なデザインが決まったところで、大まかなS102の性格が見えてきたようだ。
 掲載した写真は、S102デザインのポイントを巧妙にカモフラージュしている。何処がポイントであるかは、ルマンカーを開発して苦労したエンジニアでなければ判らないだろうが、フロントノーズ床下から、どうような方法で空気を吸い出すのか? 誰もが気になるポイントだろう。
 S101時代とは違って、童夢は相当ライバル達、特にメーカーを警戒しているようで、2ヶ月後にS102の1号車が完成するまで、詳しいデザインの公開を拒んでいる。しかし、S101Hbで苦労してS101.5を作って、プジョー908の実験まで行った童夢が、中途半端なデザインを行うことはないだろう。
 このような童夢の地道な勉強や苦労は、ルマンへの参加を臭わせながら、10年近くの間何も行わないでいる日本のメーカーも見習うべきだろう。

 また、風洞実験モデルの公開と同時に、S102の正体が、ほんの少しだけ明かとなった。現在ACOレギュレーションは、ディーゼルエンジンに対してガソリンエンジンより100馬力以上大きな出力を与えている。100馬力少ないガソリンエンジンが成功するポイントは、素晴らしい空力性能と圧倒的に優れたシャシー性能にあると考えられている。圧倒的なシャシー性能のポイントが、フロントタイヤに大きな仕事をさせることであるのは明かだろう。もちろん、フロントタイヤに大きな仕事をさせるためには、前後の重量配分を大きくフロント寄りとすることとが課題となる。
 どうやら、優れた空力性能だけでなく、S102クーペは、画期的なフレーム構造を実現して、前後の重量配分を前よりとすることに成功しているようだ。

 既にカーボンマジックでは、“屋根付き”のモノコックの製作が始まっている。来週には、システム開発のため、再びS101.5を使ったテストも行われる。2ヶ月後にS102が完成するまで、童夢の動向から目を離せないようだ。

12月11日
●ローラB08クーペのシェイクダウンは1月に延期


Illustration:Lola Cars/Photo:Sports-Car Racing

 ローラは、12月第1週にB08-60(P1)とB08-80(P2)の2つのB08クーペのシェイクダウンを予定していた。しかし、細かな設計変更を理由として、1月までマシンが完成しないことを認めた。
 どのような部分の設計変更であるのか?ローラは明らかにしていないが、11月末に予定されていたクラッシュテストも行われていないらしく、プロジェクト全体が遅れているのだろう。

 また、これらのB08クーペが誰にデリバリーされるのか?についても、ローラは明らかにしていない。
 6月にP1カーのB08-60を発表した時、最初に作られるクルマはターボエンジンを積む、と言われた。そのため、アウディとの契約が残っているスイススピリット、ダイソンからAER V8ターボ用マウントのB06-10を買って、今年後半のALMSで走らせたCYTOスポーツとインタースポーツのいずれか?であると考えられていた。AERは、ALMS最終戦の際、排気量を3.6リットルから4リットルに拡大した改良エンジンを登場させて、見違えるようなパフォーマンスを見せつけている。ヨーロッパのLMSでは4リットルバージョンは登場しなかったが、チェンバレンがAER V8ターボ付きのB06-10を走らせているため、こちらへも営業活動は行われているだろう。

 11月になって、考えてもなかった2008年のルマンへの招待状を手渡されたオートコーンは、彼らが走らせたクリエイションCA06HハイブリッドカーがALMS以外で走ることは出来ないため、ローラとクリエイションの間で売り込み合戦が繰り広げられていた。しかし、どうやら、クリエイションCA07を導入することを決心したらしい。彼らがクリエイションを選んだ大きな理由は、サスペンションやリカード製トランスミッション等がほとんど同じであるだけでなく、価格にあると言われている。

 最初はメーカー同士の紳士協定として、GT1カーの価格は65万ドルに制限された。しかし、FIASCCのオーガナイザーだったジョン・マンゴレッティの働きかけによって、その後FIAは、レギュレーションで、SR1カーのマシン価格の上限を64万5千ドルに制限した。そのため、現在のP1カーの価格も同程度であると考えている方々が多いようだ。

 残念ながら、2004年レギュレーションを遵守して、定められたクラッシュテストに耐えるマシンを作ると、到底64万5千ドルで売ることは不可能だ。特に“屋根付き”の場合、転倒した際の耐クラッシュ性能を実現するのが難しいため、より高価となってしまう。“屋根付き”のローラB08-60は、エンジンを含まない完全な状態の場合は2億円以上、手持ちのB05やB06のパーツを使ってアップデイトするとしても、追加で買わなければならないモノコックやボディカウルだけで1億円を超えると言われている。

 現在最も有力なローラB08カスタマーはインタースポーツだ。しかし、彼らはジャドエンジンを望んでいるようで、シーズンスタート時点でB05-40 P2カーか、今年後半走らせたB06-10 P1カーを走らせて、途中からジャドV10付きのB08-60 P1カーを走らせる計画を望んでいる。そのための風洞実験を含む設計変更と考えるのが、最も自然なように思える。しかし、B08-80 P2カーの方も引取先が決まってないようで、ローラは、インタースポーツに対して、既に完成している、ジャドV8付きのB08-80 P2カーを走らせるプランも提示しているようだ。

12月10日
●2008年ルマン24時間レースの前座にグループC/GTPレース

Photo:Sports-Car Racing
  2004年ルマンの前座として開催されたグループC/GTPレース。
現役時代であればあり得ないが、1990年のIMSA GTPのニッサン
NPT90と1987年のランチアLC2グループCカーが競った。

 ヨーロッパではGroupC/GTP、アメリカではHSRによって、1993年までのグループCとIMSA GTPカーのレースが行われている。アマチュアドライバーによる趣味としてのレースだが、GroupC/GTPでは各種TWRジャガーがレギュラー参加しているし、HSRにはザウバーメルセデスC11が参加したこともある。
 そのため、観客にとっても人気のレースシリーズに成長しつつある。

 2004年のルマン24時間レースの際、ACOはグループCとIMSA GTPカーによるレースを開催した。大きな話題となったレースだったが、GroupC/GTPの主催団体はイギリスにあった。これまで、ACOのCERを取り仕切るパトリック・ペーターは、1978年までのスポーツカーレースを開催していた。そのため、微妙に住み分けが出来ていた。パトリック・ペーター自身、ルマン24時間やLMSの前座で917やフォードGT40のレースを開催しようとしたため、GroupC/GTPは、その後違うカレンダーを組んで活動していた。最近は、ルマンで24時間レースが行われている、同じ日にニュルブルクリンクやスパでGroupC/GTPレースが行われていた。

 現在のスポーツカーレースに参加しているプライベートチームの多くは、ヒストリックカーレースに参加しているミリオネラ達の支援によって成り立っている、それらのヒストリックカーレースに参加するエンスージャストはチームオーナーである場合も少なくない。
 ルマンと同じ日にGroupC/GTPが開催されたのでは、大きなマイナスとなる。そこで、現在2008年のルマン24時間レースの前座として、人気のグループCとIMSA GTPレースを開催する方向で話し合いが行われている。既にACOは、マツダ757やランチアLC2が参加することを公表している。

 しかし、これまでパトリック・ペーターが誘致していた1960年代から1970年代のスポーツカーレースのエントラント達も、1年に1度の楽しみであるため、従来通りレースを開催することを望んでいる。
 現在のルマンは非常にタイトなスケジュールであるため、土曜日に前座のレースを2つ行うことは難しい。もし両方を開催するのであれば、金曜日に決勝レースは行われることとなるだろう。

12月8日
●時代はポルシェからフェラーリへ

Photo:Sports-Car Racing

 2007年のALMSのGT2クラスには、フライングラザード、タッフェル、トランスポーツ、ファルンバッハ・ロール、レイホール・レッターマンから、7台のポルシェ997GT3RSRが参加した。しかし、フェラーリ430GT2の圧倒的な強さの前に、シーズン半ばを過ぎるまで、ポルシェは1度も勝つことが出来なかった。
 シーズン後半になって、セッティングが進んだこともあって、場合によってはポルシェがフェラーリの前を走る姿もしばしば見られた。

 このような状況にあって、再びポルシェを走らせようと考えるレーシングチームが居るだろうか?
 最終戦ラグナセカが終了すると、直ぐにトランスポーツは997GT3RSRを売りに出した。そして、どうやら、8月にオーダーしたらしく、今週タッフェルは、フェラーリ430GT2を受け取った。ラグナセカでボビー・レイホールは、2008年にLMP2カーを走らせることを発表している。
 ファルンバッハ・ロールは、元々ジェントルマンドライバーのために活動していたため、残るフライングラザードの動向が気になるが、現在のところ、彼らも2008年の計画を公表出来ないらしい。

 ポルシェ自身、RSスパイダーが好調であるため、GT2のテコ入れに積極的ではないらしい。もしかしたら、2008年のALMSでは、GT2クラスのポルシェが1台も走らないレースがあるかもしれない。

12月7日
●LMSスパーフランコルシャンが1週間前に移動

Photo:Sports-Car Racing

 既に知らせたように、ルマン前に行われる3つのLMSとALMSのカレンダーがバッティングしている問題について、取り敢えずACOは、5月18日に開催を予定していたLMS第3戦スパ-フランコルシャンを、1週間前の5月11日に移動してレースを行うと発表した。これによって、ALMSソルトレイクシティとのバッティングは回避されることとなった。
 残る2つのカレンダーのバッティング問題も、ALMS側がSt.ピータースバーグとヒューストンの市街地コースで開催されることから、事実上カレンダーの変更が不可能であるため、LMSのバルセロナとモンツァのスケジュールが変更される可能性が高いだろう。

**変更後のスケジュール
5月10〜11日  LMSB スパ-フランコルシャン(B)

12月6日
●LMSのカレンダーが変更される理由

Photo:Sports-Car Racing

 先週アウディは、アメリカで行われているALMSとヨーロッパが中心のLMSの両方に参加することを発表した。ところが、現在発表されているALMSとLMSのカレンダーは、3つのイベントが同じ週末に行われる。LMSに至っては、ルマン前に行われる3つのレースの総てがALMSと同じ週末に予定されている。

 アウディは、この2つのシリーズに2台のR10を走らせて、リナンド・カペロ、アラン・マクニッシュ、マルコ・ヴェルナー、ルーカス・ロールの4人がレギュラードライバーであることを公表しただけだった。これらの3つのスケジュールが、総てルマンの前であるため、もしかしたら、アウディは、重なっている3つのイベントで、どちらか一方だけに参加するのか、あるいは、イベントのスケジュールが重なる時、どちらかのイベントでは他のアウディドライバーが代役を務めるのだろうと思われていた。

 ところが、先週のエッセンでの発表の後、アウディは、ALMSとLMSの総てのレースに、既に発表した6人のドライバーによって参加することを公表した。
 つまり、バッティングしている、2つのシリーズの3つのカレンダーが変更されることとなる。

 どのように変更されるのかは判らない。しかし、ALMSによると、市街地コースで行われるSt.ピータースバーグとヒューストンはスケジュールの移動は不可能と言っている。同時に、ALMSが2008年のカレンダーを発表したのは9月のことで、LMSはその2ヶ月も後に発表している。既に、この時にはアウディのLMS参加は周知の事実であったため、ACOやパトリック・ペーターの考えが理解出来ないとも言う。
  どうやら、ALMSのカレンダーはそのままで、LMSのカレンダーが変更されることとなりそうだ。

4月5日(土) ALMSA St.ピータースバーグ(US)
4月6日    LMS@ バルセロナ(E)

4月26日(土)ALMS B ヒューストン(US)
4月27日   LMS A モンツァ(I)

5月18日  ALMS C ソルトレイクシティ(US)
5月18日  LMSB スパ-フランコルシャン(B)

12月5日
●2009年にJLMCが復活  取り敢えず2008年にLMSが中国に遠征する!

Photo:Sports-Car Racing

 SEROが諦めた後、ACOが独自に各サーキットとJLMC開催の話し合いを行っていたことは、既に掲載した通りだ。しかし、あまりにも行動する時期が遅すぎた。結局日本での開催を諦め、同時に話し合っていた中国での開催の実現に向けて、全力で取り組んでいる。もちろん、実現したとしても、たった1つだけの開催ではシリーズとは言えないため、その取り扱いに興味があつまっていた。

 今年LMSは、ヨーロッパを離れてブラジルで最終戦を行った。しかし、様々なトラブルが発生したようで、アメリカから遠征するチームの総てが参加を諦めている。
 どうやら、現在ACOは、ブラジルに替わって、中国でLMS最終戦を行う考えのようだ。

 ブラジルでの開催は、ヨーロッパから遠征するチームのマシンと人員の輸送代金を、ブラジルのオーガナイザーが負担することを前提として実現している。そのため、中国のオーガナイザーに対しても、同様の資金を負担するよう、要求しているらしい。
 しかし、12月に入っても、正式に発表出来ないだけでなく、その場所すら公表されてない。
 場所については、上海かツーハイのどちらかであるのは明かだが、2008年に中国ではオリンピックが開催される。そのため、開催したくても、中国の方にも事情はあるだろう。

 一方でACOは、2009年にはJLMCを復活させると宣言している。ACOによると、5年〜6年間程度の開催を約束出来るプランを構想していると言う。2009年に復活するJLMCは、中国では1つだけで、それ以外の総てのレースを日本で開催する方向で構想しているようだ。そのため、もしかしたら、アジアでの開催であっても、JLMCの名前が、そのまま使われるのかもしれない。

12月5日
●東海大学がルマン参戦を発表    Tokai Univ will go to LeMans!

Photo:Sports-Car Racing

 長い間ルマン参戦を目標としたプロジェクトを進めている東海大学は、とうとう2008年のルマン24時間レースへエントリーすることを発表した。

 これまでに何度か紹介したように、東海大学の計画は、山形のYGKと共に行われている。少なくとも、今年初めの段階では、エンジンと共に車体も自分達で開発して参加する計画だった。
 そのクルマのデザインスタディや図面が公開されていたが、正直なところ、どうひいきめに見ても、トップクラスの速さを発揮出来るとは思えなかった。しかし、その図面を作成したのが東海大学の学生であることを考えると、誰もが、将来楽しみな計画と判断していた。

 ところが、大学と言っても、何時までも、絵に描いた餅のような状態でプロジェクトを放置することは出来ないし、共同でプロジェクトに取り組んでいるYGKは、企業として許せる状況ではないだろう。
 そのため東海大学では、これまでも、既存のシャシーコンストラクターやレーシングチームにエンジンを提供して、ルマンに挑戦する試みを行っている。残念ながら、実績のないエンジンを使うレーシングチームはなかったようで、いつの間にか話しは途絶えてしまった。

 その後、既存のコンストラクターからマシンを買って、自分達のエンジンを搭載するだけの計画に切り替える話しが伝えられた。2年ほど前、我々は、既存のシャシーコンストラクターからマシンを購入する話しを知った。しかし、その後TWRジャガーXJR15を改造したテストカーによる走行テストが始まったことから、我々も、既存のシャシーコンストラクターからマシンを買う話しを忘れてしまっていた。

 ところが、TWRジャガーの改造車を走らせながら、その頃東海大学は、次々と4つのシャシーコンストラクターを訪問して、シャシー購入についての話し合いを行っていた。
 これまで東海大学が公表していたマシンはクローズドカーだった。既にローラ、ラディカル、クリエイションがクローズドカーを発表しており、これらの“屋根付き”のプロトタイプカーは、金を出せば、誰でも手に入れることが可能だった。もしかしたら、AIMと提携したクリエイションは難しいかもしれないが、ローラとラディカルは充分に実現可能な話しと考えられていた。

 しかし、LMP900時代と違って、最新のLMPカーは非常に高価で、特にクラッシュテストが厳しくなったため、転倒した際の耐クラッシュ構造の開発が難しいクローズドカーは高価となっている。
 一般のプライベートチームと比べると、東海大学の予算は相当大きいように思えるが、シャシー単体で1億円にも達するクローズドカーの価格は認められるものではなかったのだろう。
 結果として、9月にORECAが買収したばかりのクラージュからLC70を購入することとなった。

 どうしてクラージュなのか? との質問に対して、明確な答えは得られなかった。しかし、もし、中古車まで対象とするのであれば、現在中古市場に何台かローラが出回っている。ところが、新車となると、昨年散々な評判をちょうだいしてしまったクラージュLC70が、現在では最も安いかもしれない。

 東海大学がORECAクラージュから買うのは、LC70のモノコック、ノーズの耐クラッシュ構造、前後のサスペンションで、LC70の評判を落とした理由の1つであるミッションは、2006年バージョンのヒューランド製でなく、最新のXトラック製Type529となる。Type529はパドルシフトと組み合わせることを前提として開発されているから、メガラインかイアン・フォーリーのパドルシフトも導入されるだろう。

 そして、ボディ外側の多くのパネルは、東海大学のスタッフが、群馬の矢島工業の1/4風洞を使って開発してデザインされる。矢島工業の風洞は、元々童夢が作った風洞で、童夢が1/2風洞を完成させたため、矢島工業に販売されている。1/4という小さなサイズから、実験に使うスケールモデルが安価ですむため、現在でも初期開発の段階で、当の童夢も使っている優秀な風洞だ。
 詳しいデータは判らないが、全長が4,550mmと短いため、相当ダウンフォースを削っているようだ。
 ボディ側面に開けられた開口部の前側の大きな部分は、ノーズ床下の空気を吸い出すものだが、その直後の開口部は、内側の構造から推測すると、ラジエターかインタークーラー用らしい。前後の重量配分を考慮したためか、通常より、相当前よりであるのが判る。

Photo:Tokai Univ

 東海大学にとって、最も大きなハードルは、果たしてACOにエントリーを受け付けられるのか?と言う事だろう。ACOにエントリーを受け付けられた後、他のレーシングチームと同じように、ヨーロッパでテストを行うようだが、状況が許すのであれば、LMSにも参加することを検討している。
 エントリーが受け付けられたとしても、東海大学には大きなハードルが待ちかまえている。
 東海大学では、3分44秒のラップタイムを想定して、シュミレーションを行っている。しかし、先週アウディのウルフガング・ウルリッヒは、2008年のポールポジションのタイムを3分25秒以下と語っているため、アウディが3分25秒で走ってしまうと、107%ルールから3分39秒以下で走らなければ、予選を通過することが出来ない。
 今後の東海大学の頑張りに期待しよう。

12月3日
●プジョーもALMS参戦!?    カスタマーチームも!?

Photo:Sports-Car Racing

 先週アウディは、2008年にALMSとLMSの両方に参戦することを発表した。つまり、少なくともヨーロッパでは、6月のルマンだけでなく、シーズンを通してアウディとプジョーは闘うことが明かとなった。

 対するプジョーの動向が注目されるが、プジョーは、2007年に実現しなかったALMS参戦を計画しているようだ。
 エンデュランスインフォのクロード・フーボルトによると、2008年のプジョーは、少なくとも2回ALMSに参加する計画であると言う。この2つのレースが、どのレースであるか? フーボルトも、知らされてないそうだが、3月に行われるセブリング12時間、10月にロードアトランタで行われる“プチ-ルマン”10時間、その2週間後に行われるラグナセカの3つの内の2つであることは容易に想像出来る。
 これらのレースは、2007年もプジョーが参加するとの噂があった。しかも、最初の計画では、プジョーはセブリングに参加する予定だった。

 ところが、ALMSにおけるペンスキーのような、手強いP2チームが居なかったため、プジョーのワンサイドゲームに終始したLMSに対しては、少々参戦プログラムに変化があるようだ。プジョー自身「総てのLMSに参加することはないだろう」と発言したことから、どうやら、ヨーロッパ内で行われる5つのLMSだけに参加して、曖昧なブラジルをパスするのではないか、と考えられている。

 プジョーは最初から2008年にカスタマーチームが存在すると思われていた。もちろん、ほとんどの噂は、そのチームはペスカロロとなっていた。しかし、ペスカロロが独自に活動することを宣言したため、少なくとも2008年に、表だってペスカロロがプジョーを走らせることはない。
 にも関わらずカスタマーチームの噂は絶えない。一部では、ローラと決別したシュロースレーシングが、2008年にプジョーを走らせるとされている。しかし、シュロースレーシングの母体は、チェコのスコダのディーラーグループであるため、同じVWグループのアウディならともかく、ライバルであるプジョーを走らせるとは考え難い。もしかしたら、ヨーロッパのチームではなく、北アメリカでALMSを闘うチームと交渉しているのかもしれない。

 いずれにしても、2008年のスポーツカーレースで、にアウディとプジョーが、ヨーロッパとアメリカの両方で熾烈な闘いを展開するのは間違いないだろう。



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