ライン

Special Edition

rogo1.gif
News
rogo2.gif
Special Edition
rogo3.gif
Calendar
rogo4.gif
Book
rogo5.gif
Shop
rogo6.gif
Link

Top



12月15日
SpecialEdition
APRが目論む意外な次世代SUPER GTレースカー

Photo:Sports-Car Racing

 コーナーリング性能はtanθであるから、理論上トレッドと共にホイールベースが長い方が、より高い能力を持つこととなる。短いホイールベースと狭い横幅は、それだけでも大きなデメリットだ。オーバーハングは空力性能のガイドラインであるため、クルマの空力性能を引き下げる場合、ルマンのACOがそうであるように、レースのオーガナイザーは、レギュレーションブックに、短いオーバーハングを盛り込んでいる。つまり、元々オーバーハングが短いクルマは、高い空力性能を発揮出来ないと考えられている。
 もし、あなたが、たった2.45mのホイールベースで、4mに満たない全長故オーバーハングは極端に短く、幅が5ナンバーのクルマをベースとして、GTレースカーを作る場合、どのような方法を編み出すだろうか?

 SUPER GTの場合、ハンデキャップルールを採用しているため、しばらく負け続ければ、その内に、性能調整の対象になって、大きなリストリクターや軽い車重を手に入れることが出来る。もしかしたら、それを目標としてマシンの開発に取り組むコンストラクターも居るかもしれない。
 もちろん、ホイールベースがたった2.45mのクルマとはトヨタMRSのことだ。ロードカーとしては、コンパクトで軽いことはメリットかもしれないが、このように、高度なGTレースカーとして見た場合、MRSは決して理想的なベースカーではない。
 ところが、正々堂々と真っ正面から、チッポケなGTレースカーの開発に取り組んだコンストラクターが存在した。それがAPRだった。

 チッポケであることは、悪いばかりではない。理論的に高いコーナーリング性能や空力性能を発揮することが難しくても、前面投影面積は小さくなる。狭いトレッドと短いホイールベースは、軽く丈夫なフレームの実現するには都合が良い。
 これらのメリットを見出したAPRは、まるでフォーミュラカーのような、長いアームを備えたサスペンションを開発した。そして、過酷な挑戦を開始した。

 APRの目論み通り、MRS SUPER GTレースカーは、フォーミュラカーのようにクイックな操縦性を実現した。しかし、短いオーバーハングによって、大きなダウンフォースを発揮しようとすると、どうしてもドラッグが増えてしまい、ストレートスピードが遅くなってしまうため、APRの苦労は続いた。
 それでも2007年、APR MRS GTレースカーは、シリーズチャンピオンに輝いた。

 チャンピオンへの道は苦労の連続だっただろう。たった2.45mのホイールベースは、ドライバーとエンジンの間に燃料タンクを納めるスペースも無く、燃料タンクは、エンジンの両側に設けなければならなかった。
 短いリアのオーバーハングによって、大きなリアウイングは、リアウインドーに接近して取り付けなければならなかった。大きなドラッグを覚悟して、リアウイングに大きな迎え角を設けて大きなダウンフォースを獲得しても、短いフロントオーバーハングによって、今度はフロントで大きなダウンフォースを獲得するのに苦労させられた。
 APRにとって、長いホイールベースと長い前後のオーバーハングは悲願だった。

 ところが、少々視野を広くしたところ、APRは、GTレースカーのベースカーとして、意外なクルマが、大きなメリットを備えていることに気づいた。
 ホイールベースは、MRSより15cmも長い2.6mもあり、前後のオーバーハングは長く、リアウイングは、リアウインドーと離れた位置に、しかも高い位置に取り付けることが可能だ。
 問題は、車幅がMRSと同じ5ナンバーで、少々背が高いことかもしれない。

 既にAPRは、意外なクルマをベースとして、2009年のGTレースカーの開発に取り組んでいる。年明け早々発表されるだろうが、ほとんどのGTレースファンが驚くことだろう。


10月27日
SpecialEdition
2010年のGT300は統一シャシー!?違うのはエンジンとボディだけ  GTAが不可解なレギュレーションを提案

Photo:Sports-Car Racing

 SUPER GT第8戦が行われていたオートポリスで、GTAは、エントラントに対して、「2010年のGT300を統一シャシーで行うための意見を聞きたい」旨の、非常に不可解な提示を行った。
  GTAがエントラントに対して提示した内容は、@戦力の拮抗化と、Aコスト削減を目的として、2010年のGT300クラスに対して、単一シャシーの使用を義務つけて、エンジンとボディだけが違うカテゴリーとすることだった。
 誰が考えても、容易に不合理な内容であることが分かるだろう。

●戦力の拮抗化は可能かも?

Photo:Sports-Car Racing

 「同じシャシーで、外側が違うだけ」と聞いて、ほとんどの人々はNASCARをイメージするだろう。NASCARの場合、同じ基本的に同じパイプフレームのシャシーで、事実上クルマのディメンションは変わらない。独自に行った風洞実験によって、取り付けられる空力アイテムも決められている。違うのは、ほんの少しだけオリジナルの面影を残したボディスタイルとエンジンだけと言って良いだろう。しかし、ボディスタイルについては、ペイントによって、それらしく塗り分けられなければ、そのクルマも同じに見えることだろう。エンジンについても、同じ排気量のキャブレター付きのインカム(プッシュロッド)V8で、このようなローテクエンジンを持たないメーカーがNASCARへの参加を希望する場合、トヨタのように、新たにローテクエンジンを開発しなければならない。
 このような事実上同じクルマが闘うのであるから、NASCARでは非常に拮抗したレースが行われている。

 GTAの場合、違うエンジンとは? どうやら、フォーミュラニッポンの3.4リットルV8とフェアレディZの3.5リットルV6を想定しているようで、だとすると、拮抗したレースを演出!するのは容易だろう。もし、多少速さが違っても、性能を調整するのは容易だろう。
 しかし、現在のSUPER GTのGT300クラスで、フォーミュラニッポンの3.4リットルV8やフェアレディZの3.5リットルV6を使っているクルマが何台居るか、この提案を行った人物は、数えたことがあるのだろうか?
 大多数の、他のエンジンを使って、他のクルマを走らせるエントラントを無視した提案としか思えない。

●コストは削減となはらない

Photo:Sports-Car Racing

@本当にコストを削減したいのであれば、何でもありのルールを撤回してFIAのGT3カーを走らせるべき
 GTAは、コストが削減される!と主張しているが、どうすれば、単一シャシーでコストが削減出来るのだろうか?
 SUPER GTのコストが高騰しているのは、広範囲な改造を認めているからであって、レギュレーションブックの隅々まで完全に実行しているエントラントは半分も居ない。その理由は総てを実行するだけの予算を持たないからだ。不利と判っていながら、FIAやACOレギュレーションで作られたポルシェを走らせるエントラントが存在する理由もここにある。

 本当にコストの削減を考えているのであれば、FIAかACOのGT2レギュレーションとするべきだ。世界的に見た場合、GT2カーでさえコストが高騰しているため、GTカーの中心はGT3に移りつつあるため、現実的にはGT3だろう。

AGT500の中古車でないのであれば、林みのるに頼むしかない現実
 同じシャシーでボディとエンジンだけが違うクルマの場合、考えられるのは、GT500のようなフロントエンジンと、デイトナプロトのようなミッドシップだ。
 フロントエンジンとなるのであれば、GT500の中古車の販売ルートとして最適かもしれない。しかし、現在のGT300には30台近いクルマが参加している。2009年に正しいGT500レギュレーションのクルマはトヨタの3台か4台だけと考えられているため、もし、トヨタのGT500マシンの中古車を想定しているのであれば、2010年にGT300は崩壊する。

 デイトナプロトのようなマシンを想定しているのであれば、2つの可能性が考えられる。1つは、デイトナプロトを輸入する方法だ。しかし、この場合、現在SUPER GTを支えている日本のレーシングチームやコンストラクターの仕事を奪ってしまい、レーシングチームの経済状況をさらに悪化させることとなる。
 また、デイトナプロトは、GT300に参加しているレーシングチームの予算にとって、安価なクルマではない。

 もう一つの、そして最後の方法として、日本でデイトナプロトのようなシャシー開発/生産することも出来るだろう。しかし、その場合、キチント公開入札を行って、想定される範囲内の価格を実現するだけでなく、生産と販売を管理しなければならない。もし、日本で、それが行えるとすると、林みのるが立ち上げたJMIAしかないだろうが、現在のところ、林みのるは沈黙を守っている。

●SUPER GTを崩壊させかねない、危険な提案

Photo:Sports-Car Racing

 1994年にJGTCとしてSUPER GTが誕生した時から、最大の魅力は、様々なクルマが一緒に走って、拮抗したレースを行うことだった。ところが、同じシャシーで、エンジンとボディだけが違うNASCARレギュレーションが施行された場合、その最大の魅力を失うこととなる。
 第一2009年に同じようなGT500レギュレーションが施行されることが既に決まっている。GT500のNASCAR化が決まった時、誰もが考えたのは、「GT500には、3つのメーカーしか参加していないし、その3つのメーカーが望むのであれば、しかたがないだろう」だった。しかし、3つのメーカーが合意の上でレギュレーション作ったにも関わらず、驚いたことに、2009年に正しいレギュレーションのGT500マシンを登場させるのはトヨタだけだ。
 この事実が存在する上で、このような提案を行ったのだろうか?

 もし、このレギュレーションが2010年に施行された場合、ランボルギーニやポルシェは、その総てが姿を消して、スバルの4輪駆動車も走る機会を失ってしまう。2010年のGT300は、それなりの予算を持つ一部のレーシングチームだけが参加する、これまでとまったく違うカテゴリーとなるだろう。
 もしかしたら、特認によって、従来のクルマも2010年に参加も認めて、2011年には、正しいGT300レギュレーションは姿を消すのだろうか?

10月16日
SpecialEdition
FIAGT3に見る性能調整の方法   SUPER GTにとっても参考になるか?

Photo:Sports-Car Racing                                               Photo:FIAGT3

 世界中のGTレースの多くが、様々なクルマの参加を促進するため、何らかのカタチで性能調整を行っている。日本人は、当然ながらSUPER GTをイメージするかもしれない。
 ご存じのように、SUPER GTの性能調整の方法は、車重とリストリクターの大きさによって行われる。例えば、遅いクルマの性能を引き上げる場合、車重を軽くするか、大きなリストリクターの使用を許している。逆に速いクルマの性能を引き下げる場合、車重を重くするか、小さなリストリクターの装着を義務つける。このように、SUPER GTの場合、基本的に車重/出力を有利とすることによって、性能調整は行われる。
 つまり、ルール上、基本的に空力には、何ら手を加えられることはない。例外は、該当するクルマを走らせるチームが、何らかの特認申請を行った場合だけと言える。

 そのため、最も重いクルマと最も軽いクルマの差が250kgにも達する異常な状況となっている。もちろん、速いクルマに250kgも重りを積むのではなく、リストリクターを小さくするため、実際の車重の差は100kgに制限されているが、車重/出力だけに頼って性能調整を行うため、遅いクルマでありながら、ストレートスピードが異常に速い、場合によってはGT300のクルマをGT500がストレートで抜けない、異常事態も発生する。

 ところが、速いクルマが、速く走る理由は、車重/出力だけが理由ではない。速いクルマの理由は、大雑把に分類しても、@車重/出力、A空力、Bサスペンション性能、C重心の高さ、Dタイヤの性能差の5つが存在する。
 2年前FIAGTの格下のシリーズとして、アマチュアドライバーを対象としてスタートしたFIAGT3シリーズは、この5つを判定することによって、性能調整を試みている。

 FAIGT3は、アマチュアドライバーを対象としてシリーズを行うため、ドライバーの技量に左右されないよう、事前にテストディを設けて、参加するクルマにプロフェッショナルドライバーが乗り組んで、最初の段階の出走条件が決められる。
 性能調整の方法は3つで、@車重(ウエイトハンデ)、A出力(リストリクターと最高回転)、B最低地上高の変更によって行われる。

 3つ目の最低地上高の変更は、性能調整の切り札と考えられている。
 最低地上高を上げることによって、重心が上がるだけでなく、床下での空力性能にも大きな影響を与えることとなる。速いクルマの場合、最低地上高を上げることによって、サスペンションジオメトリーにも影響を及ぼすと考えられている。
 最低地上高によって性能調整を行うことは画期的な出来事だ。

Photo:FIAGT3

 今年FIAGT3のトップランカーはフォードGTだ。シーズン前に行われたテストによって、フォードGTは、シャシー性能が際だっていると判断されたため、+40kgのウエイトハンデだけでなく、フロントの車高を+10mm、リアの車高を+6mm上げることが義務つけられた。エンジン性能は、大きな制限を加えられることなく、直径52mmのリストリクターを2つ取り付けている。
 逆にシャシー性能が足りないと判断されたアストンマーティンDBRS9は、車高を−10mm引き下げることが許されている。

 また、コルベットZ06のように、速さの理由がシャシー性能ではなく、主にエンジン性能であると判断されると、車重とリストリクターによって性能調整は行われる。コルベットZ06の場合、元々1272kgのヘビー級だったが、60kgのウエイトハンデと直径75mmのリストリクターの装着が義務つけられた。
 シーズンを経過するに従って、一時フォードGTはウエイトハンデが140kgにも達した。

 FIAGT3の場合、クルマの性能差を是正することを目的として行われる。そのため、同じクルマでも、優秀なドライバーと優秀なチームが走らせれば、速く走ることが出来、そうでないドライバーやチームが走らせると、下位に低迷している。
 ところが、SUPER  GTの性能調整は、一旦シーズンがスタートした後、クルマではなく、それを走らせるチームとドライバーを含めて行われる。この点が大きな違いだ。
 遅いクルマやドライバーであっても、性能調整によって、SUPER GTでは成功出来る可能性がある。そのため、SUPER GTはプロレスと言われている。

 日本人から見ると、FIAGT3は、アマチュアドライバーを対象とした地味なシリーズと思われるかもしれない。しかし、価格の安さも手伝って、ヨーロッパで爆発的に拡大して、現在ヨーロッパ中のサーキットにGT3カーを見ることが出来る。プロレスのためでなくても、巧妙に行うことによって、性能調整は大きな効果を発揮することの証明だろう。

10月10日
SpecialEdition
2009年のGT300レギュレーションの意味

Photo:Sports-Car Racing

●速すぎるGT300を遅くする
 異常な速さを発揮するGT500だけでなく、近年GT300も非常に速さを増している。そのため、GT300の速さを削減することを目的として、2008年も、1段階リストリクターを小さくしている。しかし、今年これまでに行われたSUPER GTのレースを見ても判る通り、リストリクターは1段階小さくなっても、速さは事実上変わらない。場合によっては、逆に速さを増しているレースさえ存在している。
 そこで、2009年にGT500が新しいレギュレーションに移行するのに併せて、GT300レギュレーションも手直しすることとなった。

●JAF-GT≠SUPER GT  特認こそがSUPER GT
 SUPER GTのレギュレーションは少々複雑だ。基本となるレギュレーションは、JAFの技術部会によって作られて、JAFが制定するJAF-GTだ。SUPER GTの場合、SUPER GTを管理するGTAが、JAF-GTを基本として、SUPER GTに都合が良いようにモデファイしたレギュレーションを採用している。
 しかし、基本的にJAF-GTと同一と考えても間違いないだろう。最も違うのは、特認によって、JAF-GTには存在しない、様々なクルマの出走をGTAが認めていることだ。
 この特認制度は、非常に曖昧かつ、有効なルールであって、ホモロゲイションが無いクルマや、参加するチームの事情を考慮して、世の中に存在する、ほとんど総てのクルマが、安全規定さえ満足すれば、SUPER GTへ出走可能な状況を築いた。

Photo:Sports-Car Racing

●2009年GT300レギュレーション
 2009年のGT300レギュレーションの要は、2008年よりも、さらに1段階リストリクターの大きさが小さくされることだろう。車両本体については、GT500のような大きな違いはなく、基本的なレギュレーションは踏襲される。しかし、これまで曖昧だったフラットボトムについて、厳格なレギュレーションを設けると共に、ボディから飛び出して設けられる空力パーツの設置が大きく制限されることだ。

●拡大されるフラットボトム
 フラットボトムは、従来GT500も含めてホイールベースの間にだけ設置が求められていた。しかし、2009年レギュレーションでは、ホイールベースの外側、フロント車軸の前方へ350mm、リア車軸の後方へ350mmフラットボトムは拡大しなければならない。
 さらに、タイヤハウス部分のフラットボトムを大きく切り欠いて、床下の空気の吸い出しを促進することも禁止される。2009年レギュレーションは、左右のタイヤの間のフラットボトムの寸法を、GT300の場合950mm以上設けることを求めている。
 フラットボトムのルールが非常に厳格で、エンジンやミッションはもちろん、フラットボトムから50mm以内の高さに存在する、例えばサスペンション等の機械的な部品の下面には、フラットボトムを設置しなければならない。

●カナードウイングは禁止
 従来GT300マシンであっても、ボディ外側に大きく張り出したカナードウイングが設けられていたが、2009年レギュレーションでは、カナードウイングに代表される、ボディ外側に張り出して設けられる空力デバイスは基本的に禁止される。
 横幅を拡大するため、フェンダーを拡大する際、バンパー部分をカナードウイング状の形状にデザインすることも禁止される。
 ノーズ部分について、フラットボトムと同じ面を、いわゆるチンスポイラー状に、クルマの先端を超えない範囲で、前方に張り出させることは認められる。前端部分で高さ130mmの範囲の改造が許されるが、カナードウイング状のデザインとすることは認められない。フロント車軸より350mm前方→クルマの先端部分の床下の変更、つまり、フロント部分のディフューザーは許されるが、後端は最大40mmに制限される。
 これらの変更によって、約30馬力出力は小さくなると共に、フロント部分のダウンフォースは大きく削減されると考えられている。

Photo:Sports-Car Racing

●GT300の多くは特認車と言う現実
 ところが、現在のSUPER GTを見ても明らかなように、GT300の多くは、JAF-GTではなく、特認によって参加を認めらたクルマ達だ。特認によって参加を認められるクルマであっても、1段階小さいリストリクターは当然、元々のクルマが備えてないのであれば、彼らにもフラットボトムやカナードの項目は適用される。
 しかし、GTAは、ほとんど毎レースごと特認条項を変更しているため、特認申請を行うクルマに、何らかの理由が存在するのであれば、適用を免除される可能性が高い。
 そのため、1段階小さくされるリストリクターを除くと、フラットボトムやカナードは、JAF-GTレギュレーションでクルマを作り上げているクルマにだけ有効なルールとなってしまう可能性もあるだろう。
 この辺りについては、GTAは明確な線引きを行うべきだろう。

●優秀なコンストラクターが差を広げるチャンスとなるかも…………。
 しかし、既に多くのコンストラクターは、従来と同じ大きさのリアウイングの使用が許され、フラットボトムの面積が増えることがポイントであるのを解明している。
 大きなフラットボトムは、巧妙にロードクリアランスを設定することによって、それ自体によって、床下で大きなダウンフォースを発生することが可能だ。
 高度な技術を持ったコンストラクターが、充分な風洞実験を行うのであれば、大きなフラットボトムを活用して、クルマの姿勢を、前側を低く、後方を高くすることによって、床下で大きなダウンフォースを発生させることも可能と考えられている。
 もちろん、そのためには、それなりの費用も必要となる。つまり、チーム間の格差を広げると共に、コストの上昇に繋がる可能性を秘めている。

10月8日
SpecialEdition
AUDI R15は、“屋根無し”+5.5リットルV10+縦置き6速ミッション?

Photo:Sports-Car Racing

 2008年のアウディは、プジョーとポルシェを相手に、防戦一方のシーズンを過ごすこととなった。ルマン24時間だけでなく、ヨーロッパで行われるLMS、北アメリカで行われるALMSの総てで、辛うじてタイトルを防衛しようとしている。

 2006年に登場したR10は、ディーゼルターボエンジンによる高度なレーシングカーを実現することをテーマとして開発されている。そのため、最良のディーゼルターボエンジンを実現すると共に、そのエンジンを積むことが課題だった。1気筒あたりのパワーが制限されると考えられたため、レギュレーションが許す、最も多い12気筒として、大きなシリンダー圧力に耐える丈夫さを実現したところ、260kgの90度V12が完成した。

Photo:Audi Kommunikation Motorsport

 この巨大なV12を積むのであるから、シャシーは妥協しなければならなかった。
 しかも、当時2004年レギュレーションは、完全に解明された訳ではなく、2年後に童夢が実現するような、大胆なシャシーレイアウトは考え出されてなかった。
 そのため、超ロングホイールベースとする一方、大きく重いエンジンによって、テイルヘビーな前後重量配分でR10は完成した。2007年になって、軽量モノコックが実現したため、ほんの少しだけ、重量配分は前よりとなったが、基本的な性格は変わらなかった。

 そのため、R10の次期モデルは、これらの弱点を改良することがテーマとなっている。
 アウディスポーツが、2007年夏から、ニューモデルの開発に取りかかったことが知られている。常識的に判断すると、夏に開発をスタートさせたのであれば、翌年の初めか、遅くても6月のルマンまでにシェイクダウンテストにこぎ着けるだろう。ところが、6月に我々が知ったのは、R15と言うニューモデルが開発されていることだけで、直ぐに完成するのではなく、たぶん、2008年末に走り出すことだけだった。

 この時期のアウディは、北アメリカのALMSでは、格下のP2クラスのポルシェRSスパイダーに負け続け、ヨーロッパでもプジョーの速さに圧倒されていた。つまり、ニューマシンが存在するのであれば、直ぐにでも投入すべき状況だった。にも関わらず、アウディがR15をデビューさせることが出来なかった理由は、R15が、R10とはまったく違う、完全なニューマシンだったからだ。

 2008年始め、セブリングで、アウディは縦置き6速ミッションを取り付けたR10のテストを行っている。このマシンが2008年バージョンのR10と思われていた。しかし、アウディは、公開を拒み続けた。その後縦置き6速バージョンのR10は、ヨーロッパでもテストを行っている。しかし、実戦に登場したのは、従来と同じ横置き5速ミッションを備えていた。

 元々横置きで6速ミッションを作ると、アウディR10のディーゼルターボエンジンの巨大なトルクを許容する分厚いギアを組み込むと、2004年レギュレーションのディフィューザーにギアクラスターの頭が飛び出ると考えられている。そのため、分厚いギアを使って横置き6速ミッションを作るのであれば、何らかの工夫が必要だった。
 逆の見方をするのであれば、横置きミッションは非常にタイトな作りとなるため、多少レイアウトを工夫すると、ディフューザーからギアクラスターを引き抜くことも可能となる。R10は、まさにこのようなレイアウトを採用していた。2006年のアウディは、ピット内に設営した油圧ジャッキを活用して、いとも簡単にギアクラスターを交換しながら、24時間レースを闘った。

 しかし、どんなに巨大なトルクでフラットなトルクバンドを実現しても、速く走るのであれば、ギアの数は多ければ多い程良い。そのため、丈夫な6速ミッションの開発は慎重に行われていたのだろう。それが2008年始めセブリングで登場したようだ。

 アウディは、R15について、非公式ながら“屋根無し”であることだけを認めている。童夢S102のような大胆なレイアウトを実現して、前後の重量配分を前よりとするのであれば、“屋根付き”がマストであるから、もし、巨大なV12を使い続けるのであれば、アウディスポーツは、何らかな工夫を見い出したものと考えられていた。
 ところが、アウディスポーツは、根本的に前後に短く、しかも軽いエンジンの開発に取り組んでいるようだ。
 あくまでも噂と推測に過ぎないかもしれないが、どうやらアウディは、5.5リットルのV10ディーゼルターボエンジンの開発を行っているらしい。
 当方、レースカーエンジニアリングのサム・コリンズ、SPEED TVのマーシャル・プルートの3者から、それぞれ別に質問したが、アウディは一切の回答を拒んでいる。しかし、軽いエンジンを開発していることだけは認めた。そのため、我々がV10と解釈している部分もあるだろう。もし、V10だとすると、V12より2気筒少ないシリンダー数で同じ出力を発生出来るのか?と言う疑問も生じる。第一、2008年3月日本で開催されたセミナーにおいて、アウディは、V8、V10、V12の3つを比較した場合、大きなシリンダー圧力を許容すると、最もV10が重くなることを発表している。
*注:Sports-Car Racing Vol.18を参照してください

 そのため、もしかしたら、W12かもしれない。
 2000年VWの“屋根付き”のGTPカーはW12を積んでテストを行っている。このクルマが1年後ベントレーとして姿を現した。その数ヶ月度、W12からアウディR8と同じV8ターボエンジンに積み替えられた。であるから、W12であっても、驚くことはない。

 彼方此方からR15が少しずつ見え始めた。V10ディーゼルターボエンジン?と縦置き6速ミッションを組み合わせたR15は、たぶんクリスマスの週に走り出すだろう。

10月7日
SpecialEdition
今ALMSのGT2カテゴリーが面白い

Photo:Sports-Car Racing
何とファルケンは北アメリカで活躍していた。争っているのは、アストンマーティン・ヴァンテッジGT2

 世界的にGT1カテゴリーの時代は終わろうとしている。ヨーロッパでは、ステファン・ラテルがレギュレーションを拡大解釈した結果、FIAGTでマセラッティMC12Rが走っている。他にもプラット&ミラーが売り出したコルベットC6Rや、3年前ミリオネラ達の間でブームとなったアストンマーティン、そしてORECAが開発したサリーンが走っている。しかし、その総てがプライベートチームであって、裕福なアマチュアの支援によって、やっと成立している状態だ。GT2カテゴリーに目を移すと、ほとんどがアマチュアドライバーによって操られるポルシェとフェラーリが走って、それ以外は少々戦闘力に疑問があるスパイカーだけが走っている。
 LMSのGTカテゴリーも同じような状況で、マセラッティが参加出来ないため、一般的にGTカテゴリーは、アマチュアのためのカテゴリーと認識されている。

 北アメリカで行われるALMSの場合、GMワークスのコルベットが2台だけ走るGT1クラスでは、事実上レースを見ることは出来ない。そのため、今年GMはエタノールを多量に含有するE85(エタノール85%の意味ではない)燃料を使用して走っている。

Photo:Sports-Car Racing

 ところが、スコット・アタートンによる積極的な振興策が実った結果、GT2カテゴリーは、素晴らしい状況に成長している。
 フェラーリのNo.1チームは、333SPを開発する切っ掛けを作ったジェゼッペ・リシーだ。ミカ・サロが乗り組むことを見ても、その強力さが判るだろう。他にも、昨年までポルシェを走らせていたタッフェル等、強力なチームがフェラーリを走らせている。
 昨年997GT3RSRを登場させたポルシェは、フェラーリに負け続けた結果、ルマン終了後4リットルエンジンを投入して、やっとフェラーリ追撃の態勢を作り上げた。
 3台体制のフライングラザードと共に、ファンバッハロールが素晴らしい速さを発揮している。

 ALMSの場合、GT2クラスはポルシェとフェラーリだけのカテゴリーではない。
 ドランエンタープライズが開発したフォードGTは素晴らしい戦闘力を発揮しているし、ライリーテクノロジー(旧ライリー&スコット)は、コルベットZR6をベースとしたGT2バージョンを開発した。ヨーロッパではGT3バージョンしか存在しないダッヂ・バイパーも、様々なパーツのホモロゲーションを取得してGT2クラスに参戦している。そして、プロドライブが開発したアストンマーティン・ヴァンテッジGT2カーも、ALMSでは、素晴らしい速さを発揮している。

 現在GTカーのホモロゲイションは、メーカーだけが申請出来るのではなく、GTレースカーに仕立て上げた状態で、それを作ったコンストラクターが申請することが可能だ。
 元々存在したルールだったが、これを活用した例は少なく、プロドライブによるフェラーリ550や、ORECAによって、改めて開発されたサリーンS7R等しかなかった。
 これらのGT2カーの多くは、ドランやライリー等のコンストラクターによって、ホモロゲイションを取得することによって、参加を実現している。
*Sports-Car Racing Vol.16を参照してください

 しかも、これらの新興勢力のGT2カーが、素晴らしい速さを発揮している。“プチ-ルマン”でも、トップ争いはリシーフェラーリとポルシェが行ったが、その直ぐ後ろではファルケンカラーのフォードGTとアストンマーティンが熾烈な争いを展開する等、非常に見応えのあるレースが行われている。
 マツダを中心とした騒動に巻き込まれるカタチで、一時ヨコハマからダンロップに履き替えたPTGパノスも、冷静になって、ダンロップとヨコハマを比較した結果、自分たちが間違っていたことを認めて、再びヨコハマを履いて走っている。
 ちなみに、ヨコハマタイヤの戦闘力不足を主張したマツダは、ダンロップを履いても、ポルシェやアキュラより3秒遅れで走ることしか出来ない状況は続いており、遅い理由がタイヤではなく、自分たちであることを認めなければならない状態となっている。

Photo:Sports-Car Racing

 既に公表されたように、ボビー・レイホールが、BMW M3を走らせることを計画している。レイホールは、セダンクラスの特典を要求しているらしいが、そのためには、何レースか参加して、ポテンシャルを証明する必要があるだろう。

 2009年も、今のところGT1クラスの状況が大きく変わるとは考えられない。GMが手を引くのであれば、直ぐに消滅してしまうだろう。
 残念ながら、数台のレースカーが完成したレクサスISの参加はキャンセルされたことが確認された。しかし、GT2カテゴリーへの参加は、どんどん増えることだろう。
 今後増えそうなGT2カーはフォードGTだ。ホモロゲイションを考慮すると、ドランによって開発されたシャシーが使われるのは間違いないが、現在、ジャック・ロウシュとロバート・イエーツの2つのビックネームによって開発されているフォードV8の開発については、様々なエンジンビルダーが興味を示している。

10月3日
Special Edition
Ginetta Zytekが誕生した理由  ハイブリッドシステムも発表

Photo:Sports-Car Racing
左からインバータ、真ん中が35KWのモーター、右側が120Vのリチウムイオンバッテリーだ。
バッテリーが非常にコンパクトであるのに注意。

 2006年パノス・エスペランテGT2カーでの活躍によってLNTは知られるようになった。何とルマンではクラス優勝を勝ち取ってしまった。2007年にはLMSシルバーストーンでザイテックと提携すると、ザイテック07S LMP2カーによって、ポールポジションを獲得する大活躍を披露した。LNTの母体は、養老院を中心とした介護ビジネスだ。しかし、チェマンのローレンス・トムリンソンは手広くビジネスを展開しており、自身のクルマ好きもあって、ジネッタカーズを運営している。クルマ好きであれば、知らない者が居ないだろう。

ローレンス・トムリンソンは、総てがイギリス製のスポーツカーを作り上げることを望んでいた。しかし、ジネッタだけでなく、ロータスでさえ、その多くはアメリカや日本で作られたエンジンを搭載している。ローレンス・トムリンソンの希望を実現するには、優秀なイギリス製のエンジンが必要だった。
 フォードやトヨタのような大メーカーは、イギリスには存在しないかもしれない。しかし、レースの世界に目を向けると、イギリスは世界の中心だった。そこで、ローレンス・トムリンソンは、優秀なレースエンジンビルダーと共に、ジネッタスポーツカーに積むエンジンを作り上げることを決心した。

 現在のイギリスの有力なエンジンビルダーとして、ジャド、ザイテック、AERの3社が最有力だ。3年ほど前であればコスワースやイルモアの名前も挙げられたかもしれない。しかし、現在のコスワースやイルモアは、いくつかに分割され、到底ローレンス・トムリンソンの望むような仕事を実現することは出来ない。
 ローレンス・トムリンソンは、ジャド、ザイテック、AERの3社を子細に調査した結果、最も大規模で、自身によるスポーツカープロジェクトを手がけるザイテックが相応しいと判断した。
 ザイテックにとっても、ジネッタとの連携は有意義な申し出だっただろう。しかし、ザイテックは、世界中の様々なメーカーとも一緒に仕事を行っているため、ジネッタとの連携によって、これらのビジネスに支障が出るとなると、ジネッタの申し出を受け入れることは難しかった。
 ビル・ギブソンは、失敗に終わった10年前のパノスとの提携が思い出されたかもしれない。

 ジネッタのローレンス・トムリンソンとザイテックのビル・ギブソンは慎重に話し合った結果、新たにザイテックの株式を40%発行して、それをジネッタが買い取ることで、合意することとなった。
 発行済み株式の40%を買い取るのではなく、新たに40%も株式を発行して、それを買ってくれるのであるから、単純に考えると、一挙に40%も会社の資産が増えることとなる。ザイテックにとって、非常に良い話だった。

 そして、最初のプロジェクトとして、ザイテック07Sスポーツカーをジネッタ・ザイテックと改名して、活動を推進することとなった。
 最初の活動の場として選ばれた“プチ-ルマン”には、ジネッタ・ザイテックワークスの07Sには、新しい4.5リットルV8が積まれて、強豪チームを相手に7位でフリープラクティスを終了した。もう1台のジネッタ・ザイテック07Sは、新たにコルサモータースポーツに手渡された。こちらは4リットルエンジンのままだが、ステファン・ヨハンソンが乗り込んでいる。

 ジネッタ・ザイテックは、2009年バージョンとして、新しいボディを開発中で、“屋根無し”のまま、大きくデザインが変更されることとなるようだ。従来のザイテック07S LMP2カーを走らせるチームの多くも、新しいボディを採用することとなるだろう。

 ザイテックは、10年前パノスQ9として実戦に登場したハイブリッドカーの開発を現在でも続けている。現在2009年シーズン始めのデビューを目指して、07Sをベースとしたハイブリッドカーの開発が進められている。
 “プチ-ルマン”では、その最新のハイブリッドシステムが公開された。プジョーのものより30%ほど小さい35KWのモーターを使用する一方、非常にコンパクトなリチウムイオンバッテリーを採用している。プジョーと違って、コンパクトなV8を使うことから、ジネッタ・ザイテックハイブリッドカーは、重量的なハンデは全くなく、前後の重量配分も、ガソリンエンジンカーと変わらない。
 当初“プチ-ルマン”でのデビューが目標だったらしいが、開発を優先させ、デビューは2009年に延期された。

 パノスQ9に続いて、実戦に登場する2台目のハイブリッドカーは、プジョーではなく、ジネッタ・ザイテックであると考えられている。しかし、2週間前のシルバーストーンで、ACOは「2009年、ハイブリッドカーは章典外として招待枠でも参加」と宣言したため、少々参戦ムードを削がれる状態となっている。
 また、せっかく発電を兼ねた電気モーターを搭載するため、ほとんどのハイブリッドカーはスターターモーターを持たずに、電気モーターでスタートした後、エンジンを始動している。しかし、大型の電気モーターが故障したり、バッテリーの電力が少なくなって、大きな電気モーターを駆動する能力がなくなった場合、エンジンには何の問題が無くても、再スタートすることが不可能となってしまう。そのため、エンジンを始動させるだけの小さなスターターモーターを残す方が有利との意見も残っている。
*注:Sports-Car Racing Vol.19を参照してください


9月30日
Special Edition
プジョーが公開したハイブリッドカー ザイテックのハイブリッドカーは今週“プチ-ルマン”でデビュー

Photo:Peugeot-Media

 以前からプジョーが、ハイブリッドカーを開発していることが知られていた。2月に開催したプレスコンファレンスの際、プジョーは、F1GPと同じような、KERSと呼ばれる、暫定的なハイブリッドシステムを開発中であることを公表した。2009年に908に組み合わせて、実戦に登場させる計画が進行中であることも明らかとした。
 例え暫定的なKERSであっても、プジョーが、それを何時発表するか? は大きな話題だった。
 9月に入ると、9月13日LMS開催中のシルバーストーンにおいて、ACOが2009年と2011年レギュレーションを発表した後、同じ日の夕方、908HYハイブリッドカーのデモンストレーションを行うことを公表した。

 プジョーが開発したハイブリッドシステムは、エンジンとミッションの間のベルハウジング内に60KW(80馬力)の電気モーターを取り付け、ブレーキングの際、後輪から回生ブレーキによって発電する。発電した電気は、10個のバッテリーパックに分けられた600個のリチウムイオンバッテリーに貯められる。この10個のバッテリーセルは、6つがコクピット内部、4つが左側のサイドポンツーン内に納められている。

 つまり、既存の908のモノコックには何も手を付けずに、空いているスペースに10個のバッテリーパックを積み込んで、新たに作ったベルハウジング内に電気モーターを取り付けているだけで、現在彼方此方のF1GPチームが開発しているKERSハイブリッドシステムの多くと同じものと考えても良いだろう。
 プジョーのブルーノ・ファミンによると、システム全体で約65kgの重さがあるが、ベルハウジング内の電気モーターをエンジン始動にも活用出来るため、スターターモーターが不要となると共に、従来備えていた通常のバッテリーが取り外されるため、車重は45kg増に過ぎないと言う。
 つまり、F1GPと同じメリットとデメリットを持った、暫定的なハイブリッドシステムだ。

 ベルハウジング内に電気モーターを追加するだけであるため、構造が簡単で、作動も確実で、重量も軽い。しかし、回生ブレーキの効果が低い後輪に発電に使う電気モーターを取り付けて、エネルギーを回収するため、大きな発電効果は得られない。しかも、重量が軽くても、充電に時間を要するバッテリーにエネルギーを蓄えるため、発電した電気を直ぐに貯めることは出来ない。

Photo:Peugeot-Media

 プジョーのブルーノ・ファミンは、回生ブレーキによって、約5%エネルギーを回収すると共に、1周あたり20〜30秒電気モーターを作動させることが可能と説明している。
 「20〜30秒電気モーターを作動させる」との説明は、600個のリチウムイオンバッテリーしか積まないことを考慮すると、非常に疑問があると考えられている。なぜなら、30秒間60KWの電気モーターを作動させた場合、バッテリーは、ほとんど使い切ってしまうと考えられるからだ。
 現在充電タイプの乾電池が普及しているため、誰だってバッテリーへの充電が時間を要することは知っている。軽くても、充電に時間を要するバッテリーに電気を貯めることから、回生ブレーキによって発電したとしても、直ぐに充電することは不可能だ。スタート前に充電したバッテリーを使い切ると、後輪に取り付けた電気モーターは、単なる重りに過ぎなくなってしまう。
 しかし、予選では、たった30秒であっても、追加される電気モーターによる80馬力は大きな威力だろう。

 プジョーのハイブリッドシステムは、事実上2005年に東京R&Dが発表したヴィーマックハイブリッドと同じもので、大メーカーが、大きな資金を投じて3年後に発表した点を考慮すると、少々興味を削ぐ内容だ。
 もちろん、現在彼方此方のF1GPチームが、KERSハイブリッドシステム付きF1GPカーを、走らせるだけで四苦八苦している状況を考えると、流石に大メーカーの仕事と言えるかもしれない。

 これらのハイブリッドシステムの元祖は、1998年のパノスQ9だ。パノスQ9のハイブリッドシステムを開発したザイテックは、その後もハイブリッドシステムの開発を続けている。
 そして、シルバーストーンで、プジョーが派手なデモンストレーションを行っている頃、新しいハイブリッドシステムを盛り込んだ07Sスポーツカーのテストを開始した。
 元々07Sは、軽いザイテックV8を搭載するが、ハイブリッドシステムに併せて、新しい4.5リットルV8を開発して、07Sハイブリッドカーに搭載した。
 ザイテック07Sハイブリッドカーは、今週“プチ-ルマン”でデビューする予定だ。

 シルバーストーンでハイブリッドカーのデモンストレーションを行ったプジョーは、2009年のLMSへの参加を計画していた。半日前同じシルバーストーンで、ACOが2009年のレギュレーションを発表した際、ACOは、2009年ハイブリッドカーを招待枠によって参加させることを明らかとしている。
 プジョーにとっては、残念な対応だったらしいが、2009年の実戦投入計画は続行されるようだ。
*Sports-Car Racing Vol.19を参照してください

9月29日
SpecialEdition
■2011LeMans Reguration LMP2エンジン+LMP1の900kgの車重+幅1.6mのリアウイング=3分42秒?

Photo:Sports-Car Racing

 6月のルマンの際、ACOは2011年に新しいレギュレーションへ移行することを明らかとしている。9月13日ACOは、2009年だけでなく、2011年のレギュレーションについて、その概要を明らかとした。
 6月のプレスコンファレンスの際、話しの中心となって、誰もが興味を示したGTPカーについて、9月13日ACOのダニエル・フェルドリックスは、何も新しい内容を公表しなかった。しかし、6月とは違って、3分30秒をボーダーラインとすることを強調して話しを進めた。

 最も大きな話題は、2011年のLMP1カーは、現在のLMP2エンジンを使うことだった。つまり、ガソリンレーシングエンジンの場合、約500馬力の3.4リットルV8となる。
 これまで、ほとんど注目されなかったが、LMP2カテゴリーでは、GT1カーのアストンマーティンV12と同様、量産エンジンをベースとした場合、4.4リットルのディーゼルターボエンジンの使用が許されている。ACOが「メルセデスやBMWのディーゼルV8」と表現する、4.4リットルのディーゼルターボエンジンは、600馬力を発生すると考えられている。2009年レギュレーションによって、LMP2は10%小さいリストリクターの装着を義務付けられるため、たぶん、2011年には540馬力程度となるのだろうが、こちらが中心であるのは明らかだろう。
 同時に、同じ出力のLM-GT2エンジン(量産エンジン)の使用を明らかとした。

 ACOのダニエル・フェルドリックスは、「2008年のルマンで、最も速かったLMP2カーのラップタイムは3分35秒だ。LMP1の900kgの車重(75kg↑)とした場合3秒遅くなる。2009年に義務付けられる、40cm狭い、幅1.6mのリアウイングによって4秒遅くなる」と宣言した。
 フェルドリックスの主張を足し算すると、3分35秒+(900kgの車重による)3秒+(幅1.6mのリアウイングによる)4秒=3分42秒のラップタイムとなる。
 2009年にLMP2のリストリクターが10%小さくなることが考慮されてない等、さらに遅くなる要素があるため、2011年にLMP2エンジンだけが登場するのであれば、ACOがボーダーラインとする3分30秒を突破するのは難しいだろう。

 つまり、2011年には、現在トップ争いを展開している5.5リットルのV12ディーゼルターボエンジンや、話題のアストンマーティンGT1エンジンはLMP1カテゴリーで見ることは出来ない。

 同時にACOは、「Co2エミッションや燃費を向上させるため、新しい技術を積極的に受け入れる」と宣言している。新しい技術が何を意味するのか?と言うと、ハイブリッドカーであるのは言うまでもない。
 ハイブリッドカーは、2009年に招待枠としてACOレギュレーションのレースへの出走を許された。暫定的な2009年だけでなく、ACOは、2011年であっても、明確なハイブリッドカーのレギュレーションを公表していない。
 この理由は、間違いなくハイブリッドカーが重いことが理由であることは明らかだ。重いハイブリッドカーと軽い3.4リットルV8が、対等のパフォーマンスを発揮する方法を見いだされるまで、もう少し時間が必要だろう。

 しかし、ポルシェRSスパイダーを買い込んでおけば、2011年に総合優勝争いに復帰出来る訳ではない。
 6月にGTP構想を明らかとした際、公表されているように、安全性の向上を目的として、2011年には空力のレギュレーションが変更される見込みだ。この変更は、“屋根付き”や“屋根無し”と言う話ではなく、根本的な違いであるため、まったく新しいクルマが、2011年の主流となるのは間違いないだろう。

 先週ペスカロロは、2009年BMWの量産V8をベースとして、ソデモが開発するLMP2エンジンを導入することを発表した。BMWベースのLMP2エンジンと言うと、悪名高いメカクロームV8が有名だが、こちらはGP2用として開発されたものがベースで、新たにソデモが開発するV8とはまったく違うものだ。
 ペスカロロの目的が、2009年はLMP2用でも、2011年にLMP1で使うための保険であるのは間違いないだろう。
*注:Sports-Car Racing Vol.18を参照してください

9月28日
SpecialEdition
2009LeMans Reguration ディーゼル10.5%↓、アストン3%↓、ガソリンレースエンジン±0%

Photo:Sports-Car Racing

 9月13日ACOは、LMS最終戦を開催中のシルバーストーンにおいて、2009年、そして2010年と2011年のルマンのレギュレーションについてのプレスコンファレンスを開催した。
 6月のルマン24時間レースで開催されたプレスコンファレンスの際、既にACOは、2009年のレギュレーションの方向性を公表している。今回は、その概要を明らかにしたものと考えてもらいたい。

 6月にACOは、3分30秒のラップタイムをボーダーラインとすることを明らかとしている。そのため、総てのカテゴリーにおいて、速さを削減すると共に、速すぎるディーゼルターボエンジンのパワーを削減することが、2009年レギュレーションのポイントだった。
 しかし、その発表の直後、プジョーが3分18秒で走ったため、慎重に話し合いが行われていたようだ。
 3分18秒事件によって、たくさんのコンストラクターやメーカーは、ディーゼルエンジンの出力を200馬力削減して、ガソリンをやや上回る程度の650馬力とする意見を出している。
 そのため、ACOは慎重にレギュレーションを構想することとなった。

◆LMP1のディーゼルターボエンジンは10.5%パワーダウン
 まず、大きすぎるディーゼルターボエンジンのパワーを中心とした、パフォーマンスの調整について、残念ながら、ACOは、アウディとプジョーの出力を200馬力も削減する決断は出来なかった。
 シルバーストーンのプレスコンファレンスのため、急遽日本から帰ってきたACOのテクニカルダイレクターのダニエル・フェルドリックスは、P1とP2のディーゼルターボエンジンについて、リストリクターの大きさを10%小さくすると共に、最大過給圧を6.5%削減することを発表した。
 プジョーやアウディのようなP1クラスの5.5リットルのディーゼルターボエンジンの場合、2008年のリストリクター径は39.9mm×2で、最大過給圧は2,940mmbarだった。それが37.9mm×2(10%↓)と2,750mmbar(6.5%↓)となる。ACOのフェルドリックスは、パフォマンスは10.5%低下すると宣言している。

Photo:Sports-Car Racing

◆GT1カーエンジンをLMP1で使う場合、2008年よりも3%小さいリストリクターを義務付け
 2008年新たにACOは、GT1カー用としてホモロゲイションを取得したエンジンをLMP1カーに使う場合、レース専用エンジンより約5%大きなリストリクターの使用を認めている。GT1カーのエンジンとは何か?と言うと、プロドライブが開発するアストンマーティンをベースとする6リットルV12やサリーンのプッシュロッドV8のことだ。
 最強のガソリンLMP1エンジンと考えられているジャドのGV5.5 5.5リットルV10と比べると、5%大きなリストリクターによって、GT1エンジンは約30馬力大きなパワーを発生すると考えられていた。

 レース専用エンジンと比べると大きく重いと判断されたこと、そして、GT1エンジンは、レース専用エンジンと違って、シリンダーヘッドやオイルパンを使って、エンジンをフレームとして活用するストレスマウントは認められなかったため、5%大きなリストリクターを手に入れたと判断しても間違いないだろう。

 しかし、実際に登場したアストンマーティンV12は、パンクルによって、ロードカーに積まれているものとは似ても似つかないくらい、徹底的に贅肉を削り取られて、大きさはともかく、極端に重いエンジンではなかった。ジャドの72度V10のように、ストレスマウントに向かないレーシングエンジンが多いこともあって、ストレスマウントによって制限することも、実情にはそぐわなかった。

 シュロースローラに積まれて登場したアストンマーティンV12は、素晴らしいパワーを証明した。6月のルマンの際、ペスカロロ等から、GT1エンジンのレギュレーションの見直しが提案されていたが、その後、最強のガソリンエンジンLMP1カーと判断されている童夢S102とシュロースローラとのパフォーマンスを子細に比較した結果、ジャドのレーシングエンジンと5%大きなリストリクターを取り付けたアストンマーティンGT1エンジンのパワーの差が、予想を10馬力上回る40馬力にも達すると判定された。
 そのため、2009年にはGT1エンジンのリストリクターは3%小さくされることが決定した。
*注:Sports-Car Racing Vol.18を参照してください

◆LMP2は、リストリクターの大きさを10%削減
 ちなみに、2007年のALMSでペンスキーポルシェが大活躍した結果、ACOは「LMP1がトップカテゴリーであって、LMP2はその下のカテゴリー」であることを明確とした。そして、間違ってもLMP2カーがLMP1を破って総合優勝することがないよう、2008年ルマンとLMSに参加するLMP2カーは、50kg重い車重と10リットル小さな燃料タンクを義務付けられた。
 2008年にレギュレーションを変更した結果、ヨーロッパにおけるLMP2カーのパフォーマンスは大きく低下した。しかし、コストの面では、ほとんど変わらなかった。今後LMP1クラスのコストが高騰することが予想されることもあって、ACOはLMP2クラスへプライベートチームの参加を促進しなければならなかった。
 その結果、明確にLMP1と分離して、2009年にLMP2クラスのリストリクターを10%小さくした。

◆幅が40cm狭いリアウイング
 総てのマシンの速さを削減する方法として、ACOは空力性能の引き下げを採用した。2009年LMP1とLMP2カーは、リアウイングの幅を従来の2mから1.6mに、前後長を300mmから250mmまで小さくされる。小さなリアウイングに合わせて、フロントノーズも変更されるため、空力性能は15%以上の低くなると考えられている。 
 9月13日ACOがレギュレーションの概要を公表した後、今週FIAスポーツプロトタイプカーのワーキンググループによる話し合いが行われている。話し合いの中心は、空を飛ばないためについてだったが、もちろん、2009年のACOのレギュレーションについても話題となった。
 その際、(パワーが余っている)プジョーやアウディは、小さいにリアウイングによってダウンフォースが失われると、逆に危険であることを主張している。もちろん、この主張は、彼らの都合であって、200馬力も大きなパワーを使い続けている彼らの主張は、相手にされなかった。

◆ハイブリッドカーは招待扱いで
 既にいくつかのメーカーと、いくつかのコンストラクターがハイブリッドカーを開発して、テストを行っている。。 2009年からはF1GPにおいても、KERSの使用が許される。しかし、F1GPの場合、環境へ配慮していることをアピールすることが目的だ。実際現在テストを行っているF1GPチームを見ても、開発に取りかかった段階だ。
 ACOがレギュレーションを公表した後、夕方、同じシルバーストーンで、プジョーが、F1GPと同様のKERSシステムを盛り込んだ908のデモンストレーションを行っている。7月には、他のメーカーが、間に合わせのKERSではない、本格的なハイブリッドカーのテストを開始しているし、1997年にパノスQ7ハイブリッドカーを開発したザイテックは、これらの大メーカーに遅れることがないよう、KERSシステム付きの07Sのテストを開始したことを発表した。
 これらのハイブリッドカーのチャレンジャー達は、F1GPカーよりは、普通に走っているかもしれない。しかし、現在のところテスト段階であることは明らかだ。

 ハイブリッドを開発するメーカーやコンストラクター自身、(200馬力も大きなパワーをもらった)ディーゼルターボエンジンと同じように、ハイブリッドに相応しいレギュレーションも望んでいる。
 残念ながら、ハイブリッドカーには、従来のマシンとは大きく異なった要求もあるため、ACOも、ハイブリッドカーに相応しいレギュレーションを見いだすことが出来ないようだ。
 そこで、2009年にハイブリッドカーで参加する場合、招待枠による参加として認めて、順位とポイントは与えられない。もちろん、多少レギュレーションと合致してなくても、参加を認められることだろう。
*注:Sports-Car Racing Vol.19を参照してください

◆FIAと連携するGTクラス
 世界的にGT1クラスは低迷しており、ALMSでは、GMワークスの2台のコルベットが参加するだけだ。そのため、ステファン・ラテルのFIAGTと連動するカタチで、2010年に改革することを明らかとした。GT2クラスは、2010年以降も、基本的に同じルールが継続される見込みだ。
そのため、2009年に大きな変更はない。しかし、安全性を目的としたパフォーマンスの引き下げと、GT1とGT2のカテゴリーの明確化を目的として、GT1クラスの場合、車重を25kg増加すると共にリストリクターを2%削減、GT2クラスの場合、車重を20kg増加すると共にリストリクターを5%削減した。純粋なロードカーをベースとすることを明確としているGT2カーについては、最低地上高を5mm引き上げられる。


6月18日
Special Edition
最初に850馬力を実現したのはプジョーか?     最高速度データに見る出力比較

Photo:Sports-Car Racing

 現在ACOのLMP1クラスのレギュレーションは、ディーゼルエンジンに対して、理論上850馬力以上が可能となる、極端に大きなリストリクター径と過給圧を与えている。
 2006年アウディR10が登場した時、アウディは5.5リットルV12ディーゼルターボエンジンの出力を650馬力と公表した。当時のガソリンエンジンの出力は約615馬力だったため、これでも35馬力の差となるが、サルテサーキットのコースの彼方此方で最高速度や区間タイムを計測したペスカロロは、アウディのディーゼルターボエンジンの方が、自分達が使うジャドのガソリンエンジンより、最低でも57馬力大きいと主張していた。

 2007年に登場したプジョーは、最初から700馬力と公表した。相変わらずアウディは650馬力と主張したが、700馬力のプジョーをコーナー立ち上がりで引き離したアウディが、それ以上の出力を持っていたのは間違いない。
 その後ALMSでの活動を通じて、アウディは800馬力を実現したと考えられていた。

 1月に行われたセブリングテストの際、プジョーは、アウディを破ってトップタイムを記録した。しかし、その差は僅かで、コーナー立ち上がりの加速ではアウディの方が速いと信じられたため、パワーのアウディ、操縦性のプジョーと分類されるようになった。

 出力を判断する重要なデータが最速速度であるのは、現在でも変わらない。基本的なダウンフォース量をリアウイング等から判断すれば、大雑把な出力を割り出すことが出来る。
 昔からACOは、サルテサーキットでの最高速度を一般にも公表している。そこで、テストディ以来、アウディとプジョー、そして、童夢等の新時代のガソリンP1カーの最高速度に注目が集まっていた。

 しかし、以前から、ACOの最高速度データの信憑性を疑っていた。そのため、レースカーエンジニアリングのサム・コリンズがスピードガンを持ってフランスにやって来ることを知ると、そのデータの提供を求めた。

 残念ながら、テストディの際、時折雨が降ったため、最高速度のデータ収集は不充分な内容となった。
 ルマンのレースウイークとなって、やっと連続したデータが計測されるようになった。しかし、1日目のACOデータは、プジョーの最高速度が345km/hと記録しただけでなく、ORECAクラージュが、3台のプジョーに割ってはいる343km/hとカウントしていた。最高速度の上位には、プジョーと対等の勝負を行うORECAだけでなく、ペスカロロが342km/hと記録されていた。

 ガソリンエンジンのトップスピードを記録すると思われた童夢S102は336km/hで、童夢のライバルだったGT1エンジンを積むローラアストンマーティンは337km/hとカウントされていた。プジョーに次ぐラップタイムで走っていたアウディR10も336km/hと、現実的な最高速度がカウントされていた。

 2回のセッションの両方で同じようなデータが計測されているいため、計測の間違いとは思えなかった。その時点でのORECAクラージュのラップタイムから推測すると、童夢S102やローラアストンマーティンよりORECAの最高速度が速いことは、考えられなかった。

 童夢とORECAは、同じジャド5.5リットルV10を搭載している。もちろん、ジョン・ジャッドJrは、彼方此方で質問攻めにあって、ついに、「本当にORECAクラージュが343km/hの最高速度で走ったのであれば、どんなにダウンフォースを減らしても、童夢より30馬力以上大きな出力を持っていなければならない」と公表した。今年ジャドは童夢に入れ込んでおり、ジョン・ジャッドJr自身が童夢を担当している。そして、ORECAクラージュは、童夢やペスカロロとまったく同じGV5.5 S2エンジンを搭載することも明かとした。
 つまり、ACOデータに大きな間違いがあることが、偶然証明されてしまった。

 この事件もあって、サム・コリンズが計測しているデータに注目があつまった。
 もちろん、ピットの騒ぎはACOにも伝わった。翌日のACOデータは、2台のプジョーの最高速度を335km/hに修正する一方、童夢S102の最高速度を同じ335km/hとカウントした。続いてアウディR10とローラアストンマーティンが331km/h、ペスカロロが330km/h、ORECAクラージュは325km/hだった。

 スピードガンを担いで歩き回っていたサム・コリンズのデータもまとまって、プジョーの最高速度を339.84km/hと公表した。アウディが332.48km/h、童夢S102が331.52km/h、ローラアストンマーティンが330.56km/h、イプシロンが329.76km/h、疑惑の対象だったORECAは、ペスカロロと共に323.52km/hに過ぎなかった。
 ディーゼルターボエンジンの有利さが証明されると共に、ローラに積まれたアストンマーティンのGT1エンジンが、レギュレーションの効果を証明するよう、童夢S102に匹敵する速さを発揮している。

Photo:Sports-Car Racing

 また 区間タイムと共に最高速度のデータを検証すると、プジョーが、レギュレーション上理論的に可能とされている850馬力に到達していることが推測されるようになった。

 テストディの際、僅かなドライコンディションを活かしたプジョーは、圧倒的な3分22秒のラップタイムを記録した。ラップタイムの速さと共に注目されたのが、プジョーの空力セッティングだった。
 他のマシンが、クルマの後方に巻き上げる水煙は、一様に舞い上がっている。ところが、プジョーだけは、大きく渦を巻いて、跳ね上げられていた。ライバル達と比べると、圧倒的に大きなダウンフォースを設定していることは明らかだった。しかし、最高速度は、むしろライバル達より速いことから、ジャドエンジン勢、特に2年前、アウディのディーゼルターボエンジンとジャドV10の差を57馬力と判定しているペスカロロから推測すると、どう少なめに見積もっても、プジョーが850馬力以下とは考えられない。

 プジョーは、シーズン前半に使った908とは違うボディでサルテサーキットに現れた。ちょうどターボのインテイクのあたりから、サイドボディが後方に行くに従って一段高くなっていた。つまり、空力上の変更ではなく、内部のメカニズムが大きくなったための変更であることは明かだ。ラジエターはドライバーの真横に存在するため、位置から推測すると、インタークーラーが大きくなったと考えられている。
 もしかしたら、従来の908は、レギュレーションが許している最大過給圧を使い切ってなかったのかもしれない。そのために、大きなインタークーラーが必要となったのかもしれないが、サルテサーキットにやって来たプジョー908は、完全にアウディを上回る出力を手に入れていた。

 しかし、テストディの際、3台のプジョーは、オイルを撒き散らして、走行を中断させている。このことを考えると、急にプジョーがパワーアップに成功したことは間違いないだろう。
 オイルを撒き散らしたくらいだから、駆動系のテストも充分に行われた訳ではないだろう。決勝レース中、トランスミッショントラブルで1台がピットに張り付いた理由も明かだろう。

 明かに新しいプジョー908はアウディR10に勝っているため、テストディの際、突然アウディが、新しいR15を明かとしたのも納得出来る。残念ながら、正式に公表されると思われた13日のプレスコンファレンスの際、アウディはR15について、一言も語らなかった。何らかのシビリアンコントロールが働いたのだろうが、アウディが危機感を感じているのは明かで、今年中にR15が走り出すのは間違いないだろう。
*注:Sports-Car Racing Vol.18を参照してください。
*注:サム・コリンズが計測した最高速度データは、Speed TVのホームペイジで総てが公開されています。そちらを参照してください。


6月11日
Special Edition
今年の燃費のボーダーラインは何周? やはりディーゼルが有利?

Photo:Sports-Car Racing

 圧倒的に有利なディーゼルターボエンジンとの差を縮める理由から、今年P1クラスのガソリンエンジンカーは3%ほど大きなリストリクターを与えられている。トップクラスのP1エンジンが600馬力程度を発生することから計算すると、今年のP1エンジンは、基本的に20馬力程度パワーアップしていると考えられている。
 しかし、大きなパワーを発生するには、より多くの燃料が必要となる。

 困ったことに、3%大きなパワーは単純に3%燃費が悪化するのではない。
 大きなパワーを活かすため、最適なギア比が設定されると共に、大きなパワーを全開で使い続けるため、ブレーキが強化され、大きなダウンフォースを発生するよう、ドラッグの大きな空力パッケージに仕立てられる。
 その結果、今年ガソリンエンジンP1カーは、去年と比べると10%以上燃費が悪化していると考えられている。
 昨年、1回の給油で12周周回していたマシンであれば、11周を走るのが困難な状況となっている。

 また、今年GT1カーのエンジンをP1カーに使う場合、さらに約3%大きなリストリクターを使用することが可能だ。実際にプロドライブのバックアップを受けたシュロースレーシングが、アストンマーティンDBR9エンジンを積んだローラB08-60を登場させている。ところが、ロードカー用をベースとして開発されたGT1エンジンは、レース専用エンジンと違って、フリクションが大きく、元々燃費が悪い。有能なプロドライブが、どんなに努力を行っても、シュロースレーシングのローラアストンマーティンは、1回の給油で9周しか走ることは出来ない。

 このようなガソリンエンジンP1カーの苦労に対して、ディーゼルP1カーは、10%小さい81リットル燃料タンクであっても、1回の給油で13周以上を周回出来ると考えられている。
 先週行われたテストディの際、アウディのNo.1カーであるゼッケン2を付けたR10は、タイム争いを行うライバル達の行動には一切目もくれず、ひたすら決勝レースのセッティングを見出すことに専念していた。アウディは、昨日「効率を高めることで勝つ」とのアナウンスを行って、その自信をアピールしている。

6月4日
Special Edition
2008 LeMans TestDay AnalysisB 本当に速いやつは誰だ!

Photo:Sports-Car Racing

◆第一歩を踏み出したペスカロロオートモビル
 昨年秋、アンリ・ペスカロロはジャック・ニコレと共にペスカロロオートモビルを設立した。しかし、ジャック・ニコレは、2007年1月にセルニエレーシングを買収しているため、ペスカロロスポーツとの棲み分けが注目されていた。昨年10月、一旦は「2008年のペスカロロスポーツの実働部隊はセルニエレーシングを中心として、従来のペスカロロスポーツは、コンストラクターのペスカロロオートモビルとして活動する」と公表された。

 ところが、ルマンのテクノパルク内に拠点を構えるペスカロロスポーツに対して、セルニエレーシングはマニクールが拠点であるため、少々都合が悪いと考えられるようになった。
 第一、アウディやプジョーのファクトリーチームを相手として、真剣勝負を繰り広げているペスカロロスポーツに対して、セルニエレーシングはジャック・ニコレの趣味のために活動している。
 そのため、その後体制を見直して、同じペスカロロオートモビル直系チームであっても、従来通りペスカロロスポーツとセルニエレーシングは、それぞれ別々にエントリーを行うこととなった。

 ペスカロロスポーツは、2台のP01 LMP1カーにトップドライバーを乗り組ませて闘う一方、セルニエレーシングは、P01のLMP1カーにジャック・ニコレが、ニコレのヒストリックカーレース仲間と共に乗り組む一方、P01のLMP2カーには、若手ドライバーを乗り組ませる。

 2008年バージョンのP01は、基本的に2007年に登場したP01と変わらない。2007年中に、ドライバーの背後のメインロールバーが鉄パイプからカーボンファイバーコンポジット製のスペスフレームと交換され、その状態でのクラッシュテストも行われている。つまり、カーボンファイバーコンポジット製との交換が可能となった。
 しかし、ロールセンターが走らせる1台を含めて、5台のP01の中で、どのクルマがカーボンファイバーコンポジット製ロールバー付きで、どのクルマが鉄製であるのか? 判らない。

 2008年のLMP1クラスのレギュレーションは、25kg軽い900kgの車重であるため、来週それぞれの車重が公表される際、900kgを達成しているシャシーが、カーボンファイバーコンポジット製ロールバー付きだろう。
 それ以外の変更点は、ほんの少しノーズのデザインが変更されたことだけで、ポールリカールでロールセンターがテストを試みたフォーミュラノーズはお蔵入りとなった。

 2007年モデルの発展型であるため、少々速さに不安はあっても、確実に走ることが可能と考えられている。そのため、充分にミシュランタイヤのテストも行って、予選タイヤに合わせたセッティングも見出されている。
 残念ながら、午後のセッション開始早々に訪れたドライコンディションは、予選タイヤを履く前にセッションが中断されてしまい、童夢やORECA同様充分に活かすことは出来なかった。童夢やORECAより多少速いラップタイムを記録したのは、セットアップが進んでいる証拠かもしれない。
*注:Sports-Car Racing Vol.18を参照してください

6月2日
Special Edition
2008 LeMans TestDay AnalysisA 本当に速いやつは誰だ!

Photo:Sports-Car Racing

◆2008年バージョンのR10は縦置きトランスミッション付き、2009年のアウディはR15で闘う
 2年以上前、アウディがR10を開発した時、アウディのエンジニア達は、260kgに達する超ヘビー級の5.5リットルV12ディーゼルターボエンジンが、最高のパフォーマンスを発揮することを優先して開発を進めた。そのため、R10は大きくテイルヘビーな前後の重量配分で完成した。 2006年に走り始めたR10は、酷い操縦性によって、ペスカロロや童夢を引き離すことが出来なかった。それをカバーしたのが、圧倒的なディーゼルターボエンジンのパワーだった。
 2006年でもR10は720馬力のパワーを持っていたと考えられていた。2008年のR10は、800馬力を超えるとさえ言われている。そのため、ルマンではアウディに分があると考えられている。

 2006年に登場したR10は、100kgmを超える巨大なトルクに耐えるよう、分厚いギアを使ったため、5速ミッションで登場した。その5速の分厚いギアでさえ、次々とトラブルが発生したため、アウディの苦労が推測された。
 しかし、大きくフラットなトルクを発生したとしても、WRCラリーカーを見れば明らかなように、決して少ないギアは有利ではない。むしろ、直ぐに吹けきってトルクバンドを外れてしまうため、ギアは多い段数の方が有利だ。
 もちろん、アウディとXトラックは、分厚いギアのまま6速ミッションを実現する方法を探っていた。分厚いギアのまま6速としてしまうと、現在のLMPカーの床板のディフューザーから、横にミッションの頭がはみ出してしまう。そこで、考えられたのが縦置きミッションだった。と言っても、グループC時代のような、リアにオーバーハングしてミッションをレイアウトするのではなく、デフの下に縦置きミッションはレイアウトされる。

Photo:AUDI AG                  Photo:Sports-Car Racing

 R10の車体自体は大きな変更は加えられていない。しかし、空力性能を向上させるため、リアウイングを2段としてしまった。もちろん、現在のルマンのレギュレーションで、リアウイングは1つと決められている。
 どうやらアウディは、リアボディのカバーを理由として、2つ目のリアウイングを実現したようだ。ACOのダニエル・フェルドリックスを納得させる方法として、エキゾーストの上面のボディをカットしている。
 現在LMPの多くが、独立したフロントフェンダーを備えている。そして、レギュレーションをクリアするため、フロントフェンダーとモノコックの間を継ぐウイングを設けている。これにヒントを得たのは間違いないだろう。
 たぶん、次々と2段ウイングを装備するLMPカーが出てくるだろう。

 しかし、レギュレーションの網の目をかいくぐって2段ウイングを装備したとしても、R10が限界なのは明かだ。
 アウディは、「アウディのワークスチームがR10を走らせるのは、今年が最後」と明言した。そして、「来年R10はカスタマーチームによって走らせる」と語っている。たぶん、チャンピオンやチームゴウ等を指すのだろう。
 では、アウディスポーツ自身が活動を止めてしまう訳ではないようだ。
 1週間後、ルマンのレースウイーク中、アウディは、新しいLMPカーについての発表を行う。新しいアウディスポーツカーは“R15”と呼ばれることも明かとなった。残念ながら、R15の詳細については公表されてないが、噂を信じるのであれば“屋根無し”と言われている。

6月2日
Special Edition
2008 LeMans TestDay Analysis@ 本当に速いやつは誰だ!

Photo:Sports-Car Racing

◆巧妙な戦略によって速さを見せつけたプジョー
 今年1月にセブリングで行われたALMS合同テストの際、プジョーは、初めてアウディを圧倒する速さを見せつけた。4月にヨーロッパでLMSが始めると、常にプジョーはアウディを上回るラップタイムを披露している。
 しかし、ルマンのサルテサーキットは、ユノディエールの3つのストレート、ミュルサンヌからインディアナポリス、アルナージュからポルシェまでの計5つのストレートを持つ。そのため、パワーに勝るアウディに分があると思われていた。

 ところが、土曜日ルマンは激しい雨に見舞われた。テスト当日の朝一応雨は止んだ。しかし、昨日の豪雨によって、彼方此方が水に浸かったままで、しかも、何時雨が降り出しても不思議でないような空模様の中、テストは開始された。
 このようなコンディションであっても、ほとんどのチームは、ルマン専用のローダウンフォースの空力パッケージを施していた。唯一ハイダウンフォースパッケージで走り出したのがプジョーだった。

 アウディとプジョーが搭載するディーゼルターボエンジンは、理論上850馬力が可能と考えられている。少々少ないプジョーであっても、既に約750馬力を絞り出すと考えられている。ダウンフォースを増やすためドラッグが増えても、ストレートスピードが低下するだけで、単純に速さを追求するだけであれば、その方が有利と考えられている。
 特にウェットコンディションであれば、より一層ダウンフォースを増やした方が、速さを発揮出来るだろう。
 ノーズにカナードウイングを取り付け、大きなリアウイングを取り付けた3台のプジョー908は、ウェットコンディションで開始されたテストの最初から好タイムを記録し続けた。

 午前中のセッションの終盤、雨は完全に上がって、急速にコースは乾き始めた。午後のセッションが開始される頃にはコースはドライコンディションとなった。
 プジョーはこのチャンスを逃さなかった。ハイダウンフォースパッケージのまま、予選タイヤを装着すると次々とタイムアタックを試みた。セッション開始直後でコースが空いていたこともあって、クリアラップを得たステファン・サラザンの操るNo.8プジョー908は3分22秒222を叩き出した。他の2台の908やアウディ勢の一部も予選タイヤを装着してタイムアタックを試みたが、クリアラップを得ることは出来なかった。次第にコースが混み出すと共に、GT2クラスのフェラーリのクラッシュによって、赤旗が提示され、セッションは中断されて、タイムアップの機会を失った。

 元々、今年のルマンは、大きくタイムアップすると考えられていた。コンディションさえ良ければ、ポールポジション争いは3分20秒台で繰り広げられる、と思われている。しかし、ほんの数周で3分22秒台を記録したステファン・サラザンのパフォーマンスは賞賛されるべきだろう。

 LMSでの速さを見ても、プジョーが素晴らしい操縦性を実現したことが理解出来るだろう。しかし、エンジン開発はアウディが先行しており、プジョーは辛い開発を続けている。午前中のセッションの後半、コースが乾き始めた時、プジョーが撒いたオイルによって、長い間セッションは中断されている。しかも、3台の908の総てが、原因と思われている。
 午後クラッシュしたGT2クラスのフェラーリが回収され、セッションが再開された直後、マルク・ジェネの操るNo.7プジョー908は、ポルシェカーブの1つ目の右コーナーでバランスを崩して、側面から舞い上がって地面に叩き付けられた。
 プジョーにとって、今年のルマンは楽な闘いとはならないだろう。


4月4日
Special Edition
童夢の秘密兵器   The secret weapon of Dome          童夢S102 Coupeの登場

Photo:Sports-Car Racing

●S102は画期的な構造のスポーツカーだった
 やっと童夢S102が完成した。しかし、直接Xトラックまで取りに行ったギアボックスが搬入されたのが3日の夜であるから、童夢のメカニック達は、7日のシェイクダウンに向けて、連日の徹夜を強いられることとなった。

 S102のギアボックスは、基本はXトラックのType529だが、ギアが入る部分と下半分だけがXトラック製で、上半分は童夢製だ。Xトラックが作ったマグネシウム製のケーシングと童夢カーボンマジックが作ったカーボンファイバーコンポジット製の上半分は、接着剤によって強固に接合される。

 Xトラックのマグネシウム製の下半分は、エンジンとも繋がっている。つまり、S102の場合ベルハウジングは存在しない。カーボンファイバーコンポジット製の上半分と共に強固なギボックスを構成している。
 上半分のカーボンファイバーコンポジット製の部分の内側には、ショックアブソーバーが納められている。

 イプシロン・エスカディは、カーボンファイバーコンポジット製のベルハウジングを備えているが、こちらは純粋にエンジンとギアボックスを継ぐ部品となっている。しかも、たった72度のバンク角のジャドV10を完全なストレスマウントしている。そのため、どうやら、フレーム剛性が不足しているようだ。

 童夢の場合、軽量化だけでなく、フレーム剛性の強化に力を注いでおり、下半分がマグネシウム製で上半分のカーボンファイバーコンポジット製の部分と接着剤で強固に接合されるだけでなく、エンジンの両側には、独創的なデザインのカーボンファイバーコンポジット製のサブフレームが設けられている。
 写真を見ると、金色の断熱材を被せられたカーボンファイバーコンポジット製のサブフレームを良く判る。同じ黒であるため、判り難いかもしれないが、ギアボックスの上半分がカーボンファイバーコンポジット製であるのが判るだろう。

 1年前に登場したプジョーがそうであるように、通常ここまで公開されることはない。しかし、S102の秘密はこれだけではない。この程度の工夫は見学自由なようだ。しかし、この写真の中にも、たぶん、6月まで明かに出来ない秘密のヒントが隠されている。アウディやプジョーが、その秘密に気づくことを、童夢は警戒している。

 このような工夫を行った結果、画期的な前後重量配分を実現することが可能となった。しかもS102は非常に軽いクルマであるため、大量に重りを積むことが可能で、より、前後の重量配分を前寄りとすることが可能だ。しかし、あまりに重りが大量であるため、クルマの空いたスペースのカタチで重りは作らなければならない。残念ながら、この複雑な重りの製作が間に合わないようで、取り敢えず、シェイクダウン時の前後重量配分はF:R=48:52程度に仕立てられたようだ。

 もちろん、前後の重量配分を前寄りとする理由は、フロントタイヤに充分な荷重を与えて、大きな能力を発揮させるためだ。このフロントタイヤに大きな仕事をさせることが、S102の特徴の1つともなっている。
 シェイクダンと言っても、ドライバー達はステアリングの重さを報告しているため、フロントタイヤが大きな能力を発揮出来る環境が整っていることは間違いないのだろう。
 重いステアリングは、KYBのエンジニアがちょちょっと知恵をひねれば、アット言う間に軽快に仕立ててしまうだろう。

Photo:Sports-Car Racing

●やっぱり切り札はS102か?
 S102を見た多くの人々は、Aピラーの太さを指摘している。どうして、Aピラーが太いのかと言うと、グループC時代と違って、屋根をフレームとして使うと共に、Aピラーは前側のロールバーとしての機能を与えられている。そのため、現在のACOのレギュレーションに従って“屋根付き”のLMPカーを作ると、Aピラーを細くデザインすることは出来ない。

 童夢の工場内で最終組み立て中の写真をみてもらいたい。ノーズ床下中央部分のボートの船底中央の張り出しのような部分に見えるのは、KYB製EPSパワステのモーターユニットだ。非常に大きなディフューザーを床下に設けるため、EPSユニットの設置場所が無くなってしまった。KYBのエンジニアが、徹夜の連続で編み出したレイアウトだった。
 このような工夫をした結果、ほとんどモノコック中央まで、大きなディフューザーは設けられている。

 今回のテストは、シェイクダウンであるため、様々なシステムの作動を確認するのが最優先だ。そこで、一切サスペンションのセッティングは行われなかった。同時に空力セッティングも行わないため、逆に路面から空力の影響を受けないよう、ロードクリアランスを上げて走行した。サスペンション自体硬くセットされたこともあって、ドライバー達は、大きな違和感を感じながらドライブしていたようだ。

 昨年童夢は、S101.5を使ってシステム開発テストを行っている。その最も大きな目的は、ザイテック製の電磁石を使ったパドルシフトシステムの開発だった。富士スピードウェイとSUGOを使って5日間も行われたことから見ても、容易な仕事でないのが理解出来るだろう。そのテストによって得られたデータは、ザイテックのエンジニアがイギリスに持ち帰って、S102のパドルシフトシステムの開発が行われた。シフトチェンジの際、アクセルを操作して、回転数を適切にアジャストする必要がある。このエンジンコントロールとシフトチェンジのタイミングがマッチすることが、パドルシフトシステムが成立するポイントとなる。エンジンとパドルシフトの2つコンピューターの適合が条件となるため、非常に困難な開発が要求される。

 1日目、何度も伊藤大輔をヒヤリとさせる状況となった。本来、そこまで行う必要はないのかもしれないが、ジャドのエンジニアは意欲的に開発に取り組んで、スロットルにまで手を加えた。もちろん、ザイテックのエンジニアの努力もあって、2日目、何とかスムーズなシフトコントロールが可能となった。
 しかし、完全な状況ではないようで、今後の開発について、慎重に作戦が練られている。

 通常あり得ないような高いロードクリアランスとしたため、空力性能云々を判定することは出来ない。しかし、そんな状態でも280km/hを超える最高速度を記録しているため、高い空力性能を持つことは間違いないだろう。
 シェイクダウンらしく、ブレーキの前後バランスやスターターモーターにも不具合があったようだが、これらは、いずれも容易に解決出来る内容だろう。来週富士スピードウェイで2回目のテストが行われるが、その時には、これらの問題が対策されると共に、にヘッドライト付きのフロントカウルが間に合うようだ。

 S102は、優れた空力性能、そして優れた前後重量配分によって、大きな能力をフロントタイヤに与えて、より少ないダウンフォースで大きなコーナーリング性能を発揮する。S102が登場したことによって、2008年のスポーツカーレースの役者の総てが顔を揃えた。どうやら、S102が、ディーゼルエンジンに対する、最後の切り札であるのは間違いないようだ。
 これから2ヶ月の間童夢が行わなければならないのは、そのポテンシャルを完全に引き出すことだろう。

Photo:Sports-Car Racing
*注:Sports-Car Racing Vol.18を参照してください。


3月4日
Special Edition
LMS PaulRicard TEST Analysis

Photo:Sports-Car Racing

●圧倒的な速さを見せつけたアウディ
 アウディスポーツのようなファクトリーチームの場合、単独でコースを借り切ってテストを行うことが多いため、これまでチームゴウやORECAのR8が参加するだけで、アウディスポーツ自身が、LMSの公式テストに参加することはなかった。昨年までは、ALMS開幕戦セブリングの前後に行われたことも、不参加の理由だったかもしれない。
 しかし、今年はセブリングの2週間前にスケジュールが組まれたことから、アウディスポーツは、新たに組み上げたばかりの2台の2008年バージョンのR10を、セブリングに送る前シェイクダウンテストの名目でポールリカールに持ち込んだ。

 2008年バージョンと言っても、少なくとも外から見る限り、2007年バージョンとの違いは判らない。1月にALMSの合同テストの際、2007年バージョンのNo.2が走行している。このシャシーは、昨年のルマンの際、圧倒的な速さでレースをリードしている。その時、モノコックが違うことが噂されていた。しかし、カタチに違いは見られなかったため、新しい素材を使って作られた(つまり軽い)プロトタイプと考えられていた。
 たぶん、2008年バージョンのR10は、このNo.2と同じモノコックが使われているのだろう。

 セブリングに送る前、シェイクダウンテストのために持ち込まれたため、2台のR10は、ポールリカールやルマンでは考えられない、セブリングで使う大きなカナードウイングが取り付けられていた。
 ところが、アラン・マクニッシュとリナンド・カペロは、あっさりと1分39秒台を叩き出してしまった。アレクサンダー・プレマとマイク・ロッケンフェラーのマシンも1分40秒台を記録して、圧倒的な速さを見せつけた。

 1ヶ月前セブリングを走った際、アウディは、素晴らしい操縦性を発揮したプジョーにトップタイムを譲ることとなった。しかし、ポールリカールでは、圧倒的な速さを見せつけた。セブリングで使うハイダウンフォースパッケージであるため、最高速度はそれ程ではないが、大きなダウンフォースによって、インフェィールドでも素晴らしい速さを披露した。

 相変わらず、アウディの発表によると最大出力は650馬力のままだが、どうやら、1気筒60馬力は過去の話で、アウディの優秀なエンジニア達は、さらに1割程度上乗せすることに成功しているようだ。800馬力も夢ではないのかもしれない。
 圧倒的なのはパワーだけではなく、アウディスポーツによると、2000年に初優勝したR8より20%も少ない燃料消費率を実現していると言う。

 素晴らしい操縦性によって、セブリングテストでアウディを破ったプジョーのディーゼルターボカーはチャンスがあるかもしれない。しかし、セブリングスペックで走ったポールリカールで、アウディR10は、ガソリンエンジンカーに対して2秒以上の圧倒的な差を付けてしまった。ポールリカールの2秒差はサルテサーキットでは5秒に相当すると考えられていることから考えても、ガソリンエンジンカーに可能性があるとは思えない。
 未だ見ぬ童夢S102が、唯一の可能性となったかもしれない。

●イプシロン・エスカディの衝撃

Photo:Sports-Car Racing

 今年のポールリカールテストは、盛りだくさんの魅力に溢れていた。中でもスペインのイプシロン・エスカディの登場はハイライトと言えるだろう。
 イプシロン・エスカディは少々興味深い体制を保っており、エンジニアリング会社と言うだけでなく、人材を育てるMETCAの名付けるシステムを組織して、モンドラゴン大学と共に活動を行っている。2005年にスタートしたルマンプロジェクトでも、多くの学生達が関わっている。イプシロン・エスカディによると、50人規模のインターン体制を確立したいそうだ。
 東海大学よりも専門的に人材育成を行って、モータースポーツを学生の教育に活用していることと言えそうだ。

 既に、何回か紹介しているイプシロン・エスカディEE-LMP1-07は、エンリケ・スカラボローニを中心としてデザインされている。たぶん、現在発表されているLMPカーの中で、最も進歩的なデザインが盛り込まれている。
 モノコックやノーズの耐クラッシュ構造の表面は、基本的にボディ外被を兼ねている。ノーズの耐クラッシュ構造は、そのままフロントノーズを兼ね、耐クラッシュ構造にフロントフェンダーやディフューザーは取り付けられる。
 単なるカバーであるのは、サイドボディとリアカウルだけだ。

 しかも、バンク角が72度と狭いジャドGV5.5 S2を使いながら、まったくサブフレームを持たない完全なストレスメンバーとして活用している。バンク角が90度と広いAIM V10を積むクリエイションCA-07が、相変わらずサブフレームを設けているのとは対照的な出来事と言えるかもしれない。
 さらに、エンリケ・スカラボローニは、このクルマのため、完全に新しい2軸のトランスミッションを開発している。

Photo:Sports-Car Racing

 まさに理想を追求したスポーツカーだが、新参者のイプシロン・エスカディとスポーツカーにおいては少々ブランクのあるエンリケ・スカラボローニにとって、困難な部分も少なくないようで、クーペボディの左右のドアは真っ正直にフルサイズで設けられている等、レギュレーション解釈の甘さも見受けられる。

 2度目の走行のハズだが、ほとんどシェイクダウン同然の状況だったようで、斬新なトランスミッションの整備に手間取って、1日目の夕方から走行を開始した。
 この新しいトランスミッションと、ストレスマウントされたバンク角が72度のジャドV10が、車重900kgのスポーツカーに相応しい剛性を持つのかが、今後の開発のポイントとなるだろう。*注:Sports-Car Racing Vol.18を参照してください。

●どうしたペスカロロ

Photo:Sports-Car Racing

 ジャック・ニコレと共に設立したペスカロロオートモビルにとって、今回のテストは最初の公式行事だった。ペスカロロオートモビルの1台、ニコレが乗り組むセルニエレーシングの1台、そして、ロールセンターの1台を合わせて、3台のペスカロロP01がポールリカールにやって来た。

 サルテサーキットでは素晴らしい速さを披露するが、ペスカロロスポーツカーは、決して飛び抜けて速いスポーツカーではない。しかし、1分42秒860のラップタイムは失望するものだっただろう。アウディとのタイム差が3秒もある。
 ガソリンエンジンクラスのトップ2は、2日目朝の低い気温を上手く使って1分41秒台を記録したクリエイションAIMとORECA体制のクラージュで、3番手にローラ・アストンマーティン、ペスカロロは4番手なのだ。

 ペスカロロオートモビルの2台は、基本的に2007年バージョンの発展型でロールバー等部分的に素材が違うらしい。
 それに対して、ロールセンターは、自分達でデザインした新しいノーズを持ち込んできた。ロールセンターのノーズは、アウディR10やプジョー908と同じように、フォーミュラノーズで、従来フロントサスペンションの後方からラジエターを冷やす空気を取り入れていたのを、フロントサスペンションの上下の2つのアームの間から冷却風を取り入れている。

 この方法の場合、ラジエターにより多くの冷却風を導入出来るため、同じエンジンを積むのであれば、サイドポンツーンを低くして前面投影面積を小さくしたり、場合によってはラジエターを小さくすることが可能だ。空力エンジニアによると、直接導入される大きな空気圧によって、ノーズ床下の空気を吸い出すのも容易らしい。
 しかし、ドラッグが増えることが弱点となる。

 ロールセンターの場合、ノーズを作り替えただけで、サイドポンツーンは従来と変わらない。そのため、ドラッグが増えてしまったようで、2日目になるとフォーミュラノーズによるテストは行われなくなった。
 しかし、同時に作ったスポーツカーノーズに取り替えてテストは続けられた。

●アストンマーティンGT1エンジンを積むローラクーペ

Photo:Sports-Car Racing

 シュロースレーシングのアストンマーティンGT1エンジンを積むローラクーペも、今回のテストが初登場となった。
 ローラB08-60クーペは、“屋根付き”のモノコックだけでなく、従来のB06-10ロードスターとまったく違うボディを持っている。しかし、大きな冒険を試みている訳ではなく、どうしても、アストンマーティンGT1エンジンに興味は集中した。

 ローラB08-60に積まれたアストンマーティンV12は、どこから見ても、DBR9と同じにしか見えない。GT1エンジンであることで、大きなリストリクターの使用が許される代わり、純粋なレーシングエンジンより50kg近く重いため、ディーゼルほどではなくても、テイルヘビーとなることが悩みだろう。

Photo:Sports-Car Racing

 昨年Jotaにメンテナンスを任せたシュロースレーシングは、今年プロドライブと共に活動する。ポールリカールにやって来たメカニック達は、昨年DBR9を走らせた強者達だった。どこまではプロドライブで、どこからがシュロースレーシングであるのか?我々には判らない。しかし、手際よくセッティングを進めて、2日目午後、24時間テストによって、唯でさえコースコンディションが悪い上、最終コーナーでオイル漏れのスパイカーが炎上した後であるにも関わらず、ステファン・モカは1分42秒105を記録して、ディーゼルターボカーへの対抗馬としての可能性を残した。*注:Sports-Car Racing Vol.18を参照してください。

 プロドライブは、アストンマーティン・ヴァンテッジGT2カーも持ち込んで、テストを行った。
 昨年シュロースレーシングが走らせたローラB07-10/ジャドは、エントリー名はシュロースのまま、今年アメリカのサイトスポーツに貸し出された。今回のテストではヤン・ラマースが乗り組んだ。

●ポルシェRSスパイダーがヨーロッパ初登場

Photo:Sports-Car Racing

 エントリー名がVan MerksteijinとなったオランダのRSスパイダーチームは、ヨス・フェルスタッペンと、昨年RfH童夢に乗ったヨルン・ブリグマイスターによって1分43秒台の好タイムを記録した。もう1台のESSEXのRSスパイダーも素晴らしい速さを披露しているため、50kg重くなっても、RSスパイダーの高いポテンシャルは変わらない。

 Speedy-SabahのローラB08-80クーペは、ポールリカールでシェイクダウンテストを行った。新しいクルマだけでなく、ジャドの3.4リットルV8をニューエンジンであるため、速さを披露するのは、もう少し先となりそうだ。


2月1日
SpecialEdition
Sebring Winter TEST Analysis

Photo:Sports-Car Racing
ペンスキーポルシェを従えて走るプジョーの姿は、誰もが見たことがなかった初めて見る風景。 

●アウディvsプジョー             パワーのアウディ、操縦性のプジョー
 アウディは、当初アラン・マクニッシュ、リナンド・カペロ、マイク・ロッケンフェラーの3人によってテストを行う予定だった。しかし、急遽トム・クリステンセンも乗り込むこととなって、非常に豪華な顔ぶれでテストを行うこととなった。
 持ち込んだマシンは、噂のニューマシンではなく、昨年のルマンで、レースのほとんどをリードしながら、サスペンションが壊れてクラッシュしたNo.2で、その後ALMSで走っていた歴戦のシャシーだ。少なくとも、外側からみた限り、新たに大きなリアブレーキの冷却用インテークが設けられたことだけが違いだ。

 プジョーも、昨年走っていたNo.7(たぶん908-01)を持ち込んだ。ニコラス・ミナシアン、ペドロ・ラミー・ステファン・サラザンの3人がテストを担当した。プジョーも外から見ただけでは、リアブレーキを冷却するNACAダクトが大きくなったことしか、2007年バージョンとの違いは見られなかった。

 しかし、アウディとプジョーは、エンジンを中心として、大きく開発されているようだ。アメリカのサーキットは、ピットの後ろにボックス(通常ピットと呼ばれる)が無いため、エンジンやサスペンションのセットアップを行う場合、自分達の仮設テントに戻らない限り、その場でエンジンカウルを開けなければならない。つまり、エンジンもサスペンションも公開されてしまう訳だが、今回のテストでは、プジョーの場合、エンジンカウルを開ける前に耐火シートをエンジンに被せて、アウディは、周りの人々に写真を撮らないよう、説明して回っていた。
 どうやら、アウディとプジョーにしか判らない、秘密を彼らは持っているようだ。

 今年ヨーロッパのLMSとルマンでは、総てのP1カーの最低車重は900kgとなる。しかし、ALMSではディーゼルエンジンカーは従来通り925kgで走らなければならない。この25kgは非常に微妙な数字と考えられている。一見軽い900kgの方が有利に思えるが、25kg重いことで、その分をバラストとして積むことが出来る。アウディやプジョーのディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンと比べると100kgは重いため、クルマの前の方に25kgのバラストを積むことによって、重量バランスを改善出来る。
 もちろん、今回セブリングに持ち込まれたアウディR10とプジョー908は、共に昨年と同じ925kgで走った。

 アウディとプジョーが、共にリアブレーキの能力を重視している理由は、どうやら、このテイルヘビーな前後の重量配分にあるらしい。今回ミシュランは、プジョーとアウディに対して、ディーゼルターボカー用として新しいタイヤを持ち込んだ。ミシュランの開発テーマは、巨大なトルクに耐えるだけでなく、この辺りにポイントを置いて開発しているのだろう。

 セブリングは、ストップ&ゴーのコースであるため、基本的にパワーに勝るマシンに有利なサーキットだ。しかも、コースの半分以上がセメントによる舗装であるため、非常にバンピーであることから、空力性能を追求し難い。つまり、コーナーでタイムを詰めるより、どうしても立ち上がりの加速性能がポイントとなる。
 そのため、アウディとプジョーのディーゼルターボP1カーが速いことは予想されていた。

 2年前セブリングに登場したアウディR10は、全く曲がらないレーシングカーだった。そのため、連続して左右に切り返さなければならないS字等では、2つ目のコーナーをクリアすることが出来ず、必ず縁石に乗り上げて走っていた。多少昨年は改善されたが、それも程度の差に過ぎないと言うべきだった。しかし、今年のR10は非常にスムーズに走行している。
 と言っても、アウディR10が、曲がりくねったコースを得意とするようになった訳ではない。P2カーと一緒にコーナーに進入した場合、P2カーに迫られる場面もしばしば見られた。

 しかし、コーナーをクリアすると、圧倒的なパワーで、P2カーだけでなく、プジョーをも圧倒する強力な加速力を披露する。たぶん、現在でも、アウディの90度V12ディーゼルターボエンジンは、プジョーを上回るパワーを発生しているのだろう。
 1日目の最初の走行で、アウディR10はあっさりと1分43秒台を記録して、周囲を驚かせた。

 アウディと比べると、プジョー908は、アウディより1年後のレギュレーション解釈に基づいて開発されている。そのため、多少前後の重量配分が前よりであるため、コーナーが連続した区間でもそれなりの速さを発揮することが可能だ。と言っても、程度の差であって、コーナーが連続する区間で、P2カーを追い上げることが可能な訳ではない。
 アウディの方がパワーがあるようで、そのためもあって、1日目朝、僅差でアウディにトップタイムを譲った。
 1日目2回目のセッションの際、プジョーはコース上にストップしてしまった。オイルが漏れており、エンジンを交換するため、プジョーは1日目の走行を終了した。

 セブリングは朝晩の寒暖の差が大きく、気温が低い午前中に速いタイムは記録される。2日目朝のセッションで、ついにプジョーはその速さを見せつけた。圧倒的とも言える1分42秒801を記録して、アウディを打ち破った。
 3日間行われたテストは、1日目の2日目の気温が低かったのに対して、3日目に気温が上がって、午前中も暑くなったため、3日目アウディが巻き返しに出ても、プジョーを上回ることは出来なかった。

  3日目、気温が上がって、タイムアップは望めなくなっても、精力的にテストは続けられた。しかし、昼の走行の際、アウディは、デフかサスペンションのセットアップを行っている時、派手なコースアウトを演じてしまった。
 どうやら、圧倒的なパワーのアウディ、多少操縦性を改善したプジョーと言う事だろう。
 次ぎのアウディとプジョーの対戦は3月2日のポールリカールテストで行われる。


Photo:Sports-Car Racing

●新たな開発競争が勃発するP2       ホイールベースが変更出来るアキュラARX-01b
 今年ヨーロッパのLMSとルマンの場合、P2カーの最低車重は、昨年と比べて50kg増の825kgとなる。それに対してALMSでは25kgだけ増えて800kgの車重でP2カーは走る。ALMSのP1ディーゼルターボカーの車重は925kgのままであるため、去年と比べると25kgだけ差が縮められたことになる。

 昨年、レギュレーション通り775kgの最低車重を実現したP2カーは、ポルシェRSスパイダーだけだったと考えられている。そのため、ポルシェ勢は25kgのハンデを課せられたことになるが、他のP2カーは従来と変わらないと言えるだろう。
 逆に、同じP2クラスのポルシェが遅くなるため、アキュラやザイテックには大きなチャンスとなるだろう。

 アキュラは、第4のチームとしてジル・ド・フェランを指名した。登場するのは第3戦ロングビーチからだが、4台のアキュラP2カーのどのチームであっても、大きなパフォーマンスを持つのは間違いない。

 新しいARX-01bは、昨年登場したARX-01aの改良型で、従来通りクラージュLC75のモノコックとノーズの耐クラッシュ構造を使って作られている。外側で新しいのはサイドボディで、ポルシェと同じように、フロントフェンダーとサイドポンツーンが完全に分離されている。ノーズとリアカウルは、従来のものが使われている。

 中に目を向けると、より一層開発が進められて、公称500馬力を主張するようになったアキュラ3.4リットルV8は、新しいトランスミッションと組み合わせられている。外側から観察する限り、従来のヒューランド製トランスミッションとザイテック製パドルシフトはそのままらしい。しかし、詳細は不明だが、ギアを素早く交換可能なシステムが盛り込まれている。

 また、ARX-01bは、IRLカーのように、予めホイールベースを変更することを想定してデザインされている。
 方法はIRLやF3と同じく、フロントサスペンションのサスペンションアームを交換することによって、前軸を前に移動すればロングホイールベースに、後ろに移動すればショートホイールベースとなる。

 ホイールベースを変更する意味は2つある。ホイールベースが長くなっても、レギュレーションによってクルマの全長は4,650mm以下と決められている。フロントのオーバーハングも1,000mm以下と決められている。そのため、ロングホイールベースとした場合、フロントオーバーハングが短くなって、つまり、ダウンフォースが少なくなる。逆にホイールベースを短くして、フロントオーバーハングをレギュレーション通り1,000mmまで確保すると、ダウンフォースが大きくなる。
 ショートホイールベースの場合、前後の重量配分が前よりとなるため、テクニカルサーキット向きと言えるかもしれない。

 IRLやF3のようなフォーミュラの場合、ホイールベースの変更は、何も障害がないが、スポーツカーの場合、フロントフェンダーがあるため、ホイールベースを変更することによって、フェンダーアーチにタイヤが接触する可能性がある。アキュラの場合、もしかしたら、ホイールベースの長さの違いによって、違うフロントフェンダーが用意されるのかもしれない。
 ARX-01bは、ホイールベースを変更することを前提として作られた最初のスポーツカーだろう。

 4チーム共、今年はARX-01bを走らせるが、1週間前にシェイクダウンしたばかりとあって、セブリングにやって来た3チームは、ひたすらサスペンションセッティングに精を出すこととなった。

 セブリングは大きなダウンフォースが要求されるにも関わらず、コンクリート舗装によって、路面が非常にバンピーであるため、長いオーバーハングとした場合、過大なピッチングの発生を招くこととなる。
 たぶん、セブリングに持ち込んだのはショートホイールベースバージョンだと思うが、3台のARX-01bは、大きなピッチングに苦しめられながら走行していた。

 ALMSは、セブリングと同じような路面の、Stピータースバーグ、ロングビーチ、ヒューストン等市街地公道レースが多いため、大きなダウンフォースとピッチングの関係を改善するのが、今後の課題だろう。

 3日目朝、デビッド・ブラバムがドライブするNo.9ハイクロフトアキュラは、ターン6でステアリングがロックしてコースアウトしてしまった。チームによると、本当にステアリングがロックしたのか?正確には判らないと言うが、好調にテストを続けていたため、ハイクロフトは次ぎのセッションの間中マシンをチェックすることとなった。

 アキュラARX-01bのモノコックとサスペンションはクラージュLC75のもので、現在でも様々なシステムの多くはクラージュLC75のものを使っている。LC75は、ステアリングラックのマウントの剛性不足によって、2年前度々トラブルを起こしたことはご存じだろう。MテックやクラージュワークスのLC70は、その時ステアリングラックを頑丈なものに交換されている。
 クラージュが抱える問題が原因となったトラブルと考えられている。このような問題が次々と発生していることを考えると、アキュラの完全なオリジナルのLMP2カーは、予想よりも早く登場するかもしれない。

 ポルシェ勢は、ペンスキーとダイソンしかやって来なかった。同じフロリダのジャクソンビルを拠点とするCETの動向は、相変わらず不明のままだ。
 激しいピッチングと闘いながら、アキュラ勢が好タイムを記録したため、ペンスキーは、去年のように様々な空力パッケージを試みる余裕は無いようで、ひたすらミシュランの新しいタイヤのテストに明け暮れることとなった。
 それでもペンスキーが遅い訳ではない。相変わらず、2台のペンスキーポルシェは、コンスタントに速さを披露している。このコンスタントの速さは、アキュラ勢やディーゼルターボP1カーには真似の出来ない部分だ。今後、昨年のように、独自に風洞実験を試みる等、何らかのチャレンジを行うこととなるだろう。

 セブリングはP1ディーゼルターボカーに有利なため、プジョーとアウディが上位を占めることは予想されていた。Stピータースバーグやヒューストンへ行ったとき、P1とP2の関係が、どのような状態となるのか?興味深い。
*注:近日発行予定のSports-Car Racing Vol.18の特集をご覧ください。

Total
1.P1@ No.07 Equipe Peugeot Total, Peugeot 908 HDi FAP 1:42.801 (129.571 mph)
2.P1   No.2 Audi Sport North America, Audi R10 TDi          1:43.639 (128.523 mph)
3.P2@ No.26 Andretti Green Racing, Acura ARX-01B        1:44.542 (127.413 mph)
4.P2   No.7 Team Penske, Porsche RS Spyder                   1:44.610 (127.330 mph)
5.P2   No.6 Team Penske, Porsche RS Spyder                   1:45.214 (126.599 mph)
6.P2   No.9 Patron Highcroft Racing, Acura ARX-01B         1:45.598 (126.139 mph)
7.P2   No.15 Lowe’s Fernandez Racing, Acura ARX-01B     1:45.818 (125.877 mph)
8.P2   No.16 Dyson Racing, Porsche RS Spyder                  1:46.164 (125.466 mph)
9.P2   No.20 Dyson Racing, Porsche RS Spyder                 1:46.534 (125.031 mph)
10.P2  No.8 B-K Motorsports, Lola B07/46                       1:46.558 (125.002 mph)
11.P1  No.37 Intersport Racing, Lola B06/10                     1:48.242 (123.058 mph)
12.GT1@No.08 Bell Motorsports, Aston Martin DBR9         1:58.442 (112.460 mph)
13.GT2@No.62 Risi Competizione, Ferrari 430 GT2           2:01.192 (109.908 mph)
14.GT2 No.71 Tafel Racing, Ferrari 430 GT2                    2:01.641 (109.503 mph)
15.GT2 No.21 Panoz Team PTG, Panoz Esperante GTLM   2:02.801 (108.468 mph)
16.GT2 No.61 Risi Competizione, Ferrari 430 GT2            2:03.267 (108.058 mph)
17.GT2 No.21 Panoz Team PTG, Panoz Esperante GTLM   2:02.979 (108.311 mph)
18.GT2 No.48 Corsa Motorsports, Ferrari 430 GT2           2:04.776 (106.751 mph)

Day1 Session 1
1. No.2 Audi Sport North America, Audi R10 TDi            1:43.821 (128.298 mph)
2. No.07 Equipe Peugeot Total, Peugeot 908 HDi FAP       1:43.974 (128.109 mph)
3. No.9 Patron Highcroft Racing, Acura ARX-01B              1:45.638 (126.091 mph)
4. No.16 Dyson Racing, Porsche RS Spyder                       1:47.065 (124.410 mph)
5. No.15 Lowe’s Fernandez Racing, Acura ARX-01B          1:48.578 (122.677 mph)
6. No.20 Dyson Racing, Porsche RS Spyder                       1:50.407 (120.645 mph)
7. No.37 Intersport Racing, Lola B06/10                           1:51.427 (119.540 mph)
8. No.62 Risi Competizione, Ferrari 430 GT2                     2:02.837 (108.436 mph)
9. No.21 Panoz Team PTG, Panoz Esperante GTLM           2:03.801 (107.592 mph)
10.No.71 Tafel Racing, Ferrari 430 GT2                            2:03.866 (107.536 mph)
11. No.48 Corsa Motorsports, Ferrari 430 GT2                  2:07.125 (104.779 mph)
12. No.8 B-K Motorsports, Lola B07/46                           no time
13. No.61 Risi Competizione, Ferrari 430 GT2                   no time
14. No.6 Team Penske, Porsche RS Spyder                       no time
15. No.7 Team Penske, Porsche RS Spyder                       no time
16. No.26 Andretti Green Racing, Acura ARX-01B             no time

Session 2
1. No.2 Audi Sport North America, Audi R10 TDi                1:44.561 (127.390 mph)
2. No.07 Equipe Peugeot Total, Peugeot 908 HDi FAP        1:44.699 (127.222 mph)
3. No.7 Team Penske, Porsche RS Spyder                        1:45.155 (126.670 mph)
4. No.9 Patron Highcroft Racing, Acura ARX-01B              1:45.801 (125.897 mph)
5. No.6 Team Penske, Porsche RS Spyder                        1:45.877 (125.806 mph)
6. No.26 Andretti Green Racing, Acura ARX-01B              1:45.923 (125.752 mph)
7. No.15 Lowe’s Fernandez Racing, Acura ARX-01B          1:46.511 (125.058 mph)
8. No.16 Dyson Racing, Porsche RS Spyder                       1:47.235 (124.213 mph)
9. No.20 Dyson Racing, Porsche RS Spyder                       1:47.604 (123.787 mph)
10. No.8 B-K Motorsports, Lola B07/46                           1:52.193 (118.724 mph)
11. No.62 Risi Competizione, Ferrari 430 GT2                   2:02.047 (109.138 mph)
12. No.71 Tafel Racing, Ferrari 430 GT2                           2:02.227 (108.978 mph)
13ONo.61 Risi Competizione, Ferrari 430 GT2                 2:03.267 (108.058 mph)
14. No.21 Panoz Team PTG, Panoz Esperante GTLM         2:03.310 (108.020 mph)
15. No.48 Corsa Motorsports, Ferrari 430 GT2                 2:05.784 (105.896 mph)
16. No.08 Bell Motorsports, Aston Martin DBR9                2:09.622 (102.760 mph)
17. No.37 Intersport Racing, Lola B06/10                         no time
18. No.21 Panoz Team PTG, Panoz Esperante GTLM         no time

Session 3
1DNo.07 Team Penske, Porsche RS Spyder                    1:45.214 (126.599 mph)
2. No.2 Audi Sport North America, Audi R10 TDi               1:45.289 (126.509 mph)
3. No.7 Team Penske, Porsche RS Spyder                       1:45.876 (125.808 mph)
4. No.9 Patron Highcroft Racing, Acura ARX-01B             1:46.015 (125.643 mph)
5. No.26 Andretti Green Racing, Acura ARX-01B              1:46.315 (125.288 mph)
6. No.15 Lowe’s Fernandez Racing, Acura ARX-01B         1:46.364 (125.230 mph)
7. No.16 Dyson Racing, Porsche RS Spyder                      1:47.469 (123.943 mph)
8. No.8 B-K Motorsports, Lola B07/46                            1:47.986 (123.349 mph)
9JNo.37 Intersport Racing, Lola B06/10                        1:48.242 (123.058 mph)
10. No.20 Dyson Racing, Porsche RS Spyder                   1:48.473 (122.796 mph)
11. No.08 Bell Motorsports, Aston Martin DBR9               2:00.148 (110.863 mph)
12LNo.62 Risi Competizione, Ferrari 430 GT2                2:01.192 (109.908 mph)
13. No.71 Tafel Racing, Ferrari 430 GT2                          2:02.484 (108.749 mph)
14. No.21 Panoz Team PTG, Panoz Esperante GTLM         2:03.134 (108.175 mph)
15. No.48 Corsa Motorsports, Ferrari 430 GT2                 2:06.868 (104.991 mph)
16. No.61 Risi Competizione, Ferrari 430 GT2                  no time
17. No.21 Panoz Team PTG, Panoz Esperante GTLM         no time
18. No.07 Equipe Peugeot Total, Peugeot 908 HDi FAP      no time

Day2 Session 4
1@No.07 Equipe Peugeot Total, Peugeot 908 HDi FAP     1:42.801 (129.571 mph)
2ANo.2 Audi Sport North America, Audi R10 TDi             1:43.639 (128.523 mph)
3BNo.26 Andretti Green Racing, Acura ARX-01B            1:44.542 (127.413 mph)
4. No.7 Team Penske, Porsche RS Spyder                       1:45.258 (126.546 mph)
5ENo.9 Patron Highcroft Racing, Acura ARX-01B           1:45.598 (126.139 mph)
6. No.6 Team Penske, Porsche RS Spyder                       1:45.719 (125.994 mph)
7GNo.16 Dyson Racing, Porsche RS Spyder                    1:46.164 (125.466 mph)
8INo.8 B-K Motorsports, Lola B07/46                          1:46.558 (125.002 mph)
9. No.20 Dyson Racing, Porsche RS Spyder                      1:46.730 (124.801 mph)
10. No.37 Intersport Racing, Lola B06/10                        1:48.788 (122.440 mph)
11KNo.08 Bell Motorsports, Aston Martin DBR9              1:58.442 (112.460 mph)
12. No.62 Risi Competizione, Ferrari 430 GT2                  2:01.288 (109.821 mph)
13. No.71 Tafel Racing, Ferrari 430 GT2                          2:02.586 (108.658 mph)
14NNo.21 Panoz Team PTG, Panoz Esperante GTLM       2:02.801 (108.468 mph)
15QNo.48 Corsa Motorsports, Ferrari 430 GT2               2:04.776 (106.751 mph)
16. No.61 Risi Competizione, Ferrari 430 GT2                  2:06.459 (105.331 mph)
17. No.22 Panoz Team PTG, Panoz Esperante GTLM         no time
18. No.15 Lowe’s Fernandez Racing, Acura ARX-01B        no time

Session 5
1. No.2 Audi Sport North America, Audi R10 TDi               1:44.483 (127.485 mph)
2. No.07 Equipe Peugeot Total, Peugeot 908 HDi FAP       1:44.609 (127.331 mph)
3. No.6 Team Penske, Porsche RS Spyder                       1:45.792 (125.907 mph)
4. No.26 Andretti Green Racing, Acura ARX-01B             1:45.931 (125.742 mph)
5. No.7 Team Penske, Porsche RS Spyder                       1:46.241 (125.375 mph)
6. No.9 Patron Highcroft Racing, Acura ARX-01B             1:46.356 (125.240 mph)
7. No.15 Lowe’s Fernandez Racing, Acura ARX-01B         1:47.002 (124.484 mph)
8. No.20 Dyson Racing, Porsche RS Spyder                      1:47.009 (124.476 mph)
9. No.16 Dyson Racing, Porsche RS Spyder                      1:47.664 (123.718 mph)
10. No.8 B-K Motorsports, Lola B07/46                          1:49.040 (122.157 mph)
11. No.08 Bell Motorsports, Aston Martin DBR9               1:59.241 (111.707 mph)
12. No.71 Tafel Racing, Ferrari 430 GT2                         2:02.111 (109.081 mph)
13. No.62 Risi Competizione, Ferrari 430 GT2                 2:02.857 (108.419 mph)
14. No.22 Panoz Team PTG, Panoz Esperante GTLM        2:03.792 (107.600 mph)
15. No.21 Panoz Team PTG, Panoz Esperante GTLM        2:04.262 (107.193 mph)
16. No.48 Corsa Motorsports, Ferrari 430 GT2                2:06.380 (105.396 mph)
17. No.61 Risi Competizione, Ferrari 430 GT2                 2:07.179 (104.734 mph)
18. No.37 Intersport Racing, Lola B06/10                        2:40.839 (82.816 mph)

Day3 Session 6
1. No.2 Audi Sport North America, Audi R10 TDi              1:44.180 (127.856)
2. No.07 Equipe Peugeot Total, Peugeot 908 HDi FAP      1:44.574 (127.374 mph)
3CNo.7 Team Penske, Porsche RS Spyder                     1:44.610 (127.330 mph)
4. No.6 Team Penske, Porsche RS Spyder                      1:46.093 (125.550 mph)
5. No.9 Patron Highcroft Racing, Acura ARX-01B            1:46.182 (125.445 mph)
6. No.15 Lowe’s Fernandez Racing, Acura ARX-01B        1:46.192 (125.433 mph)
7. No.26 Andretti Green Racing, Acura ARX-01B             1:46.225 (125.394 mph)
4. No.2 Audi Sport North America, Audi R10 TDi              1:45.914 (125.762 mph)
8. No.16 Dyson Racing, Porsche RS Spyder                     1:46.429 (125.154 mph)
9HNo.20 Dyson Racing, Porsche RS Spyder                    1:46.534 (125.031 mph)
10. No.8 B-K Motorsports, Lola B07/46                         1:48.029 (123.300 mph)
11. No.08 Bell Motorsports, Aston Martin DBR9               1:58.774 (112.146 mph)
12. No.62 Risi Competizione, Ferrari 430 GT2                 2:01.493 (109.636 mph)
13. No.71 Tafel Racing, Ferrari 430 GT2                         2:02.960 (108.328 mph)
14. No.21 Panoz Team PTG, Panoz Esperante GTLM        2:03.296 (108.033 mph)
15. No.22 Panoz Team PTG, Panoz Esperante GTLM        2:04.995 (106.564 mph)
16. No.48 Corsa Motorsports, Ferrari 430 GT2                2:05.484 (106.149 mph)
17. No.37 Intersport Racing, Lola B06/10                        no time
18. No.61 Risi Competizione, Ferrari 430 GT2                  no time

Session 7
1. No.07 Equipe Peugeot Total, Peugeot 908 HDi FAP       1:44.305 (127.702 mph)
2. No.7 Team Penske, Porsche RS Spyder                       1:45.022 (126.831 mph)
3. No.15 Lowe’s Fernandez Racing, Acura ARX-01B         1:45.854 (125.834 mph)
4. No.2 Audi Sport North America, Audi R10 TDi               1:45.914 (125.762 mph)
5. No.6 Team Penske, Porsche RS Spyder                       1:46.725 (124.807 mph)
6. No.16 Dyson Racing, Porsche RS Spyder                      1:46.738 (124.792 mph)
7. No.20 Dyson Racing, Porsche RS Spyder                      1:47.623 (123.765 mph)
8. No.26 Andretti Green Racing, Acura ARX-01B              1:47.680 (123.700 mph)
9. No.8 B-K Motorsports, Lola B07/46                            1:50.765 (120.255 mph)
10. No.08 Bell Motorsports, Aston Martin DBR9                1:59.342 (111.612 mph)
11MNo.71 Tafel Racing, Ferrari 430 GT2                         2:01.641 (109.503 mph)
12. No.62 Risi Competizione, Ferrari 430 GT2                   2:01.868 (109.299 mph)
13. No.21 Panoz Team PTG, Panoz Esperante GTLM         2:03.909 (107.498 mph)
14. No.48 Corsa Motorsports, Ferrari 430 GT2                 2:06.475 (105.317 mph)
15. No.22 Panoz Team PTG, Panoz Esperante GTLM         no time
16. No.61 Risi Competizione, Ferrari 430 GT2                  no time
17. No.37 Intersport Racing, Lola B06/10                        no time
18. No.9 Patron Highcroft Racing, Acura ARX-01B            no time

Session 8
1. No.07 Equipe Peugeot Total, Peugeot 908 HDi FAP       1:43.771 (128.360 mph)
2. No.2 Audi Sport North America, Audi R10 TDi               1:44.907 (126.970 mph)
3DNo.6 Team Penske, Porsche RS Spyder                      1:45.214 (126.599 mph)
4FNo.15 Lowe’s Fernandez Racing, Acura ARX-01B        1:45.818 (125.877 mph)
5. No.7 Team Penske, Porsche RS Spyder                        1:45.835 (125.856 mph)
6. No.26 Andretti Green Racing, Acura ARX-01B              1:46.153 (125.479 mph)
7. No.16 Dyson Racing, Porsche RS Spyder                      1:46.557 (125.004 mph)
8. No.20 Dyson Racing, Porsche RS Spyder                      1:46.846 (124.665 mph)
9. No.9 Patron Highcroft Racing, Acura ARX-01B              1:47.419 (124.000 mph)
10. No.8 B-K Motorsports, Lola B07/46                           1:47.999 (123.334 mph)
11. No.62 Risi Competizione, Ferrari 430 GT2                   2:01.690 (109.458 mph)
12. No.71 Tafel Racing, Ferrari 430 GT2                           2:01.956 (109.220 mph)
13PNo.21 Panoz Team PTG, Panoz Esperante GTLM        2:02.979 (108.311 mph)
14. No.48 Corsa Motorsports, Ferrari 430 GT2                  2:07.799 (104.226 mph)
15. No.08 Bell Motorsports, Aston Martin DBR9                no time
16. No.22 Panoz Team PTG, Panoz Esperante GTLM         no time
17. No.61 Risi Competizione, Ferrari 430 GT2                  no time
18. No.37 Intersport Racing, Lola B06/10                        no time


ライン

メール アイコン
Mail

Top