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4月4日
■Special Edition
童夢の秘密兵器 The secret weapon
of
Dome 童夢S102 Coupeの登場
 
Photo:Sports-Car
Racing
●S102は画期的な構造のスポーツカーだった
やっと童夢S102が完成した。しかし、直接Xトラックまで取りに行ったギアボックスが搬入されたのが3日の夜であるから、童夢のメカニック達は、7日のシェイクダウンに向けて、連日の徹夜を強いられることとなった。
S102のギアボックスは、基本はXトラックのType529だが、ギアが入る部分と下半分だけがXトラック製で、上半分は童夢製だ。Xトラックが作ったマグネシウム製のケーシングと童夢カーボンマジックが作ったカーボンファイバーコンポジット製の上半分は、接着剤によって強固に接合される。
Xトラックのマグネシウム製の下半分は、エンジンとも繋がっている。つまり、S102の場合ベルハウジングは存在しない。カーボンファイバーコンポジット製の上半分と共に強固なギボックスを構成している。
上半分のカーボンファイバーコンポジット製の部分の内側には、ショックアブソーバーが納められている。
イプシロン・エスカディは、カーボンファイバーコンポジット製のベルハウジングを備えているが、こちらは純粋にエンジンとギアボックスを継ぐ部品となっている。しかも、たった72度のバンク角のジャドV10を完全なストレスマウントしている。そのため、どうやら、フレーム剛性が不足しているようだ。
童夢の場合、軽量化だけでなく、フレーム剛性の強化に力を注いでおり、下半分がマグネシウム製で上半分のカーボンファイバーコンポジット製の部分と接着剤で強固に接合されるだけでなく、エンジンの両側には、独創的なデザインのカーボンファイバーコンポジット製のサブフレームが設けられている。
写真を見ると、金色の断熱材を被せられたカーボンファイバーコンポジット製のサブフレームを良く判る。同じ黒であるため、判り難いかもしれないが、ギアボックスの上半分がカーボンファイバーコンポジット製であるのが判るだろう。
1年前に登場したプジョーがそうであるように、通常ここまで公開されることはない。しかし、S102の秘密はこれだけではない。この程度の工夫は見学自由なようだ。しかし、この写真の中にも、たぶん、6月まで明かに出来ない秘密のヒントが隠されている。アウディやプジョーが、その秘密に気づくことを、童夢は警戒している。
このような工夫を行った結果、画期的な前後重量配分を実現することが可能となった。しかもS102は非常に軽いクルマであるため、大量に重りを積むことが可能で、より、前後の重量配分を前寄りとすることが可能だ。しかし、あまりに重りが大量であるため、クルマの空いたスペースのカタチで重りは作らなければならない。残念ながら、この複雑な重りの製作が間に合わないようで、取り敢えず、シェイクダウン時の前後重量配分はF:R=48:52程度に仕立てられたようだ。
もちろん、前後の重量配分を前寄りとする理由は、フロントタイヤに充分な荷重を与えて、大きな能力を発揮させるためだ。このフロントタイヤに大きな仕事をさせることが、S102の特徴の1つともなっている。
シェイクダンと言っても、ドライバー達はステアリングの重さを報告しているため、フロントタイヤが大きな能力を発揮出来る環境が整っていることは間違いないのだろう。
重いステアリングは、KYBのエンジニアがちょちょっと知恵をひねれば、アット言う間に軽快に仕立ててしまうだろう。
 
Photo:Sports-Car Racing
●やっぱり切り札はS102か?
S102を見た多くの人々は、Aピラーの太さを指摘している。どうして、Aピラーが太いのかと言うと、グループC時代と違って、屋根をフレームとして使うと共に、Aピラーは前側のロールバーとしての機能を与えられている。そのため、現在のACOのレギュレーションに従って“屋根付き”のLMPカーを作ると、Aピラーを細くデザインすることは出来ない。
童夢の工場内で最終組み立て中の写真をみてもらいたい。ノーズ床下中央部分のボートの船底中央の張り出しのような部分に見えるのは、KYB製EPSパワステのモーターユニットだ。非常に大きなディフューザーを床下に設けるため、EPSユニットの設置場所が無くなってしまった。KYBのエンジニアが、徹夜の連続で編み出したレイアウトだった。
このような工夫をした結果、ほとんどモノコック中央まで、大きなディフューザーは設けられている。
今回のテストは、シェイクダウンであるため、様々なシステムの作動を確認するのが最優先だ。そこで、一切サスペンションのセッティングは行われなかった。同時に空力セッティングも行わないため、逆に路面から空力の影響を受けないよう、ロードクリアランスを上げて走行した。サスペンション自体硬くセットされたこともあって、ドライバー達は、大きな違和感を感じながらドライブしていたようだ。
昨年童夢は、S101.5を使ってシステム開発テストを行っている。その最も大きな目的は、ザイテック製の電磁石を使ったパドルシフトシステムの開発だった。富士スピードウェイとSUGOを使って5日間も行われたことから見ても、容易な仕事でないのが理解出来るだろう。そのテストによって得られたデータは、ザイテックのエンジニアがイギリスに持ち帰って、S102のパドルシフトシステムの開発が行われた。シフトチェンジの際、アクセルを操作して、回転数を適切にアジャストする必要がある。このエンジンコントロールとシフトチェンジのタイミングがマッチすることが、パドルシフトシステムが成立するポイントとなる。エンジンとパドルシフトの2つコンピューターの適合が条件となるため、非常に困難な開発が要求される。
1日目、何度も伊藤大輔をヒヤリとさせる状況となった。本来、そこまで行う必要はないのかもしれないが、ジャドのエンジニアは意欲的に開発に取り組んで、スロットルにまで手を加えた。もちろん、ザイテックのエンジニアの努力もあって、2日目、何とかスムーズなシフトコントロールが可能となった。
しかし、完全な状況ではないようで、今後の開発について、慎重に作戦が練られている。
通常あり得ないような高いロードクリアランスとしたため、空力性能云々を判定することは出来ない。しかし、そんな状態でも280km/hを超える最高速度を記録しているため、高い空力性能を持つことは間違いないだろう。
シェイクダウンらしく、ブレーキの前後バランスやスターターモーターにも不具合があったようだが、これらは、いずれも容易に解決出来る内容だろう。来週富士スピードウェイで2回目のテストが行われるが、その時には、これらの問題が対策されると共に、にヘッドライト付きのフロントカウルが間に合うようだ。
S102は、優れた空力性能、そして優れた前後重量配分によって、大きな能力をフロントタイヤに与えて、より少ないダウンフォースで大きなコーナーリング性能を発揮する。S102が登場したことによって、2008年のスポーツカーレースの役者の総てが顔を揃えた。どうやら、S102が、ディーゼルエンジンに対する、最後の切り札であるのは間違いないようだ。
これから2ヶ月の間童夢が行わなければならないのは、そのポテンシャルを完全に引き出すことだろう。
 
Photo:Sports-Car Racing
*注:Sports-Car Racing Vol.18を参照してください。
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