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2012 6月20日SpecialEdition 2014年ルマンLMPレギュレーション草案
2012 5月7日 SpecialEdition ガソリンエンジンとディーゼルエンジンが付き合う方法
2012 3月4日 SpecialEdition クアトロを可能とした2012年のLMPレギュレーション 
2011 12月20日 SpecialEdition  2012年SuperGTにおけるレギュレーション運用方法  Part.1 
2011 12月20日 SpecialEdition 2012年のルマンはFIAレギュレーションで行われる
2011 11月26日 SpecialEdition  積極的に海外へ展開するSuperGT
2011 10月28日 SpecialEdition 2012年のスーパー耐久シリーズ  GT3カーは10台? シーズンオフにも海外遠征!
2011 10月13日 SpecialEdition 2011年SuperGTにおけるレギュレーション運用方法  Part.3 JAF-GTがFIA GT3と付き合う方法
2011 10月11日 SpecialEdition 2012年WECレギュレーション概要
2011 7月14日 SpecialEdition 2011年SuperGTにおけるレギュレーション運用方法  Part.2 性能調整の方法
2011 6月5日 SpecialEdition ACOの条件、FIAの目論み、ステファン・ラテルの希望?
2011 5月5日 SpecialEdition2011年SuperGTにおけるレギュレーション運用方法  Part.1 GT300は6つのカテゴリーに分類
2011 3月2日 SpecialEdition プジョーがフロントからも回生する908HYBRID4発表 4月24日のルマンテストディで走行?
2011 1月19日 SpecialEdition 最大10台!のGT3カーが日本へ上陸 彼らの目標はSuperGT? それともスーパー耐久?

5月7日
SpecialEdition ガソリンエンジンとディーゼルエンジンが付き合う方法

Photo:Sports-Car Racing

●2%ルール
 ACOは2004年レギュレーションによって、LMP1クラスにディーゼルエンジンのレギュレーションを設けた。メーカーの興味を集めるため、当時ディーゼルエンジンは850馬力を可能とする有利なレギュレーションを与えた。2006年アウディがルマンへディーゼルエンジンを持ち込む一方、2007年にはプジョーもディーゼルエンジンによってルマンへ復帰を果たした。アウディとプジョーのディーゼルエンジンは、2008年にはレギュレーションの限界と思われた850馬力を発生していたと考えられている。
 ところが、大多数のプライベートチームはガソリンエンジンを使っていた。2008年のガソリンエンジンのルールはせいぜい630馬力だった。2006年と2007年ペスカロロは、ACOに対して、ディーゼルエンジンカーとガソリンエンジンカーの速度差について、ルマンのサルテサーキットの彼方此方の速度のデータを示して、ルールの改正を求めている。

 残念ながら、ACOにとってメーカーの参加は重要であったことから、段階的に、事実上メーカーだけが使っているディーゼルエンジンの性能を引き下げる一方、ガソリンエンジンの性能を少しずつ引き上げた。と言っても、ほんの少しだけ大きなリdストリクターを与えられた2010年のガソリンエンジンが660馬力を絞り出しても、対するファクトリーチームのディーゼルエンジンは750馬力以上を発生していたため、どう贔屓目に見てもイコールコンディションとは判断出来なかった。

 速過ぎるLMPカーを遅くすることを目的として、2011年ルールが構想された際、FIAとACOは、エンジンの大きさを縮小するだけでなく、これまで批判の的となっていたディーゼルエンジンとガソリンエンジンの性能を整えることもテーマとなった。
 ガソリンエンジンについては、2010年までのLMP2エンジンをベースとして、NAの場合3.4リットル、ターボの場合2リットルに排気量まで縮小することが決まった。当初ディーゼルエンジンについても、3.4リットルの排気量が提案されたが、ある理由から、300cc大きい3.7リットルが許されることとなった。ディーゼルエンジンは、もちろんターボであるから、再び批判が巻き起こった。
 予算や技術が限られるプライベートチームが使うガソリンエンジンがたった3.4リットルのNAで、ふんだんな予算と大きな技術力を持つファクトリーチームが使うディーゼルエンジンが300cc大きいターボエンジンでは、批判も当然だった。
 そこで、FIAとACOは、ラップタイムが2%以上違うと判断された場合、性能調整を実施することを発表した。

Photo:Sports-Car Racing

●性能調整は行われるのか?
 性能調整は、シーズン最初の2つのレースでのラップタイムが対象となった。2011年の場合ILMC、ALMS、LMSの3つのシリーズが存在したが、既にALMSは性能調整を実施していたため、ILMCの最初の2つのレースでデータを得ることとなった。そして2011年の場合、実際にFIAとACOは性能調整を実施して、ルマンでは性能調整を行った状態でレースが行われている。
 性能調整が必要である程速さに差があるため、2012年は最初からディーゼルエンジンの性能を7%引き下げる一方、2011年同様最初の2つのレースで速さを判定して、再度性能調整を行うことが決められた。

 2012年も最初の2つのレースが性能調整の対象となっている。2012年の場合、明確にWECの最初の2つのレースを対象としているが、WECとALMSの開幕戦だったセブリング12時間の場合、2012年ルールで参加したWECエントリーのLMP1カーは、HPDの2台とOAKの1台だけだった。唯一のファクトリーチームであるアウディのディーゼルエンジンカーでさえ2011年ルールだった。
 ちなみにセブリングに参加したアウディは、2011年ルールのクルマに2012年の7%性能を引き下げたエンジンを組み合わせている。2012年ルールは、4つのタイヤハウスの上に大きな開口部の設置を義務付けているため、大きく異なる空力開発が行われている。1月に発表会を行ったトヨタが、タイヤハウスの開口部でなくスリットを設けていたため、アウディも神経質になっていたようで、2月にアウディが2012年バージョンのR18を公開した際、タイヤハウス上の開口部だけでなくタイヤハウスそのものを巧妙にカモフラージュしていた。

 2012年ルールによって大きく空力性能が落ちると考えられているため、これでは性能調整のデータを収集できない。つまり、セブリングでは性能調整のためのデータを収集する条件が整っていなかった。現在のところ、2日前に行われたWEC第2戦スパ-フランコルシャン6時間で得られたデータだけが性能調整の指針となると考えられている。

Photo:Sports-Car Racing

●性能調整の方法
 WECのレギュレーションによると、2%以上ラップタイムの差があることが確認された場合、リストリクター、車重、燃料タンクの3つによって性能調整を行う旨が記載されている。2日前に行われたWECスパ-フランコルシャン6時間の場合、ディーゼルエンジンカーとガソリンエンジンカーは、速さについては2%以上の大きな差があった。少なくとも、レースにおける、1スティント毎の周回数もディーゼルエンジンカーの方が2%以上有利だった。実際に補給した燃料の量が不明であるため、燃費については、少々曖昧だが、少なくとも、速さと燃費の両方でディーゼルエンジンカーの方が2%以上有利であったと考えられている。
 つまり、充分に性能調整を行う条件を満たしている。

 問題はアウディの唯一の対抗馬と考えられるトヨタが参加しなかったことだ。ご存じのように、スパのレースに参加せず、マニクールでテストを行うトヨタに対して、FIAは記者会見の実施を要求した。アウディも列席する少々曖昧な記者会見だったが、当然ながら、トヨタは性能調整の対象とはならない。と同時に、トヨタ抜きで性能調整を行う場合、少々困った事態が発生しているようだ。

 アウディの性能を引き下げた場合、アウディの唯一の対抗馬であるトヨタが有利となってしまう。つまり、アウディの性能をそのままとして、プライベートチームが走らせるガソリンエンジンカーの性能だけを引き上げるプランが有力だ。
 ところが、昨年を例にとると、大きなリストリクターを与えられても、ジャドは対応することが出来なかった。今年プライベートチームが使っているガソリンエンジンは、ペスカロロとOAKのジャドエンジン、レベリオンのトヨタFNエンジン、HPDのホンダエンジンの3つが存在する。ペスカロロの場合、新しいペスカロロ03はルマンでデビューするため、性能調整の対象とはならない。同じペスカロロの童夢もセブリングに参加しなかったため、少々微妙な状況だが、少なくともOAKは性能調整の対象だ。トヨタのFNエンジンを使うレベリオンとホンダエンジンは大きなリストリクターに対応出来るだろうが、それもチームとの契約次第と言えるだろう。
 つまり、昨年同様、大きなリストリクターより、車重の減量が、性能調整に盛り込まれる可能性が高い。

 速さについての性能調整は、何らかの方法が可能であるかもしれないが、問題は燃費の性能調整だ。この点についても、アウディの燃料タンクを小さくしたら、トヨタが有利となってしまう。と言うことは、再びガソリンエンジンを使うプライベートチームに苦労を強いることとなるのだろうか?例えばガソリンエンジンのプライベートチームに対して、10リットル大きな85リットル燃料タンクの使用を認めるとかだが、同時に燃料補給のパイプの直径を拡大しなければ、ピットインに要する時間が長くなってしまう。

 非常に苦労させられそうな状況だが、昨年と同じであれば、来週FIAとACOは、性能調整の内容を発表するだろう。 

*注:Sports-Car Racing Vol.20において、2011年レギュレーションの特集記事が掲載されます。少々お待ち下さい。

Photo:Sports-Car Racing


3月4日                                                                                
SpecialEdition クアトロを可能とした2012年のLMPレギュレーション
 
Photo:AudiAG

●4輪駆動を可能とした2012年のレギュレーション
 2月29日夜アウディは、ミュンヘン空港に隣接するアウディの施設において2012年のLMPプログラムを発表した。今年のアウディのLMP活動の目玉は、R18をベースとしたハイブリッドカーを走らせることだ。
 現在のハイブリッドカーのルールは非常に複雑だ。
 2011年のルールは、それでも多少明快だった。前輪もしくは後輪のどちらか一方からしか回生することは許されなかった。そして、電気モーターによって駆動出来るのも、前輪か後輪のどちらか一方だけだった。
 しかし、4輪駆動を禁止するルールが存在するため、エンジンによってリアを駆動しているクルマの場合、電気モーターをフロントに設置して、フロントで回生だけでなく駆動を行うことは禁止されていた。
 一般的には電気モーターは、リアのみに設置するのが許されると判断されていた。

 ブレーキングの際、大きな能力を発揮するのは前輪だ。つまり、ブレーキングによって回生する際、前輪の方が大きな能力を発揮出来る。つまり、何もルールを設けなければ、ほとんどのエンジニアは前輪に電気モーターを設置して、前輪で回生と駆動を行うことだろう。しかし、4輪駆動を禁止するルールによって、前輪に電気モーターを設置しても、そのモーターが許される仕事は回生だけだった。
 ところが、回生と駆動が同軸であることは義務つけられてなかった。回生だけを行う電気モーターをフロントに設置してフロントで回生する一方、リアにも電気モーターを設置すれば、駆動を後輪で行うことが可能だった。
 また、あり得ないが、エンジンをフロントにれいあうとして前輪を駆動しているFFのLMPカーであれば、後輪で回生を行って、前輪を駆動することも許されている。この複雑なルールが設けられた理由は、厳格に4輪駆動を禁止しているためだ。

 しかし、フロントに回生を行うだけの電気モーターを設けて、リアには駆動だけを行う電気モーターを設けた場合、重くなる。第一フロントに電気モーターを設けると、貴重なノーズのディフューザーのスペースを浸食してしまう。
 そのため、空力的なデメリットを覚悟して、機能が限られる電気モーターを2つも設ける理由は無いと考えられていた。

 全世界の路上にハイブリッドカーが普及しようとしているにも関わらず、このままではハイブリッドのLMPカーを登場させるメーカーが現れない。そこでACOとFIAは、さらに複雑な2012年のレギュレーションを編み出した。
 4輪駆動のアドバンテージは、大きなトラクションを得ることが出来ることだ。特に低速域で大きな能力を発揮する。
 前輪に電気モーターを設置しても、駆動出来るのが、トラクションへ寄与しない速度に限定すれば、周囲を納得出来るとACOとFIAは判断した。そしてACOとFIAは、120km/h以上の速度の場合、フロントを駆動するのを可能とする2012年のレギュレーションを作った。

Photo:Sports-Car Racing

●フロントに電気モーターを設けた場合のメリットとデメリット
 既に数年前からトヨタは、4輪総てに電気モーターを備えるハイブリッドLMPカーを作って走らせていたと考えられている。2012年に条件付きながら、前輪の駆動を認めるルールが出来たことで、最も参加が期待されたのはトヨタだった。
 実際トヨタは、2012年のデビューを目指してLMPカーの開発に取り組んでいた。東日本大震災の影響によって遅れたかもしれないが、トヨタは、前輪と後輪の両方に電気モーターを設置可能なTS-030ハイブリッドLMPカーを開発している。前輪用電気モーターをアイシンが、後輪用をデンソーが開発する一大プロジェクトとなっていた。
 2012年に条件付きでフロントの駆動を許したレギュレーションが設けられる以前、数年前から慎重に研究を行っていたらしいトヨタは、前輪に電気モーターを設けた場合のメリットだけでなくデメリットも知っていたようだ。

 充分な能力を発揮する電気モーターは、重いだけでなく、決して小さくはない。現在のLMPカーは、前車軸後方へのレイアウトが義務つけられるドライバーのつま先部分を上方に設けて、ノーズ床下に大きなフロントディフューザーを設置している。フロントのディフューザーはメインのディフューザーの能力を左右する存在であるため、どのエンジニアも妥協することなく、自由に大きなスペースとカタチをデザインしたい。そのため、前輪に電気モーターを設置する場合、設置する場所を確保するのが非常に難しい。
 第一、どのように工夫しても、フロントのディフューザーの上に電気モーターを設けるため、重心が高くなってしまう。
 これらの理由から、1月にポールリカールで走り出したトヨタTS-030は、後輪に電気モーターを備えていた。

 また、ACOは2回のブレーキングの間にハイブリッドによって取り出すことが出来るエネルギーについて、2011年から0.5MJ以下としている。「2回のブレーキングの間」と言う意味を、判り易く述べると、1回ブレーキングすれば、次にアクセルを踏み込んだ際、新たに0.5MJのエネルギーを取り出せることだ。このルールにも幾つかの条件が設けられ、ルールを回避するため、便宜上ブレーキペダルを踏むだけの簡単なブレーキングはカウントされない。1秒以上のブレーキングが対象となっている。
 現在トヨタが後輪に設置している電気モーターは非常に大きく、300馬力相当と言われている。300馬力をKwに換算すると220Kwを超えてしまう。と言うことは、トヨタは2回のブレーキングの間に電気モーターによって駆動出来る時間は2.3秒以下に過ぎない。
 逆の見方をすると、ハイブリッドカーに積む蓄電器は、どのようなシステムであっても0.5MJを貯める容量で充分だ。

 トヨタが新たに開発した3.4リットルV8エンジンの出力は、どんなに少な目に見積もっても530馬力以下とは考えられない。530馬力+300馬力=830馬力であるから、後ろの2つのタイヤだけでトラクションを確保するのは難しい。
 ポールリカールで走り出した際TS-030は、タイトコーナーから加速する際、大きくテイルスライドさせて加速していた。
 つまり、電気モーターによって大きなパワーを手に入れても、後ろの2つのタイヤだけで、その大パワーを使いこなすのは難しい。

Photo:Sports-Car Racing

●常に大パワーを発揮出来るトヨタ   120km/h以上でフロントを駆動するアウディ
 2011年のプチ-ルマンの際、アウディはハイブリッドカーを開発していることを認めると共に、リアに備える電気モーターによって、ブレーキングの際、瞬時に0.5MJを回生するのは難しいと説明していた。その時点から、我々はアウディがフロントに電気モーターを設置するハイブリッドカーを開発していることを予想していた。
 同時にアウディは開発しているハイブリッドシステムについて、以前RfHにおいて童夢を走らせていたイアン・フォーリーが開発したフライホイールハイブリッドであることを認めていた。イアン・フォーリーのハイブリッドシステムは、我々は童夢が買い取ると思っていたが、結局KERSを求めていたウイリアムズが専門の会社を設立して、開発することとなった。その後ポルシェが買い取って、997GT3Rハイブリッドレーシングカーを開発したことで、開発が順調に進んでいることが明らかとなった。
 ポルシェ997GT3Rハイブリッドレースカーは、正式なルールに基づいたクルマではなく、あくまでもテストカーだ。もちろんフロントに電気モーターを備えてフロントを駆動していた。つまり、電気モーターを作動させる場合4輪駆動だった。

 元々ディーゼルターボエンジンを使うアウディは、R18の3.7リットルV8でも800Nm以上の巨大なトルクを持っている。ディーゼルエンジンだけでも、後ろの2つのタイヤでトラクションを獲得するのは難しい状況だった。トヨタの様に300馬力に達する大出力でなくても、新たに電気モーターの出力を後輪で受け持たせるのは不可能と考えられていた。
 アウディがR18のために開発したイアン・フォーリーのハイブリッドシステムは、これまた、ポルシェのものと瓜二つな、フロントに設置される2つの電気モーターを採用している。出力も2011年のポルシェと同じ75Kwであるから、同じ電気モーターであるかもしれない。
 前輪を駆動する電気モーターは、デフを排除するため、左右別々に75Kwのものを2つ設置している。最も困難な電気モーターの設置場所だが、アウディが公開したイラストを信じるのであれば、助手席のつま先のあたりだ。もちろん、フロントのディフューザーによって、ハイノーズとなっているため、かなり高い位置に電気モーターは設置されている。このイラストを信じるのであれば、通常のR18と同一のモノコックを使っているようで、少なくとも、同じ2012年バージョン同士であれば、カタチの違いはない。
 こうして完成したR18ハイブリッドカーにアウディは、伝説のクワトロの名前を与えた。

 フロントに電気モーターを設置してフロントを駆動するR18クワトロは、75Kwの電気モーターを2つ備えるため、合計しても150Kwにしかならない。220Kw以上のトヨタと比べると非常に小さい。しかし、2回のブレーキングの間に取り出せる0.5MJから計算すると、3.3秒以上アシスト出来る。先に記した通り、トヨタは2.3秒以下と考えられるため、アウディの方が約1秒長く電気モーターを使用出来る。
 常に220Kw以上のパワーで後輪をアシストが可能なトヨタと違って、アウディがフロントを駆動可能な状況は120km/h以上の速度であるから、コーナーを立ち上がる際、ディーゼルエンジンだけで加速を開始して、120km/hを超えたら電気モーターが3.3秒作動する。
 しかし、ノーズのディフューザーの上にレイアウトされる電気モーターによって、フロントの重心が高くなるため、コーナーリングの際、特にコーナーに侵入する際弱点が出るかも知れない。
 トヨタが、ブレーキングの際、後輪から0.5MJを回生可能だとすると、加速する際、常にトヨタは220Kwのパワーでアシストすることが出来る。しかし、タイトコーナーから加速する際、限られるトラクションによって、アシスト量を減らさなければならない。
 どちらが優れているのか? 5月のスパ-フランコルシャンでの対決を楽しみとして待つことにしよう。
*注:Sports-Car Racing Vol.20に特集記事が掲載されます。

12月20日
SpecialEdition 2012年SuperGTにおけるレギュレーション運用方法 Part.1
ヨーロッパと同じ速さのFIA GT3、大幅に性能が向上するJAF-GT

Photo:Sports-Car Racing

●2012年JAF-GTレギュレーション  14インチ幅のタイヤを履き、大幅にパワーアップ、そしてハイテクの使用も可能
 元々SuperGTは、2012年新しいJAF-GTレギュレーションをGT300に導入する計画だった。2012年のJAF-GTレギュレーションは、オリジナルモノコックをベースとするか、作り直す場合、鉄のパイプフレームであることが義務つけられる。しかし、前面投影面積を同程度とするため、GT500同様、車高を1,100mmまで屋根を低くすることが許される。
 エンジンの搭載位置は、GT500がフロントエンジンで、しかも、前後の重量配分まで同等とすることを狙って、クルマの中でエンジンの搭載位置まで規定されるのに対して、GT300はフロントエンジンでもミッドシップでも可能で自由度が高い。
 しかも、従来通り、エンジンの積み替えも許される。

 2011年のSuperGTにおいて、2012年のJAF-GTルールのクルマはカテゴリーBと認定されていた。同様に2011年カテゴリーAに認定された、当時のJAF-GTルールのマシンも2012年に参加することが可能だ。
 2011年のJAF-GTルールに従って作られたマシンは、屋根を低く作り替えることは許されないが、フェラーリやランボルギーニの様なスーパースポーツカーは車高が1,100mm以下で、そのままの車高で走ることが出来るため、有利となる可能性もある。

 元々2012年のJAF-GTレギュレーションが構想されていた時、FIA GT3カーは存在しなかった。ところが2012年にシーズンを通してFIA GT3カーが参加した結果、FIA GT3カーと速さを整えるには、JAF-GTマシンの性能を大幅に向上させる必要が生じた。
 GTAだけでなくJMIAによってJAF-GTの速さを向上させるプランが話し合われた。その結果、大幅にリストリクターを拡大してエンジンパワーを向上させる一方、タイヤサイズもFIA GT3カーと同じ幅14インチまで拡大することとなった。

 一方でFIA GT3カーの性能調整の難しさから、2012年にSuperGTへ参加するFIA GT3カーのリストリクターを、ヨーロッパで走っているFIA GT3ルール通りとして、制限を加えないことが決まった。つまり、クルマによっては580馬力と言う、大パワーを発生するため、さらにJAF-GTマシンの性能を向上させる工夫が求められることとなった。
 その結果、2007年までの空力のルールを復活させて、リアウイングの大きさを400mm×150mmに拡大すると共に、フロントのオーバーハングを950mmまで延ばすこととなった。ロードクリアランスも5mm低い45mmとなった。
 同時に総てのFIA GT3カーが装備しているハイテクが検討された。数字に表れ難い部分だが、既にほとんどのロードカーで使われていることから、いくつかのハイテク装備の使用が認められることとなった。2012年の場合パドルシフトとトラクションコントロールの使用が認められることとなった。現在のところABSは認められないが、もし、2012年のシーズン序盤JAF-GTマシンがFIA GT3カーに負け続けるようなことがあれば、続いてABSの使用も許されることとなるだろう。

 大幅にエンジンパワーが増えると、エンジンコストの増大も課題となる。WRCラリー用の1.6リットルターボエンジンをGT300で使用することを検討していたレーシングチームが存在したが、彼らはWRCエンジンをベースとする場合、せいぜい380馬力が精一杯であるため、参加を諦めた。FIA GT3カーの多くが搭載するような大排気量スポーツエンジンは、日本メーカーには少なく、新たな問題の発生が懸念されているが、現在新たにJAF-GTマシンを開発しているコンストラクターはFNエンジンの使用を計画している。
*注:WRC用エンジンについてスバルの2リットルターボエンジンと勘違いされる可能性があるとの指摘がありました。検討されていたWRC用1.6リットルターボエンジンはスバルではありません。クルマも含めて日本のメーカーではありません。彼らのWRCエンジン計画は既に消滅して、GT3カーの導入を検討しています。

Photo:Sports-Car Racing

●FIA GT3カーは、FIA GT3ルール通りのエンジンパワー  基本的に最新モデルにアップデイトすることが条件
 例えば同じ500馬力を発生する場合でも、レーシンングエンジンは小さなサイズのリストリクターを取り付けることが出来るだろうが、ロードカーのエンジンは、大きなサイズのリストリクターを取り付けなければ、500馬力を発生することは難しい。FIA GT3カーは、レーシングカーと変わらない高度に開発されたエンジンを搭載するクルマも存在するし、逆にほとんどロードカーそのままのエンジンを搭載するクルマも存在している。その結果、FIA GT3マシンは、同じ排気量のエンジンと同じ車重の組み合わせる場合でも、同じサイズのリストリクターが使われている訳ではない。このロードカー故の事情が重要だった。

   FIA GT3カーの方がJAF-GTマシンよりも大幅にエンジンパワーが大きいことから、2010年以降FIA GT3マシンがSuperGTへ参加する際、GTAはJAF-GTマシンと出力を合わせるため、同じ比率でリストリクターを小さくした。ルールを作る者にとって、それ以上の方法はなかったことだろう。それで走らせてみて、速さが違うのであれば、性能調整を行えば良い、と判断した。
 ところが、実際に走り始めたFIA GT3マシンは、同じようにリストリクターを小さくしたにも関わらず、大きく速さが低下したクルマと、ほとんど速さに影響を与えることが無いクルマが存在した。

 理想としては、FIA GT3が行っているように、総てのFIA GT3カーを、同じドライバーが、いくつかのサーキットで走らせて、速さを判断すれば、きめ細かい性能調整が行えるが、日本へ輸入されたクルマは、その総てがメーカーの所有ではなくレーシングチームの所有であるため、このような細かなテストを行うことは不可能と考えるべきだった。
 そこで、FIA GT3カーの性能には手をつけず、JAF-GTの速さの方を調整することとなった。JAF-GT混乱の理由はここにある。

  元々FIA GT3カーは、ギア比も含めて、一切の変更が許されていない。しかし、毎年の様にメーカーは最新のGT3カーを開発して発売する。もちろん、新しいクルマの方が速いため、最初のFIA GT3のルールを尊重するなら、毎年最新のFIA GT3カーを買うことが、GT3カテゴリーでトップ争いを行う条件となる。しかし、これではレーシングチームの負担が大きいことから、メーカーは、最新バージョンへモデファイ出来るアップデイトキットを設定している。このアップデイトキットによる最新バージョンへのモデファイは、現在のところ、各シリーズの主催者に判断は任せられている。

 SuperGTにおいてもアップデイトキットによるモデファイが認められる見込みだが、例えば、2011年バージョンと2012年バージョンの違いが、エンジンとボディであった場合、アップデイトキットによって、エンジンだけ、あるいはボディだけをモデファイすることは許されない。アップデイトキットによって最新モデルに作り替える場合、総てを施すことが条件となる。
 その理由は、一部だけをアップデイトすることによって、細かなセッティングが可能となることを防ぐためだ。

 しかし、ポルシェの様にアップデイトキットの価格がせいぜい500万円の場合もあるが、アウディの様に、2011年バージョンを2012年バージョンに作り替えるアップデイトキットに2,500万円以上の値段を設定しているメーカーも存在する。2012年のR8 LMSの価格は約3,400万円(+VAT)であるため、ほとんどのレーシングチームは新車のR8を購入するだろう。

 既にアウディR8 LMSの最新バージョンを購入したレーシングチームも存在するが、フェラーリ458、ポルシェ997GT3R、BMW Z4等、相当の数のFIA GT3マシンが、2012年のSuperGTで走ることとなるだろう。

Photo:Sports-Car Racing

●2012年に限ってカテゴリーCとDの参加も許される
 元々2011年カテゴリーDに認定されたクルマは、SuperGTへの参加は2011年限りと規定されていた。カテゴリーDとは、元々ロードカーが存在しないクルマや極端に古いクルマのことを指している。同時に市販を前提としながら、極少数が生産されるか、ほとんど生産されてないクルマはカテゴリーCに認定され、GTAは将来参加を制限することを公表していた。
 しかし、現在の経済状況を考慮した結果、2011年に参加したチームが同じクルマを走らせる場合に限って、2012年のSuperGTへカテゴリーCとカテゴリーDのクルマの参加も許されることとなった。

 しかし、580馬力のFIA GT3カーや大幅に性能が向上するJAF-GTマシンに対して、カテゴリーCやDのマシンは、基本的に2011年と同じ内容で走らなければならない。現在のところ、紫電はシーズン前半だけしか走らないと考えられるため、ガライヤやタイサンの996GT3R等、ほんの数台のみがシーズンを通してSuperGTへ登場すると考えられている。

 2011年のSuperGTで速さを発揮したACOのGTEマシンは、2012年SuperGTへは参加しないと考えられている。しかし、2010年までに作られたGT2マシンは、1台か2台が参加すると考えられている。同じルールで作られたにも関わらず2011年のGTEカーが驚異的な速さを見せつけたことから、たった1台か2台であっても、GT2カーのルールを作るのは難しいようだ。

Photo:Sports-Car Racing

●すべては実際に走らせて決定する
 熟慮の上これらのルールは作られたが、実際に走らなければ、本当の速さは判らない。そこでGTAは、12月富士スピードウェイにおいて、一切制限を加えないFIA GT3マシンと新しいJAF-GTマシンを一緒に走らせて、速さを判定することを計画していた。
 しかし、それぞれのマシンが走行可能な日程の調整が出来ないことから、2月末、このテストは行われることとなった。

 また、2011年GTAは、簡単なデータロガーを総てのGT300マシンに取り付けて、性能を把握しようと考えた。しかし、ドライバーはアクセル全開と証言しても、アクセルを緩めて走るクルマも存在するため、2011年にGTAが導入した簡単なデータロガーでは、到底速さを把握するのが不可能であることを痛感しただけだった。そこで、2012年GTAは、より高度なデータロガーを導入する。
 2011年のように、クルマの速さを把握されないよう、チームが巧妙な作戦を取ることは、不可能となると期待されている。
 FIA GT3カーはギア比の変更を禁止しているが、新しいデータロガーによって、そのような疑惑にも対応出来るようだ。

 大幅に速さを増すGT300に対して、GT500のエンジンパワーは基本的に変わらないため、GT500との速さの摺り合わせのためにも、新しいデータロガーは力を発揮することが期待されている。

Photo:Sports-Car Racing

●テスト禁止のルールは継続       SuperGTマシンのスーパー耐久への参加は不可能
 SuperGTは、参戦コストを削減するため、シーズン開始後にチームがコースを占有したテストを禁止している。このルールは、SuperGTへ参加するマシンが、他のレースに参加する場合も適用される。その結果、同じようにFIA GT3カーのカテゴリーを設けているスーパー耐久へ、SuperGTに参加している同一マシンによって参加することは出来ない。

 もし、1台のクルマで、SuperGTとスーパー耐久の2つのレースシリーズに参加することが出来るのであれば、レーシングチームは大きな収入を得る可能性が出てくる。そのため、占有テストのルールの緩和が期待されていたが、少なくとも2012年、占有テストのルールは、従来通り厳格に施行される。つまり、SuperGTマシンのスーパー耐久への参加は不可能だ。

 特にFIA GT3ルールのマシンは、SuperGT、スーパー耐久、そしてGTアジアで走っているが、SuperGTが占有テストのルールを継続するため、スーパー耐久とGTアジアの間でのみ、相互乗り入れは行われるだけとなりそうだ。
 2012年スーパー耐久がGT3(STX)のルールを変更して、プロフェッショナルドライバーだけのチームによる参加を認める方針であるため、SuperGTとスーパー耐久は、似た方向を向こうとしている。この動きもあって、他のシリーズへの参加は不可能となるだろう。

Photo:Sports-Car Racing

 

2012GT300

 

2012JAF-GT

2011JAF-GT

FIA GT3

補足

2011年カテゴリーAB

2011年カテゴリーCD

2011年カテゴリーF

参加条件

 

 

 

 

 

 

 

 

新規参加不可

2011年シリーズに参加した

エントラントと車両が同一の場合2012年に限って参加可能

2012FIA GT3BOP通り

 

 

 

ロードクリアランス

45mm(201150mm)

2011JAF-GT300通り

ホモロゲイション通り

空力(フロント)

 

2007JAF-GT300規定

Fオーバーハング最大950mm

2011JAF-GT300通り

 

ホモロゲイション通り

 

空力(リアウイング)

*翼断面400mm×150mm

2011JAF-GT300通り

ホモロゲイション通り

パドルシフト/トラクションコントロール

使用可能

 

2011JAF-GT300通り

 

使用可能

*ホモロゲイション通り

タイヤサイズ

 

 

 

 

最大径28インチ

最大幅14インチ

タイヤサイズの変更に伴ってホイールを新造する場合アルミニウムに限る(10kg/)

最大径28インチ

最大幅12インチ
*2011JAF-GT300通り

 

 

 

 

最大径28インチ

最大幅14インチ
*ホモロゲイション通り

 

 

 

 

リストリクター

 

 

 

 

2011年比4~5ランクアップの予定

400~500馬力

テストによって決定

2011JAF-GT300通り

 

 

 

 

2012FIA GT3 BOP通り

500~580馬力

 

 

 

Part.2へ続く********************

2011年SuperGTにおけるレギュレーション運用方法Part.3  JAF-GTがFIA GT3と付き合う方法

2011年SuperGTにおけるレギュレーション運用方法Part.2  性能調整の方法

2011年SuperGTにおけるレギュレーション運用方法Part.1  2011年のGT300はA,B,C,D,E,Fの6つのカテゴリーに分類

12月20日
SpecialEdition 2012年のルマンはFIAレギュレーションで行われる

Photo:Sports-Car Racing

●ACOとFIAのスポーツカーレースのレギュレーションが統一
 1997年苦労の末ジョン・マンゴレッティは、FIAの屋根無しのプロトタイプスポーツカーのレギュレーションを使うISRSを作り上げた。この時ルマンではACOのレギュレーションのLMP1とLMP2と呼ばれる屋根無しのプロトタイプスポーツカーが走っていた。ISRSで走るFIAレギュレーションのプロトタイプスポーツカーはSR1とSR2と呼ばれたが、当時ACOとFIAの2つの屋根無しのプロトタイプスポーツカーは、グループC崩壊の反省によって、戦後の混乱を終息させるため誕生したため、完全に平らな床板やコクピットを完全にカバーするロールバー等事実上変わらなかった。ルマンでもISRSでもフェラーリ333SPが速さを披露していた。
 違いが生じるのは、ルマンに、メーカーが屋根無しのプロトタイプスポーツカーで参加した時だった。1999年になると、ルマンではカーボンブレーキやディフューザーが使われるようになって、ロールバーもドライバーのヘルメットを覆うだけとなった。ISRSで走るFIAレギュレーションの屋根無しのスポーツカーは従来と変わらなかったことから、2つのスポーツカーは違う道を歩み始めた。

 ACOのLMPカーの方が、速いだけでなく、メーカーが参加するため華やかだった。しかし、当時ヨーロッパではACOレギュレーションの屋根無しのスポーツカーレースのシリーズは存在しなかった。ルマン24時間と北アメリカのALMSだけだった。ヨーロッパで行われる屋根無しのプロトタイプスポーツカーのレースシリーズはISRSだけだった。そのため、ジョン・マンゴレッティのISRSはレーシングチームから根強い指示を得ていた。その後ISRSはFIA SCCと名前を変えて、FIAのスポーツカー選手権に昇格した。レギュレーションの摺り合わせが行われて、2003年、2つの屋根無しのプロトタイプスポーツカーは、ほとんど同じとなった。2002年と2003年にはヤン・ラマースの操る童夢が世界チャンピオンに輝いた。ACO自身がヨーロッパでもレースシリーズを開催する意向を見せたため、2004年LMESの誕生と同時にFIASCCは消滅して、ACOルールのレースシリーズだけが行われるようになった。

 しかし、レースシリーズを失っても、FIAのプロトタイプスポーツカーのレギュレーションは存在していた。2011年までFIAとACOの2つのプロトタイプスポーツカーのレギュレーションが存在したが、実際にレース行われていたのは、ACOの方だけだった。

 2012年FIAとACOはWECを開催する。近年のFIAのプロトタイプスポーツカーのレギュレーションは、数年前のACOのものを追従しただけで、近年屋根付きが主流になったにも関わらず、それらを充分にカバーしてなかった。であるから、2012年のWECは、FIAが承認を与えるだけで、実際には、従来通りACOルールで行われると考えられていた。

 10月にACOは2012年のLMPとGTEのレギュレーションの概要を発表した。同時に12月2日FIAのワールドコミッションの後、正式にレギュレーションを発表することを公表した。ところが、12月2日を過ぎてもACOは、いっこうにレギュレーションを発表しなかった。
 ACOに問い合わせたところ、2012年のレギュレーションは、ACOではなくFIAが管理して、FIAが発表することが明らかとなった。
 先週やっとFIAは2012年のWECのテクニカルレギュレーションを公表した。FIAのレギュレーションとなってもSR1と呼ばれる訳ではなく、プロトタイプスポーツカーがLMP1(ルマン・プロトタイプ)とLMP2、GTカーもGTEのままで、ACO時代と名前も変わらない。

Photo:Sports-Car Racing

●ハイブリッドカーは燃料タンクを小さく  ガソリン燃料はE10のみか?
 10月にハイブリッドカーのルールの概要も公表されているが、フロントもしくはリアの2軸のみでブレーキング時に回生することが可能で、2回のブレーキングの間に放出出来るエネルギーも0.5MJ以下であることも変わらない。4輪駆動のアドバンテージを無くすため、ハイブリッドによるエネルギーは、120km/h以上の速度に限ってフロントでも放出することが可能となっている。

 ハイブリッド(エネルギリカバリーシステム)を採用することによって、速さだけでなく、理論上燃費の向上が見込める。そこでエネルギーリカバリーシステムを採用した場合、燃料タンクを縮小することが決定した。ベースのエンジンがガソリンでもディーゼルでも、2リットル小さな燃料タンクが義務つけられる。
 2012年の基本ルールは、ガソリンエンジンの燃料タンクは75リットル、ディーゼルエンジンは60リットルであるため、エネルギーリカバリーシステムを盛り込んだ場合、それぞれ73リットルと58リットルまで燃料タンクは縮小される。

 ちなみに、近年、主に北アメリカを中心として、アルコールを85%含有するE85燃料が使われるようになっていた。その理由は、もちろん、環境に配慮したためだ。アルコールの含有量が増えると、燃費は悪化するが、オクタン価が向上する。しかも粘性が低いため、燃費が悪化しても燃料補給の時間が短縮出来るため、GTEカテゴリーの場合、トップチームのほとんどがE85燃料を使用していた。
 ALMSの場合、グリーンエネルギーの象徴として、E85の使用を積極的にアピールしていた。

 ところが、2012年FIAは、WECのシリーズを通じてE10のみをガソリン燃料として使うことを規定している。ルマンシリーズにはミシュラングリーンXと名付けられたグリーンエネルギーの章典まで用意されているのだ。少々時代錯誤のルールとしか考えられない。既にGMワークスのコルベットレーシング等が、燃料のルールの見直しを提案している。長い間スポーツカーのレースシリーズを開催していないFIAにとって、レーシングチームとメーカーの信用を失いかねない失態となりかねない。

Photo:Sports-Car Racing

●ディーゼルエンジンは7%の性能低下
 既に公表されていたように、ディーゼルエンジンは7%性能が引き下げられるが、その方法は、リストリクターとターボのブースト圧によって行われる。2011年排気量3.7リットルのディーゼルターボエンジンは直径47.4mm(33.5×2)のリストリクターと3,000mmbarのブースト圧の使用が許されたが、2012年は45.8mm(32.4mm×2)と2,800mmbarまで引き下げられる。
 興味深いのは、ディーゼルターボエンジンのルールが、アウディとプジョーが使う排気量3.7リットルの項目だけとなったことだ。

Photo:Sports-Car Racing

●LMP2カーは価格制限ルールのマシンと従来のマシンの2つのルールを設定
 既に公表されていたように、価格の上限を設けたクルマのルールが正式に発表された。価格の上限は335,000ユーロで、オーダーがある場合コンストラクターは1年間に最低5台を販売しなければならない。ローラが主張していた、3年間モデルチェンジ出来ないルールは、少なくともレギュレーションブックには記載されていない。

 しかし、2012年以降335,000ユーロ以下のLMP2カーだけが走る訳ではない。従来のルールのLMP2カーも参加することが出来る。しかし、従来ルールのLMP2カーと比べて、335,000ユーロ以下の価格のLMP2カーは、約1mm大きなリストリクターの使用が許される。

 2011年からLMP2にはGTEエンジンを含むホモロゲイションエンジンが使われるが、価格を従来通り75,000ユーロに制限される。
 ちなみに、昨今の通貨危機を考慮して、FIAは為替レートまでレギュレーションブックに記載しているが、日本円の場合、1ユーロ=111円に固定される。イギリスポンドの場合、1ユーロ=0.87英ポンドだ。

Photo:Sports-Car Racing

●シャークフィンとリアタイヤハウス上にもスリットは、総てのLMPカーに義務つけ
 LMP1、そして2つのLMP2カー等すべてのLMPカーは、リアカウルにシャークフィンの設置が義務つけられる。
 リアタイヤハウス上にスリットの設置も正式に規定された。しかも、従来スリットの面積のルールは存在しなかったが、2012年の場合、フロントタイヤハウスとリアタイヤハウスの両方について、細かくスリットの面積まで規定されている。
 優秀なデザイナーは、現在空力開発をやり直していることだろう。

 E85燃料の件や世界中のスポーツカーレースとバッティングしているカレンダー等、WECには様々な不具合が存在する。12月2日ACOとFIAが述べたように、2月2日に正式に発表されるまで、総てを判断することは出来ない。

*Sports-Car Racing Vol.20の特集記事を参照してください

2012年WECレギュレーション概要

11月26日
SpecialEdition 積極的に海外へ展開するSuperGT

Photo:Sports--Car Racing

 現在の日本は、国内での大きな消費が期待出来ない。つまり、物が売れない。と言っても、これまで経験しなかったような円高によって、容易に輸出が増えるような状況ではない。しかし、優れた日本製品が、海外で高値で取引されていることも事実だ。JMIAが積極的にF4をはじめとする優れた日本製品を海外に売り込んでいる理由もここにある。そうでなければ、日本人はご飯を食べられないのだ。
 SuperGTが置かれている環境も変わらない。以前からSuperGTは海外への展開を望んでいるが、ガラパゴスカテゴリーと言われるGT500をトップカテゴリーとする以上、マレーシアで定着しつつあることを除くと、海外での展開は難しかった。

 SuperGTを統括するGTAは、今年セパンでのレースについて、マレーシアのJPモータースポーツと契約した。従来GTAとの契約相手はセパンインターナショナルサーキット(SIC)自身だったが、それがJPモータースポーツに替わった。セパンで行われるSuperGTはJPモータースポーツが開催して、SICは場所を貸すだけとなった。今年JPモータースポーツ自身、初めての開催であるため、大きな資金を投入して、セパンのレースの週末に様々なイベントを開催した。このような努力もあって、これまでのセパンでの観客動員数の新記録を作ることに成功した。
 以前からJPモータースポーツへは、ヨーロッパのレースシリーズやプロモーターから、様々なレースシリーズを開催する相談が持ちかけられているが、マレーシア国内だけでなく、バーレーンやドバイでの開催についても相談があるようだ。
 どうやら、GTAはJPモータースポーツとの関係を強めて、海外展開を目論んでいるようだ。

 またGTAは、以前から話しがあった韓国でのSuperGT開催について、独自に仮契約を締結することを決定した。場所は、あのF1GPが開催された韓国インターナショナルサーキットだ。KAVOが運営する韓国インターナショナルサーキットは、前政権下で建設が始まったため、現政権となって政府の支援が無くなった結果、様々なインフラの整備がストップしてしまっている。しかも、元々地盤が悪い場所に大急ぎでサーキットを建設したため、目で見ても判るくらい、既に路面にうねりが生じる事態となっている。
 このような状況もあって、このサーキットでは、年に1度のF1GPを除くと、ほとんどレースは行われていない。2010年に参加したF1GPチームが2011年再び訪れた時、ほとんどのチームは2010年と同じピットを使用している。その時、彼らがピットに設置された冷蔵庫を開けると、1年前自分たちが置き忘れていった食料が、そのまま入っていたほど、使われてなかった。
 では、どうして、このような場所での開催にGTAが同意したのか?と言うことになるが、GTA株式会社の坂東社長によると、韓国の場合、取りあえず仮契約した後で本格的な交渉を行う慣例があるためと言う。

 当のGTAとは本格的な話し合いは行っていないようだが、日本に友好的な台湾では、新しいサーキットでSuperGTを開催することを望んでいる。旧体制時代のGTAは、台湾でストリートレースを計画したことがある。その際、公道を閉鎖し易い、旧正月、もしくは国慶節の週の初日に開催することを計画していた。いずれにしても、SuperGTの海外展開は避けられない事態となっている。

10月28日
SpecialEdition 2012年のスーパー耐久シリーズ  GT3カーは10台? シーズンオフにも海外遠征!

Photo:Sports-Car Racing

 数年前までスーパー耐久シリーズは、SuperGTとは違う、もう1つのハコのレースカテゴリーとして行われていた。もちろんトップ争いはプロフェッショナルドライバーによって行われた。自動車メーカーと関わりが深いレーシングチームも多数参加していた。彼らにとっては、SuperGT以上のカテゴリーだった。
 しかし、元々グループN(日本的にはN1)のレースであるため、主体はアマチュアだった。自動車メーカーと関わりの深いレーシングチームの存在に違和感を感じる人々も少なくなかった。現在でも開発の場として、メーカーと関わりの深いレーシングチームは参加しているが、近年のスーパー耐久シリーズは、アマチュアのレースであることを宣言して、完全にSuperGTとは違う方向を向いている。

Photo:Sports-Car Racing

 今年スーパー耐久シリーズは、フィットやヴィッツと言ったコンパクトカーのカテゴリーを設けた。ヴィッツレースが盛んに行われていることを考慮して、アマチュアドライバーの参加を促進するためだった。
 同時にSuperGTでも走っているFIA GT3カーのクラスも設けた。FIA GT3は、裕福なアマチュアドライバーのために作られたGTレースカーのカテゴリーで、近年ヨーロッパを中心として急激に人気を集めていた。
 最もパワフルなGT3カーは600馬力にも達するが、スーパー耐久は、対象をアマチュアドライバーに絞って、アマチュアドライバーが参加し易いよう、ヨーロッパで走っている状態のまま走ることが出来る。
 GT3カーはSuperGTのGT300へも参加出来るが、SuperGTの場合、少なくとも2011年まで、既存のJAF-GTに合わせるため、ヨーロッパで走っているGT3カーそのままではなく、小さなリストリクターの装着を義務つけている。
 つまり、同じGT3カーでも、SuperGTのGT300を走っているクルマより、スーパー耐久を走るクルマの方が速い。

 プロフェッショナルなシリーズを目指すSuperGTとスーパー耐久は、それぞれ棲み分けが出来ているように思えるが、実際は、そんなに上手くはいっていない。例えば、レーシングチームが1台のGT3カーを導入して、プロフェッショナルドライバーを乗り組ませてSuperGTへ、アマチュアドライバーを乗り組ませてスーパー耐久へ参加出来るのであれば、レーシングチームにとって、大きな収入を見込める。しかし、SuperGTはコースを占有したテストを制限しているため、スーパー耐久のレースに参加した場合、占有テストを判定されて、SuperGTへは参加出来ない。この様なボタンの掛け違いもあって、2011年スーパー耐久へのGT3カーの勧誘は上手くいかなかった。

Photo:Sports-Car Racing

 GT3カーは東南アジアを中心として開催されているGTアジアのメインカテゴリーだ。元々GTアジアのエントラントは、マカオGPの併催レースとして行われているギアレースのエントラント、あるいは支援者の集まりであるホンコンスーパーカークラブを中心としてスタートしている。2011年の場合、マレーシアのセパンで2回(内1回はSuperGTの併催イベント)、マカオGPの併催イベント、そして7月から10月にかけて日本で3回開催する計画だった。
 そこで、スーパー耐久と同じアマチュアドライバーを対象としたGTアジアのチームが、スーパー耐久へ参加することを目論んだカレンダーを作った。GTアジアは7月にフォーミュラニッポンの併催イベントとしてFujiスピードウェイで、9月にSuperGTの併催イベントとして鈴鹿でレースを行っているが、それぞれ翌週にスーパー耐久はFujiスピードウェイと岡山でレースを行うカレンダーを作った。

 実際GTアジアのエントラントの何人かは、スーパー耐久へ興味を示した。しかし、シーズン開幕前に充分な情報がなく、遠征先の日本で突然GT3カーのアマチュアドライバーのための耐久レースが行われていることを知っても、GTアジアのエントラント達は、急に予定を変更するのは難しかく、1台も参加することはなかった。
 明らかにスーパー耐久側のインフォメーション不足だが、スーパー耐久にとっても、正々堂々とGTアジアの面々を勧誘し難い事情があった。最新のフェラーリやポルシェ等華やかなGT3カーがたくさん走っているGTアジアと比べると、フィットやヴィッツが走るスーパー耐久は、明らか地味だった。地味なスーパー耐久がGTアジアへ提携を申し込んだら、逆にGTアジアへスーパー耐久が取り込まれてしまう恐れを否定出来なかったからだ。
 実際、マレーシアのメルディカ12時間レースやマカオGPへは、GTアジアに参加しているGT3カーによって、日本の裕福なアマチュアドライバー達が何人も参加している。
 そのため、自発的にGTアジアのチームがスーパー耐久へ興味を示すのを待つしかなかった。

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 第一2011年のスーパー耐久は、一ツ山レーシングのアウディR8LMSだけが唯一のGT3カーのエントラントだった。当初もう1台ポルシェの参加が見込まれていたが、東日本大震災の影響によって参加を取り止めた。スーパー耐久が控えめなインフォメーションしか行わなわず、GTアジアの面々の興味を惹くことが出来なかったのも無理はない。
 現在スーパー耐久は、2012年に10台程度のGT3カーが走ることを前提として計画を進めている。既に5台程度が決定しているようだ。1台は2011年も参加した一ツ山レーシングのアウディR8LMS、2011年のST1チャンピオンであるペトロナスチームが走らせる2台のメルセデスSLS GT3、残る2台はポルシェと考えられている。
 さらにニッサンNISMO GTR GT3、アウディR8LMS、ランボルギーニLS560、BMW Z4 GT3、フォードGT、フェラーリ458 GT3等によって、スーパー耐久へ参加を検討しているチームが存在するようだが、これらの中にはGTアジアに参加しているレーシングチームも含まれているようだ。

 スーパー耐久にとってGT3カーの導入は非常に重要な課題であるため、2012年スーパー耐久は非常に現実的な選択を行っている。スーパー耐久のトップチームであるペトロナスは、毎年8月にマレーシアの独立記念を祝してセパンで開催されるメルディカ12時間レースへ参加しているが、これまでペトロナスは、日本とマレーシアへマシンを保管していた。そこでスーパー耐久は、2012年にメルディカ12時間をシリーズのポイント対象レースに認定している。ルール上8月26日の岡山か9月1日のメルディカ12時間のどちらを選択してもポイントが与えられる。
 もちろん、メルディカ12時間へはアウディのワークスチームを含むたくさんのGT3カーが参加するため、日本へ3ヶ月もマシンを保管しているGTアジアの面々がスーパー耐久へ参加し易くするための配慮だ。

Photo:Sports-Car Racing

 海外遠征についてスーパー耐久は非常に現実的で、ポイント対象外として、12月から2月のシーズンオフに海外でレースを行うことを計画している。日本では寒くレースに適さない季節であるだけでなく、レーシングチームの収入が途絶えるシーズンオフにレースを行うことで、メカニック達に仕事を発生させる効果も期待出来る。
 具体的に、何処でレースを行うのか?と言うと、1年前まで話し合いが行われていた中国が一歩後退したようだ。韓国での開催については、サーキットを含むインフラが整わないと難しいようだ。
 現在スーパー耐久が話し合いを行っているのは、冬でも暖かい東南アジアだ。タイでの開催は非常に進んでいたようだが、現在洪水の影響によって、もちろん話し合いはストップしている。他にも台湾のサーキットがスーパー耐久の誘致を表明しているが、当のスーパー耐久との話し合いは、未だ行われていない。

 最も積極的にスーパー耐久が話し合いを行っているのはマレーシアだ。と言っても、我々に馴染みのあるセパンではない。現在スーパー耐久はマレーシアのプロモーターと共に、マレーシアの複数の場所でのレース開催の話し合いを行っている。彼らは来年のシーズンオフの開催を望んでいるが、マレーシアでは2月に入ると旧正月となって、到底レースを開催するのは不可能となってしまうため、12月、出来れば12月24日に開催することを望んでいる。
 公道レース等も検討されているようだが、マレーシア政府と自治体の双方の支援がなければ公道レースは開催出来ないため、たった1年で計画をまとめるのは難しいだろう。現在のところ、マレーシアの南端にある、つまりシンガポールからの観客も期待出来る場所での開催が最有力と考えられている。今月中にスーパー耐久の代表がマレーシアを訪れて、本格的な話し合いが行われることとなるようだ。成功することを期待したい。

Photo:Sports-Car Racing

10月13日
SpecialEdition 2011年SuperGTにおけるレギュレーション運用方法  Part.3 
JAF-GTがFIA GT3と付き合う方法

Photo:Sports-Car Racing

●FIA GT3はアマチュアドライバーのためのGTレース
 現在世界のGTレースの頂点に君臨するACOのGTEカーは、世界中のワークスチームが参加することもあって、ロードカーベースを立て前としながら、高度な開発が行われている。1990年代のGT1の時代過激なハイテク競争が行われたことへの反省から、LMPカテゴリー同様ほとんどのハイテクを禁止する一方、エンジンパワーを制限するため、理論上発生可能な出力をガイドラインとして、非常に小さなリストリクターの装着が義務付けられている。ハイテク禁止と言っても、ACOがタイヤの信頼性の確保に熱心であるため、タイヤの過度の負担を避ける、トラクションコントロールの装着は認められている。
 判り易く表現すると、GTEカテゴリーは、昔ながらのエンジン排気量やリストリクター径、車両サイズ、タイヤサイズ等を制限して、その範囲内で最高の性能を追求している。性能調整によって、みんな一緒に仲良く走ろう、と言うSuperGTの概念は存在しない。
 その意味でも、LMPカテゴリーに次ぐ、スポーツカーレースの一方の頂点に君臨している。

 レース専用に開発され、ワークスチームと直接対決しなければならないため、近年プライベートチームにとって、GTEカテゴリーは高度になり過ぎた。伝統的にGTレースは、レース好きなミリオネラの支援によって成り立っている。これらのミリオネラの多くは、自分自身がステアリングを握ってGTレースで走ることを前提として、レーシングチームを支援していたため、勝ち目が無いワークスチームと一緒に走って、時には屈辱の予選落ちを経験しなければならないレースに違和感を感じていた。
 元々これらのミリオネラは、ポルシェカレラカップやフェラーリチャレンジの様なワンメークスポーツカーレース、あるいはヒストリックカーレースを最初のステップとしてスポーツカーレースに参入している。彼らが最も望んでいるのは、自分と同じレース好きなミリオネラと競い合うことだった。さらに、自分で大きな金を負担しているのに、ワークスチームに容易に抜かれたくはなかった。
 
 このようなミリオネラの希望は昔から知られている。1993年パトリック・ペーター、ステファン・ラテル、ユルゲン・バースが実施したBPRシリーズは、そのようなGTレースの先駆者だった。BPRシリーズがFIAGTにコンバートして、再びレース好きなミリオネラが行き場を失ったことに気づいたステファン・ラテル等が思いついたのが、ロードカーベースのアマチュア専用のGTレースだった。
 レース好きのミリオネラ達の嗜好はまちまちで、彼らは、まったく違う様々なロードゴーイングスポーツカーに興味を持っていたため、総てのロードゴーイングスポーツカーが一緒に走って競い合うことが理想だった。つまり、6リットルV12のアストンマーティンDB9と1.8リットルの4気筒エンジンのチッポケなロータスが一緒に競い合うレースだ。
 通常のGTレースで行われているエンジンの排気量や車重、タイヤサイズをガイドラインとしたレギュレーションで、このような大きく違った内容のクルマの速さと整えることは不可能だった。各々のクルマに応じて、違うレギュレーションが必要だった。

 ところが、各々のクルマによって違うレギュレーションを施行したら、たちまち、それぞれのメーカーから反発されるだろう。そこで、ドライバーのテクニックの優劣を良い訳と出来るアマチュアドライバーだけが参加出来るレースとして、GT3カテゴリーは創設された。最初国内レースに過ぎなかったが、次第に人気を集めたため、その後正式にFIA GT3カテゴリーとして施行された。

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●各々のクルマによって違うレギュレーションは実際にサーキットを走って決定する
 しかし、各々のクルマ応じたレギュレーションを用意するとしても、ある程度のガイドラインは必要だ。そこでFIAが管理するようになったFIA GT3カーは、ロードカーをベースとしてFIAの統一規則によって開発したマシンを実際に走らせることによって、速さを特定して、その後、各々のクルマに応じたレギュレーションを求める方法が採られている。
 この場合注意しなければならないのは、現在FIAやACOが、一部のノーマルカーレースを除いて、総てのレースカテゴリーにおいて4輪駆動を禁止していることだ。また、抜け道はあるようだが、通常規模の自動車メーカーの場合、GTレースカーとして完成したクルマを最低25台、一部の小規模のメーカーの場合、同じくGTレースカーとして完成したクルマを最低12台用意しなければならない。つまり、逆の見方をすると、この25台のGTレースカーを作る段階で、ある程度の開発を試みることが可能と考えられている。

 現在基本となっているFIA GT3の場合、2つ以上のサーキットで3人以上のプロフェッショナルドライバーが同時に走らせて、実際の速さを判定している。その結果、各々のクルマに応じたレギュレーションが求められるが、基本的に車重、ロードクリアランスによって速さの調整は行われる。少し前まで性能調整の手段として、リストリクターのサイズの変更も使われていたが、次の項目で記す様に、リストリクターによる性能調整は困難と判断されている。現在はルールブックに記載されているだけで、基本的に使われていない。

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●同じ排気量から同じ出力を発生する場合でも、違う大きさのリストリクターが装着される理由
 エンジンは、ロードカーに積まれているエンジンから基本的に変更しないことを条件として、ロードカーの段階で、そのエンジンが発生している出力を阻害しない程度のサイズのリストリクターが装着されている。つまり、GT3カーに装着されているリストリクターは、当初出力を規制するために装着されたものではなかった。しかし、誰が考えても容易に想像出来るように、基本的にロードカーと同じエンジンであっても、ほんのちょっとコンピューターに手を加えるとか、あるいは違うカムシャフトと交換したり、オイルパンを交換する際事実上のドライサンプとしたエンジンを25台用意することは、大きな予算を必要としないでの可能だ。
 つまり、ある程度レース専用として、高出力を追求するための開発を行うことが可能な状況となっている。

 このような状況によって、例えば同じ500馬力を発生しても、排気量が6リットルのエンジンに大きなリストリクターを装着しなければならないエンジンもあるだろうし、たった3リットルの排気量でも、小さなリストリクターを装着して発生するエンジンも存在する。
 あるいは、同じ排気量でも、同じ出力を実現するため、違う大きさのリストリクターを装着する場合も存在する。

 この様にGT3カーは、リストリクターの限界近くまで性能を追求しているエンジンと、ほとんどロードカーから手を加えられないため、大きなリストリクターはただ取り付けられているだけで、リストリクターの影響をほとんど受けないエンジンが存在する。
 つまり、性能調整を行う際、リストリクターの限界近くまで性能を追求しているエンジンは、ほんの少しだけリストリクターの大きさを小さくしただけで、大きく出力が削減してしまうだろうし、ほとんどロードカーから手を付けられず、大きなリストリクターが、ただ取り付けられているエンジンは、リストリクターを小さくしても、ほとんど出力は変わらない。
 そのため、GT3カーの場合、リストリクターのサイズを変更する方法は相応しくないと考えられている。

Photo:Sports-Car Racing

●JAF-GTに合わせてFIA GT3カーのリストリクターを小さくしてしまったSuperGT
 ところが、SuperGTは、FIA GT3のこの様な事情を知らなかったようだ。JAF-GT、あるいは2009年までのFIA GT2、あるいはACO-GTE同様、排気量に応じて理論上発生可能な出力をガイドラインとして、FIA GT3カーのリストリクターのサイズが決められているとSuperGTは判断した様で、昨年FIA GT3カーをGT300クラスに導入する際、FIA GT3カーの大きな出力を削減するため、GT3カーのカタログスペックと実現したい出力の比率を導き出して、その比率に従って、リストリクターのサイズを縮小した。

 昨年の場合、ポルシェ997GT3RしかFIA GT3カーは登場しなかった。ところが、今年次々とFIA GT3カーが登場するようになったにも関わらず、昨年求めたFIA GT3をJAF-GTに変換する比率を使って、FIA GT3カーのリストリクターを変更してしまった。
 リストリクターを縮小しても、ほとんど影響を受けないクルマが現れた結果、不可解な今年のレースが行われるようになった。

Photo:Sports-Car Racing

●買った状態から一切の変更が許されないFIA GT3  困難な車検       仕事を失うエンジニアと優秀なメカニック
 このように、各々のクルマに応じたレギュレーションを設定しても、優秀なメカニックによって、細かなセッティングが加えられたら、大きく性格は変わってしまう。そこでFIA GT3カー特有のルールとして、デリバリーされた状態から、一切変更することが禁止されている。ギア比、スタビライザー、ショックアブソーバー、スプリング、さらにホイールはサイズだけでなく銘柄まで変更出来ない。
 しかし、ロードカーとして装着されているものについては、4輪駆動を除くと、あらゆるハイテクが使用可能だ。ACO-GTEではタイヤの信頼性を保証するためトラクションコントロールが許されるだけだが、パドルシフトやABSも使用可能だ。

   SuperGTやACO-GTEはホイールの最大径を18インチに制限しているが、ロードカーの場合20インチ径のホイールを使うクルマも存在している。既にフェラーリ458GT3とマクラーレンMC4-12Cは、19インチ径のリアホイールを使っている。もちろん、これらのGT3カーがレースに参加する場合、19インチ径のホイールとタイヤを使わなければならない。既にミシュランとダンロップが19インチ径のホイールに対応するタイヤを供給しているが、現在準備中のヨコハマも含めて、これらのタイヤメーカーは、20年前のグループCや14年前までのGT1カーに許されたタイヤの型を倉庫から運び出して、最新のテクノロジーでタイヤを作っているようだ。

 何も変更出来ないと言っても、レースに長けたメーカーは工夫を凝らして、ショックアブソーバーの減衰力やバネを調整可能なシステムを盛り込んでいるし、その場合でもサスペンションジオメトリーが変わらない工夫まで行っている。
 さらに、参加する総てのクルマの詳細のスペックが判らなければ、もし、不心得なレーシングチームが、巧妙な違反をを行っても、それを判定することが出来ない。

 華やかなスーパーカーのレースシリーズとして定着しているGTアジアでは、完全なスペックを判断出来ないことから、GT3導入時意図しない細かな違反が頻発した。年式違いのGT3カーのパーツを使ったレーシングチーム等、情状酌量の余地のある場合もあったようだが、意図しない違反が続出した結果、現在では、書類検査を除く細かな車検は行われていない。
 なぜなら、細かな車検を行ったら、レースで走るクルマが居なくなってしまうからだ。現在GTアジアでは、ギア比、ショックアブソーバー、スプリング等は、コースに応じて交換するのが当たり前となっている。中にはエンジンに手を付けるチームも存在するようだ。
 それでもGTアジアの場合、レース好きのミリオネラの社交場として定着しているため、まったく不満は出ていない。

 SuperGTにおいても、GT3カーの車検は大きな問題となっている。これほど困難なGT3カーのレースが成立した理由は、アマチュアドライバーによる遊びの場であると同時に、元々GT3カーを作っているメーカーの地元のヨーロッパで開催されることから、メーカー、あるいはメーカーと付き合いのある人物の目に触れる場で開催されるため、もし不満がある場合、違反するのでなく、他のGT3カーに買い換えることを前提として行われているからだ。わざわざ違反をして、上位でフィニッシュするレースではないのだ。

 何も変更出来ないことによる最も大きな弊害は、せいぜいタイヤの空気圧を測ることくらいしか仕事が無くなってしまったエンジニアと、タイヤ交換とガソリン補給しかと出来なくなって、メカニックの仕事が無くなってしまうことだ。

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●FIA GT3をそのままとして、JAF-GTの速さを調整する        直ぐに大パワーを発揮出来ないJAF-GT
 FIA GT3を導入した際心配性のGTAは、GT3カーに性能調整を行った場合、GT3カーを作るヨーロッパのメーカーが反発するのを心配していた。そのため、リストリクターの大きさを変更することによってFIA GT3カーの速さを調整するのが困難であるのが判明すると、FIA GT3カーには手を付けず、JAF-GTの速さを向上することを検討するようになった。

 既に鈴鹿でレクサスISのJAF-GTカーに大きなリストリクターを装着してテストが行われているが、そのテストに使われたクルマは、GT500で走っているクルマと基本的に同じレーシングエンジンを積んだGT300マシンだった。元々500馬力以上を発生するエンジンに小さなリストリクターを装着してGT300で使われていたエンジンであるから、大きなリストリクターを取り付ければ、FIA GT3カーと変わらない500馬力以上の大きなパワーを発生することが可能だ。もちろん、素晴らしい速さを披露している。

 ところが、現在GT300に参加しているJAF-GTマシンの中で、レーシングエンジンを搭載しているのは、このレクサスISだけであって、他のカローラとスバルの2つのJAF-GTマシンにはロードカーのエンジンが積まれている。しかも、同じロードカーベースでも、FIA GT3カーが4リットルから6リットルの巨大なエンジンを積むのに対して、カローラにはファミリーセダンに積まれていた3.5リットルのV6が、スバルには2リットルのターボエンジンが積まれている。これらのファミリーセダンのエンジンは、大きなリストリクターや大きなブースト圧を許されても、直ぐに大パワーを発生することは不可能だ。

 既に今年の段階でも、速いFIA GT3と速さを整えるため、GTAは、JAF-GTマシンに大きなリストリクターや軽い車重を与えている。しかし、いきなり大きなリストリクターを与えられても、ファミリーセダンのエンジンから500馬力を発生するには、大きな予算を投下して高い技術によって緻密な開発を行わなければならない。直ぐに大きなパワーは発生出来ないのだ。

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●速くなったGT300によって、GT500のガラパゴス化が促進される
 また、JAF-GTマシンを走らせるレーシングチームが大きな予算を捻出することが可能となって、GT300クラスにおいてFIA GT3カーとJAF-GTマシンが対等の闘いを繰り広げることが出来るようになっても、今度はGT500クラスとの関係が問題となる。
 現在GT300とGT500の間には約10秒のラップタイムの差が存在する。しかし、FIA GT3カーの多くは500馬力を超える大パワーを持っているし、それに加えてJAF-GTマシンが速くなると、ラップタイムはGT500マシンの方が速くても、ストレートスピードの差は大きく縮まることが予想される。その場合、GT500マシンがGT300マシンを抜きにくくなって、コース上が混乱する可能性がある。

 GT500マシンのエンジンパワーをアップすれば、容易にこの問題は解決出来そうだが、GT500に参加しているメーカーは、既に2012年のエンジンの開発は終了しているとして、エンジンパワーをアップすることを拒否した。それでは遅いGT500によってコース上が混乱してしまうため、現在エンジンパワーをアップして加速性能を向上させるのでなく、ブレーキング時にGT300を抜くことを目的として、GT500にカーボンブレーキを装着したり、大きなウイングや2009年に禁止されたカナードウイングの使用を認めることを検討している。

 エンジンパワーをアップしなくても、GT500の速さは向上するかもしれない。しかし、世界中の誰が見ても、GT500が、世界中のどのスポーツカーレースとも融合出来ない、ガラパゴス化への道を加速しただけのように見える。

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2011年SuperGTにおけるレギュレーション運用方法 Part.2  性能調整の方法

2011年SuperGTにおけるレギュレーション運用方法 Part.1  2011年のGT300はA,B,C,D,E,Fの6つのカテゴリーに分類

10月11日
SpecialEdition  2012年WECレギュレーション概要

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 6月のルマン24時間の際、ACOとFIAは2012年にWECを開催する方向で合意に達したことを公表した。
 残念ながら、現在でも正式にWEC開催についての発表は行われてないが、昨日ACOとFIAは、2012年のWECをはじめとするスポーツプロトタイプカーのレギュレーションの概要について公表した。
 現在FIAとACOの間で話し合われているレギュレーションは、2012年ルマン24時間レース、FIAワールドエンデュランスチャンピオンシップ(WEC)、LMS、ALMSで使われる予定だ。

 2012年のテクニカルレギュレーションは、長い間LMP1カーにおいて課題となっていたディーゼルエンジンとガソリンエンジンの間の性能を調整すること、2011年のルマンにおいて深刻なアクシデントが発生したことに対する安全性の向上、そして、現在でも曖昧なままであるハイブリッドカーのルールを明確にすることが大きな目的となっている。

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○テクニカルレギュレーション

1. ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの性能調整  ディーゼルエンジンの性能を7%引き下げる
 ACOは5月に行われたスパ1000km、そして6月に行われたルマン24時間の際、各車の実際の速さを把握するため、データロガーを装着している。もちろん、各メーカーの秘密が明らかとなってしまうため、スパでデータロガーの装着が決定しても、そのデータを開示するのか? メーカーの間で総ての合意は得られてなかった。
 もちろん、総てを合意しなかったメーカーとは、ガソリンエンジンを圧倒していたディーゼルエンジンのメーカー達だ。ACOでもFIAでもテクニカルワーキンググループのメンバーは、第三者はごく一部で、ほとんどは、そのカテゴリーに参加しているメーカーかコンストラクターだ。レギュレーションを変更する様なデータを開示したら、ライバル達に自分達のワークスカーの秘密が明らかとなってしまう。
 ACOによると、どのようにデータを活用したのか?公表してないが、6月のルマン24時間が終了した後、ACOとFIAのテクニカルレギュレーションチームは、ディーゼルエンジンとガソリンエンジンの性能差を特定した。

 その結果彼らは、ディーゼルエンジンの方がガソリンエンジンより7%優れていると判定した。
  現在2012年レギュレーションとして、ディーゼルエンジンの性能を7%引き下げるため、出力については、ディーゼルエンジンに小さなリストリクターと低いブースト圧を義務付ける。リストリクターについては、シングルターボの場合、現在の47.4mmから45.8mmへ、ツインターボの場合、現在の33.5mmから32.4mmへ縮小される。ブースト圧は3,000mmbarから2,800mmbarへ引き下げられる。
 燃費については、ディーゼルエンジンの燃料タンクを、現在の65リットルから60リットルまで縮小する。

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2. 安全性について  総てのLMPカーにシャークフィン装着、リアフェンダーにもスリット開口、GTEカーに後方確認カメラ設置
 今年ルマンに起きたアクシデントは、非常に衝撃的だった。直ぐFIAは安全性を喚起する声明を発表した。
 テクニカルルールではないが、直ぐに安全性に敏感な北アメリカのALMSは、ピットロードに出る総ての人間(メカニックだけでなくメディアも含む)に対して、従来着用を義務付けていた耐火服だけでなくヘルメットの装着を義務付けた。プチルマンの際ピットロードにおけるヘルメットについて話し合いが行われ、2012年はWECでも採用される見込みだ。
 

  テクニカルルールに話しを戻すと、既に2011年ACOは、高速でのスピンを防ぐためリアカウルに通称シャークフィンと呼ばれる垂直尾翼の装着を義務付けている。しかし、2011年の場合、2010年のルマンの後で作られた新車だけにシャークフィンの装着は義務付けられた。そのため、多くのLMPカーがシャークフィン無しで走っている。ACOとFIAは熟慮の末、2012年総てのLMP1カー、LMP2カー、そしてフォーミュラルマンに対してシャークフィンの装着を義務付けた。
 また、現在フロントホイールアーチの上にだけスリットを設けることが義務付けられているが、2012年はフロントホイールアーチだけでなく、リアホイールアーチの上にもスリットを設けることが義務付けられる。

 
 速過ぎるLMP1カーとGTEカーの間でアクシデントが頻発しているため、追い越す側のLMP1は変更されないが、それ以外のカテゴリーのマシンは、後方視界を確保することを目的として、バックミラーのサイズが拡大される。GTEカーについては、それに加えて、夜間、後方からライトを上向きとしたLMP1カーに備えて、バックミラーの角度を変更するシステムと後方にカメラの装着が義務付けられる。バックミラーについては、WEC以外のレースでも適用される可能性がある。

3. ハイブリッドカーについて  120km/h以上の速度でフロントホイールの駆動OK、フロントブレーキの安全ルール設定
 現在でもハイブリッドについてのルールは曖昧なままだ。2011年レギュレーションの場合前輪でも回生を認めている。つまり、前輪に電気モーターの設置が認められているが、前輪での駆動は許されず、駆動は後輪に限られた。この矛盾は4輪駆動を禁止するレギュレーションが存在するためだが、それではハイブリッドの有力なチャレンジャーは永遠に現れない可能性がある。そこで2012年、4WDのアドバンテージが薄れる、速度が120km/h以上の状態に限って、前輪を駆動することが許される。

 同時に、前輪に電気モーターを備える高性能ハイブリッドカーにとって、前輪のブレーキ性能の確保は大きな課題となっているが、新たにハイブリッドカーのブレーキに関する安全性確保を目的としたルールも設けられる。
 残念ながら、フロントブレーキの安全性についてのルールの具体的な内容は公表されなかった。もしかしたら、120km/h以上で前輪を駆動することが許されても、前輪に電気モーターを設置するアドバンテージが無いルールとなる可能性もある。

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○スポーティングレギュレーション  カテゴリーは従来通りLMPとGTEのみ、正式発表は早くても11月30日
 完全なスポーティングレギュレーションは、次回エンデュランスコミッションが開催される11月21日に決定するため、11月30日まで発表されない。そのため、昨日ACOが公表した内容は、スポーティングガイドライン2012 FIAワールドチャンピオンシップから抜粋したものだった。しかし、これまでWECの内容について、6月のルマンを除くと、正式な発表は行われてないため、貴重な内容であることから、条件付きながら、掲載することとした。

FIAワールドエンデュランスチャンピオンシップ
 6月に発表された様に、FIAワールドエンデュランスチャンピオンシップは、FIAがACOと協力して行い、ルマン24時間を含む最低6つのイベントから構成される。 ルマンの24時間レースを除くと、レースフォーマットは、6から12時間だ。
  このチャンピオンシップはLMPとLM-GTEの2つのカテゴリーによって行われる。例外として、2010年のポルシェ911GT3ハイブリッドの様な、革新的なテクノロジーを活用したクルマは、ポイント対象外で、出走が認められるかもしれない。

 2011年のILMC同様LMP1、LMP2、LM-GTE(Am)、LM-GTE(Pro)の4つのカテゴリーで争われるが、LMP1についてはドライバーとメーカーのチャンピオンシップが設けられ、FIAワールドエンデュランスチャンピオンのタイトルが与えられる。LM-GTE(ProとAmを含む)で勝ったメーカーに対してワールドカップが与えられる。LM P2、LM-GTE(Am)、LM-GTE(Pro)で勝ったチームとベストプライベートLMP1チームに対してはFIAエンデュランストロフィーが与えられる。
 ルマン24時間を除くイベントのポイントは下記の様に決定した。ルマンは、この2倍のポイントが与えられる。
 各々のカテゴリーのポールポジションのクルマのドライバーとクルーに対しては、さらにポイントが与えられる。
 2012年のWECのゼッケン1は、2011年のILMCのLMP1でメーカータイトルを獲得したメーカーに与えられる。

1st 25 points
2nd 18 points
3rd 15 points
4th 12 points
5th 10 points
6th 8 points
7th 6 points
8th 4 points
9th 2 points
10th 1 point
And 0.5 point (awarded to any car classified lower than10th in the general classification)

7月14日
SpecialEdition 2011年SuperGTにおけるレギュレーション運用方法  Part.2 
性能調整の方法

Photo:Sports-Car Racing

○性能調整が必要なGT300
 現在のSuperGTのGT500では、どのクルマをベースとしても、大きな性能差が出ないことを最大の目的とした、レギュレーションが設けられている。
 同程度の長さのホイールベース、同程度の前面投影面積となる様車高を1,100mmに規定したボディ、空力性能を整えるため、同程度の長さの前後オーバーハング、まったく同じディメンション(ボア×ストローク)のエンジン、前後の重量配分を同程度とするため、エンジンの搭載位置は限定され、同じリカルドのトランスミッションをリアアクスルと一体としたFRレイアウトのみが認められている。
 ここまで同じ様なクルマとするルールによって開発されることから、GT500は、GTカーと言うより、日本版NASCARだ。
 理論上性能差が生じるハズはなく、もちろん、実際に性能調整が必要となるような速さの差はない。もし、性能調整が必要となるなら、それは、そのマシンを開発しているコンストラクターやエンジンを開発しているメーカーの能力が足りないと判断すべきだろう。

 しかし、Part.1で述べた様に、まったく異なったルールに基づいて作られ、しかも技術レベルに大きな差があるコンストラクターが作ったマシンがたくさん走るGT300の場合、当然ながら各々のマシンの速さに大きな違いがあることから、何らかの性能調整が不可欠だ。
 元が4ドアセダンでも、JAF-GTルールに基づいて、完全にレーシングカーとして開発されたマシンは、レーシングカーとして素晴らしい速さを持っている。特に高度なシャシー性能と高い空力性能によって、素晴らしいコーナーリング性能を発揮する。GT300の名前の由来は、300馬力程度のパワーからきているが、たった300馬力でも、現在GT300クラスに参加するJAF-GTマシンは、かつてのGT1(GT500)マシンに匹敵する速さを持つ。

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 少し前までGT300におけるJAF-GTルールのGTレースカーは、FIAルールの場合FIA-GT2マシンを同じクラスとすることを想定していた。
 2009年までFIAとACOのGT2カーは基本的に同じクルマだった。ところが、FIAGTの混乱によって、2009年を最後として、FIAへ新規にGT2のホモロゲイションを申請するメーカーやコンストラクターが居なくなってしまったことから、最新のGT2マシンは、(2011年ACOがGT2からGTEに名前を変更した)ACO-GTEマシンしか存在しない。と言うより、現在世界中のGTカテゴリーの中心はACOのGTEだ。FIAルールの場合、最も新しいGT2マシンが、2年落ちの2009年バージョンであるだけでなく、FIAが管理するトップクラスのGT2のシリーズはもちろん、レースも存在しない。

  このような大人の事情は別として、SuperGTがJAF-GTの対抗馬として想定したFIA-GT2(ACO-GTEも基本的に同じ)は、ロードカーをベースとしたGTレースカーであるため、極端に速いコーナーリング性能や高度な空力性能を持っている訳ではない。しかし、FIA-GT2マシンは、JAF-GTが基本としていた1,150kgの車重(2009年まで)とした場合でも430馬力から460馬力の出力を持っている。現在のJAF-GTマシンと比べると100馬力以上パワフルであるため、SuperGTに参加するFIAGT2マシンは、非常に速いストレートスピードを特徴としている。

 約8年ほど前までFIAGTやACOのルマンシリーズのGT2カテゴリーがアマチュアチームにしか興味を持たれなかった時代、FIA-GT2マシンは、メーカーによってプライベートチームへデリバリーされた後、ほとんどの場合、新たに大きな改良が施されることはなかった。デリバリー直後、もちろん最新の状態のFIA-GT2マシンが、パワーが小さなJAF-GTマシンを圧倒しても、現在進行形で開発が行われているJAF-GTマシンの開発が進むと、再びJAF-GTマシンは、パワーが大きいFIA-GT2マシンを上回る速さを発揮した。

 FIA-GT2マシンは、大きく手を加えること自体禁止されているため、JAF-GTマシンの様に、現在進行形で開発を行うことが出来ない。しかし、ポルシェやフェラーリが、新しいFIA-GT2マシンを登場させれば、再び速いストレートスピードを活かしてFIA-GT2マシンがJAF-GTマシンより速く走る可能性もある。
 このシーソーゲームが繰り返されるのであれば、非常に興味深いGTレースを演出することが可能だ。
 このシーソーゲームを実現するには、毎年新しいFIA-GT2マシンが導入されることが条件となる。しかし、毎年新しいFIA-GT2マシンを買うには大きな資金が必要であるし、JAF-GTマシンを開発するコンストラクターも、常に都合良く、開発の成果を上げることは出来ない。優秀なエンジニアであっても、開発に失敗する場合だってあるだろう。第一開発するには、技術力だけでなく、それなりに資金も必要だ。
 この問題を解決する切り札として、SuperGTは、速さに差があると判断した場合、性能調整を行っている。
 様々なルールで作られたGTレースカーが走るGT300にとって、性能調整を行わなければ、まともなレースを行うことは不可能と言うべきだ。

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○コーナーで速いJAF-GT、ストレートで速いFIA-GT2
 先に述べた様に、8年前まで、FIA-GTやACOのルマンシリーズのGT2カテゴリーはアマチュアチームにしか関心を持たれなかった。と言うより、有力なGT2カーはポルシェ996GT3Rとその発展型の996GT3RSRだけだった。取りあえず996GT3RSRを買ってくれば、FIAGTやACOのルマンシリーズでも、トップランカーとなる可能性が存在した時代だった。つまり、FIA-GT2マシンの進歩は非常にスローテンポだった。
 それに対して、現在進行形でコンストラクターが地道な開発を行っていたJAF-GTマシンは、早いペースで開発が行われた。直ぐにFIA-GT2マシンは速さを失ったため、GTAはGT300クラスにおいて大きな性能調整を行う様になった。

 ちなみに、先にSuperGTの場合、FIA-GT2マシンの方がJAF-GTマシンより約100馬力大きいと述べたが、それは現在の話であって、10年程前SuperGT(当時の名前はJGTC)へ参加するFIA-GT2マシンとJAF-GTマシンのパワー差は約50馬力に設定されていた。その時代、買ってきたFIA-GT2マシンは、リストリクターを1段階小さなサイズと交換するか、50kgの重りを積まなければ、SuperGTへ参加することは出来なかった。
 その後、先に述べた様に、現在進行形で開発が行われるJAF-GTの速さが増す度、JAF-GTマシンの出力を削るか、FIA-GT2マシンにより大きな出力を与え続けたため、現在ではJAF-GTマシンとFIA-GT2マシンのパワー差は約100馬力にも開くこととなってしまった。
 ところが、この100馬力に達する大きなパワー差は、大変な問題を生み出すこととなった。

 パワーを削られたJAF-GTマシンを開発する際、基本的に空力性能とシャシー性能を高めることがポイントとなる。もちろんエンジン開発も忘れることは出来ないが、どんなにエンジンビルダーが努力しても、簡単に出力を向上させることは難しい。第一エンジン開発には大きな資金が必要となる。メーカーならともかく、プライベートチームが捻出可能なエンジン開発の資金は限られるため、基本的に空力性能とシャシー性能の向上に努力するだろう。
 空力性能とシャシー性能の向上によって速さが増加しても、エンジンパワーが小さければ、どんなに最終コーナーで速く走ってもストレートスピードは限られる。100馬力小さいJAF-GTマシンがFIA-GT2マシンと同じ最高速度を可能としても、それはストレートエンドであって、100馬力大きなFIA-GT2マシンは、はるか手前で同じ最高速度に達していることだろう。
 一般的にラップタイムは同等か、あるいは、場合によっては、JAF-GTマシンの方が速くても、JAF-GTマシンはストレートスピードが非常に遅くなってしまう。ストレートスピードが遅いJAF-GTマシンは、決勝レースでストレートスピードが速いFIA-GT2を抜くのは難しい。これでは、ラップタイムは同じでも、一緒にレースを行うことは難しい。

 1994年JGTCとしてSuperGTが誕生して時、最初の性能調整の指針は、速さの差ではなく、順位そのものだった。どんなにラップタイムに大きな差があったとしても、その速さが順位に結びつかないのであれば、性能調整は行われなかった。また、2つのクルマは、どんなに速さに差があっても、仮に1位と2位の順位でフィニッシュした場合、順位の差は1つだけで、1つだけ違う順位の差に応じた性能調整しか行われなかった。
 議論の対象となったため、その後、性能調整の指針に、速さの差を盛り込むことが決まった。その際速さの差の指針となったのは、ラップタイムの差だった。しかし、同じラップタイムであっても、FIA-GT2やFIA-GT3カーの様にストレートスピードが速いクルマもあれば、JAF-GTカーの様にコーナーリングスピードが速いクルマも存在する。そのため、ラップタイムの差が性能調整の指針と決まった後も、常に議論の対象となった。
 そこで今年SuperGTは、FIA-GT2やFIA-GT3カーとJAF-GTカーの間に存在する速さのの質の違いについても、調整することを決定した。

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○速さの差を判定する方法   データロガーの装着
 では、性能調整の理由である速さの差は、どのようにして測定するのだろうか?
 速いコーナーリングスピードを活かして、速いラップタイムを記録しても、多くの場合追い越しはストレートで行われることから、ストレートスピードが遅ければ、ラップタイムが速くても、ストレートスピードが速いクルマにストレートで抜かれてしまう。
 速いコーナーリングスピードを特徴とするJAF-GTマシンの致命的な弱点だった。もちろん、ラップタイムが速いにも関わらず、JAF-GTマシンのストレートスピードが遅いことは、SuperGTにとって大きな問題となっていた。
 ラップタイムそのものではなく、コースの何処で、どのくらいの速さで走っているのか? 把握して、そのデータを基にして性能調整を行うことが出来れば、巧妙なレースを演出することが可能だった。

 この長年の問題に対して、今年GTAは、効果的な解決策を見出した。
 ほとんどのレーシングカーには、走行中のデータを記録出来るデータロガーが装着されている。コース上のあらゆる場所での速度、加速度(プラスG)、減速度(マイナスG)、アクセル開度、横G等をはじめとして、エンジンの様々な状態等も記録することが出来る。今年GTAは、性能調整の指針としてデータロガーを使用することを思いついた。データーロガーと言っても、高度なシステムだけではなく、走行会でも使われている安価なものも販売されているため、今年GTAは、SuperGTへ参加する総てのGTレースカーに対して、GTAが指定するデータロガーの装着を義務付けて、各々のクルマが、コースのどこで、どれくらいの速さで走っているのか? 測定することとした。もちろん、従来通り、純粋なラップタイムの差や順位も性能調整の指針となっているが、今年GTAは、データロガーで記録された走行データを重要な指針として、性能調整を行うことを目論んだ。

 余談だが、主催者やプロモーターが参加するマシンに統一したデータロガーの装着を義務着けるのは、SuperGTが最初ではない。良く知られているのは、1999年に成立したALMSだ。しかし、ALMSがデータロガーの装着を義務着けた理由は性能調整の指針を見出すためではない。データロガーを装着することによって、先に記した様な、そのマシンの速さを判り易いグラフで表すことが可能だ。しかも、そのデータを無線で飛ばすことによって、リアルタイムで各々のマシンの状態を見ることが出来る。TVプログラムに最適な材料と判断されたため、ALMSではデータロガーの装着を義務着けた。
*注:ALMSのTV用データロガーは、現在全車に装着されている訳ではありません。現在は上位チームに限定して装着されています。

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○コーナーリングスピードを調整する方法    FIA-GT3が導入した車高を変更する方法
 では、データロガーによって、コースの各々の場所で、どれくらいの速さで走っているか?いわゆる速さの質を判定しても、その速さの質を調整できなければ、何の意味もない。速さの質は、どのようにして調整するのだろうか?

 ラップタイムの速さを調整する場合、基本となるのはエンジン出力と車重だ。その理由は、エンジン出力によってストレートスピードを調整して、車重によってコーナーリングの速さを調整出来ると考えられたからだった。しかし、重い車重は、コーナーリングスピードだけでなく、加速性能やブレーキング性能まで低下させてしまう。そのため、性能調整によって重い車重や小さなエンジン出力を課せられた場合、エンジン出力の低下には目をつぶって、基本的に小さな車重を選択して、車重の増加を避ける。
 もし、総てのチームが、同じカタチのクルマを走らせるのであれば、理論上エンジン出力と車重が同じ場合、同じストレートスピードと同じコーナーリング性能を得ることが可能となる。この考えは、現在のGT500のルールの理論的な裏付けともなっている。車重の増減以外でコーナーリングスピードを調整する方法を見出すことがポイントだった。

 ロードカーがベースであっても、比較的多くの部分を変更可能で、ホモロゲイションモデルの製作によって、どのクルマをベースとしても、極端に大きな性能差が生じないFIA-GT2やACO-GTEと違って、変更出来る部分が少なく、ロードカーの特徴が現れるFIA-GT3カーの場合、速さの調整は非常に困難だ。
 FIA-GT3カップ誕生時、マスタングやカマロの様なファミリーセダンのシャシーを使って作られたスポーティカーとフォードGTやアウディR8LMSの様な純粋なスーパースポーツカーが一緒に走るため、新たな性能調整の方法が求められた。
 エンジンパワーは大きくても、ファミリーセダンのシャシーを使って作られたマスタングやカマロは、素早くコーナーを走ることは出来ない。しかし、フォードGTやアウディR8LMSの様なスーパースポーツカーは、純粋なGTレースカーであるACO-GTEカーに匹敵するシャシー性能を持ち、素晴らしいコーナーリングスピードを持っている。車重やリストリクターを変更するだけでは、到底一緒にレースを行うことは不可能だった。

 そこでFIA-GT3は、フォードGTやアウディR8LMSの様なスーパースポーツカーのコーナーリング性能を引き下げるため、重い車重だけでなく、車高(ロードクリアランス)を変更する方法を採用している。車高を上げることによって重心が高くなると共に、床下で発生可能な空力性能が低下するため、スポーティカーとスーパースポーツカーが一緒にレースを行うことが出来る画期的な方法と考えられている。
 車高を変更するルールを導入した結果、FIA-GT3カーのホモロゲイションシートには、車高の項目が設けられている。
 車高を引き上げたことによって、当時最速のGT3カーだったフォードGTに対してアストンマーティンDBRS9やシボレーコルベットと言ったFRスポーツカーは同程度の速さで走ることが可能となった。残念ながら、それでもフォードマスタングやシボレーカマロはフォードGTと同じ速さで走ることは出来なかったため、その後マスタングやカマロと言ったファミリーセダンをベースとしたスポーティカーはGT4クラスに参戦するようになった。

 2011年SuperGTではデータロガーの装着を義務着けて、速さの質を測定すると共に、性能調整の方法の一つとして、新たに車高を変更すること方法を導入した。そのため、各車に応じた最低地上高(ロードクリアランス)を規定している。
 同じロードカーベースと言っても、ホモロゲイションを取得することによって、FIA-GT2カーやACO-GTEカーは、レースに適したサスペンションジオメトリーを実現しているため、ある一定の範囲内であれば、車高を変更しても、大きくサスペンション性能が低下することはないかもしれない。しかし、完全なロードカーベースのFIA-GT3カーは、車高を変更した場合、急激にサスペンション性能が低下してしまう。そこで車高を変更して性能調整を行う場合、基本的にJAF-GTカーの車高を変更することが想定されている。そのためGTAは、FIA-GT2カー、FIA-GT3カー、ACO-GTEカーの最低地上高について、各々のホモロゲイション値に規定している。

 車高を変更する場合、より高く、あるいは、より低くすることが可能であるのが条件となるため、車高を変更する可能性のあるJAF-GTカーには、シーズン開始時点で昨年と比べて10mm高めの最低地上高が規定された。もちろん、JAF-GTカーのコーナーリング性能を抑える意図もあっただろう。

 最初の2つのレースが終了した後、最初の性能調整が行われた。もちろん、最初の2つのレースでFIA-GT3カーやFIA-GT2カーが活躍したため、JAF-GTカーの性能の引き上げが目的となった。我々は、JAF-GTカーは素晴らしいコーナーリングスピードを持っていると判断していたため、JAF-GTカーの昨年より10mm高いロードクリアランスは変更しないで、より大きなリストリクターを与えられると予想していた。
 しかし、JAF-GTカーに与えられた性能向上処置は、より低い車高だった。
 データロガーによって計測されたデータが公表されていないため、詳しいことは判らない。しかし、GTAと言うより、チームの希望を考慮した性能向上処置ということであるため、今年義務着けた10mm高いロードクリアランスによって、JAF-GTカーには大きなデメリットが生じていたのだろうか?

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Part.3へ続く********************

2011年SuperGTにおけるレギュレーション運用方法 Part.3  JAF-GTがFIA GT3と付き合う方法

2011年SuperGTにおけるレギュレーション運用方法 Part.1  2011年のGT300はA,B,C,D,E,Fの6つのカテゴリーに分類

6月5日
SpecialEdition ACOの条件、FIAの目論み、ステファン・ラテルの希望?

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○ステファン・ラテルの希望
 6月3日FIAのワールドモータースポーツカウンシルに併せて、FIAとACOは、2012年にFIAワールドエンデュランスチャンピオンシップをスタートさせる方向で協力することを発表した。
 6月3日FIAとACOが発表したのは、この点についてのみだった。しかし、丁度シルバーストーンでFIAGT1チャンピオンシップが開催されていたため、ステファン・ラテルは、FIAワールドエンデュランスチャンピオンシップのGTカテゴリーについて、2011年のGT1とGT3、そして2009年のGT2を性能調整して、一緒に走らせることを公表した。
 ステファン・ラテルのアナウンスに、ACOは当然だがFIAも驚いたことだろう。

 なぜなら、現在GTカテゴリーの中心はACOのGTEであって、2009年を最後として、FIAに最新のGTE(2010年はGT2)カーのホモロゲイションを申請したメーカーは存在しない。つまり、ステファン・ラテルは公表した2009年のGT2カーは総てが中古車で、ほとんどの場合既に旧型となったGT2カーだ。
 今年ルマン24時間を含むILMCのGTEカテゴリーでは、アマチュアドライバーを対象としてGTE-Amクラスを設けているが、GTE-Amクラスに参加するマシンの条件は、1年以上前に生産されていることだ。つまり2010年までのGT2カーが対象となるが、現在ILMCのGTE-Amクラスに参加しているマシンの総てが2010年バージョンだ。つまり、ステファン・ラテルが語った2009年のGT2カーは、トップレベルのレースではお呼びではない。

 また、GT1カーについても、本当のGT1カーはニッサンGTR、フォードGT(Matech)、ランボルギーニムルシエラゴ(レイター)の3車しか存在しない。この3車の中で、フォードGTにはドラン製のGTEバージョンが存在する。そのため、もちMatech製のフォードGTによって、GTEクラスへ参加を望んだ場合、正規の手続きを踏んで開発されたドラン製フォードGTを走らせるロバートソンをはじめとするレーシングチームが黙ってはいない。
 しかし、Matech製のフォードGTについては、今年であっても、生産台数をクリアするだけで、GTEのホモロゲイションを獲得可能と言われていた。Matechが12台のフォードGTレースカーを生産するのであれば、容易にGTEのホモロゲイションを獲得することが出来るだろう。しかし、Matech自身GT1プロジェクトへの興味を失って、現在以前から行っていたGT3プロジェクトを精力的に行っているため、Matechが12台を生産するとは考えられない。

 GT3については、昨年ACO自身がGT3カーの取り扱いを検討している。何らかのカタチでGT3カーをILMCで走らせるため、話し合いが行われていたようだ。しかし、今年のルマン24時間とILMCのエントリーリストを見ると容易に判るように、現在のルマン24時間とILMCは充分多くのエントリーを集めている。さらにアマチュアドライバーが乗り組むGT3カーのエントリーを認めたら、コース上は大混乱となってしまう。ルマン24時間やILMCは、ニュルブルクリンク24時間と違って、GT3カーより1分も速いラップタイムで走るLMP1カーが主役のレースなのだ。
 GT3カーを走らせる余裕は無いと判断したACOは、2011年のルマン24時間とILMCにGT3のクラスを設けなかった。
 同様に2012年のFIAワールドエンデュランスチャンピオンシップでも、一般的にはGT3カーの出番はない。

 これらの理由から、金曜日にステファン・ラテルが語ったGTカーの統合は、誰にも理解出来ない内容だ。もちろんFIAワールドエンデュランスチャンピオンシップの成立に努力していたACOやFIAとは関係なく、公表されたようだ。
 先に述べたように、GT1カーとGT3カーについては、可能性が皆無ではないが、既にたくさんの最新のGTEカーが存在しているのだ。わざわざ性能調整を行うような、新たなルールを作る理由が存在するとは思えない。

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○FIAの目論み
 3日にFIAワールドエンデュランスチャンピオンシップの発表が行われた時、FIAはシーズン(年間)エントリーについてコメントしている。つまり、1989年のWSPCがそうだったように、シリーズの総てか、それに近い数のレースに参加することを、FIAは2012年のFIAワールドエンデュランスチャンピオンシップに参加する条件とすることを目論んでいる。
 FIAワールドエンデュランスチャンピオンシップにルマン24時間が含まれた場合、年に1度のルマン24時間に参戦するには、FIAワールドエンデュランスチャンピオンシップにシーズンを通して参加しなければならない。

 今年ILMCはルマンを含む7戦で構成されている。ACOは全戦参加を望んでいるが、絶対的な条件ではない。アストンマーティンを見ても判るように、何らかの理由があるのであれば、ペナルティを受けることなく欠場することも可能だ。しかし、GTEクラスのアマチュアドライバーを対象としたGTE-Amクラスのチームの多くが全戦参加を発表している。
 このことを見ても判るように、FIAだけでなくACOも、全戦参加は困難な条件ではないと考えているようだ。

 先に記したGT3カーの導入についてACOが積極的ではない理由の一つは、全戦参加を義務付けた場合、ニュルブルクリンクやスパをテリトリーとしているGT3カーは、一部のイベントにのみ参加するだけと考えているようだ。
 どのシリーズの主催者も同じ悩みを抱えているだろうが、一部のイベントにだけエントリーが集中するのであれば、魅力的なシリーズを構築することは出来ないのだ。その意味でもGT3カーが拒否される可能性は高い。

 FIAは1991年のSWCがそうだったように、全戦参加を義務付けると共に、FIAの管理によってシリーズを運営することをACOに提案している。F1GPはともかく世界選手権ラリーを想定しているのは間違いないだろう。
 しかし、ILMCはACOが苦労の末に実現したシリーズで、日本や中国での開催で苦労しても、FIAでは不可能だったスポーツカーシリーズだ。
 FIAはシリーズを確実に運営することを提案しているだけではない。スポーツカーレースはルマンの24時間レースを中心として回っているのだ。FIAにとって最大の標的は、当然ながらルマン24時間レースを手に入れることだ。

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○ACOの条件
 FIAの目論みは、ACOだけでなく、世界中のほとんどのスポーツカーレースファンはお見通しだ。そのため、FIAの提案に対してACOは相当抵抗しているらしい。3日の発表の際も、わざわざACOは「ルマン24時間レースは、ACOの独占的な資産である」との文言を追加している。
 現在FIAとACOは、FIAワールドエンデュランスチャンピオンシップの開催について協力することを決定しただけであって、現在2011年のILMCのカレンダーをベースとしてイベントを選定することくらいしか決定してない。
 ACOは、FIAの提案を拒否して、例えILMCを失っても、スポーツカーレースの中心である24時間レースが、2012年以降も無事開催されることを知っているため、FIAとACOの交渉が容易に進むとは考えられない。

 しかし、1998年に誕生したALMSによって、ACO自身、毎年確実にシリーズを開催することが重要であることを理解している。いくつかのメーカーによって、ACOは中国での開催を要求されているが、昨年やっとズーハイで開催にこぎ着けただけであって、それも盛大に開催された訳ではない。特に中国での開催について、ACOはFIAの力が必要であると考えているようだ。残念ながら、FIAが日本での開催についても力を発揮することを伺わせるようなニュースはない。
 
 どんなに全戦参加を条件としても、エントリーが集まらないイベントが出てくることが予想される。もし、どこか一つ欠席することが許されるのであれば、ヨーロッパを拠点とするプライベートチームの多くが、メーカーが重要視する中国へ行かないことは容易に予想出来る。その際にエントリーを確保する切り札として考えているのは、もちろんGT3だ。
 スパ24時間レースがFIAGTとして行われていた時代、充分なエントリーが集まらなかったため、当時正式な国際的なルールが存在しなかったGT3カーの参加を認めて、エントリーを確保している。
 ACOが要求する確実にシリーズを開催する条件に対して、既にALMSやスパでは当たり前のように行われているGT3カーの参加を認めることは想像出来る。しかし、選手権のポイント対象外のリブレ扱いとするのであれば、各イベントの主催者でも決定出来る。どのようにFIAが、関わるのか? 提案を受け入れるACOはFIAのお手並みを眺めていることだろう。

3日にステファン・ラテルが語った内容は、的外れと言うべきだが、9日までにFIAとACOが、どの程度まで話しをまとめることが出来るか?相当困難な道が待ち構えているだろう。もしかしたら、ステファン・ラテルが主導権を握って、3日に自身が語った的外れな提案を実行してしまうかもしれない。

5月5日
SpecialEdition 2011年SuperGTにおけるレギュレーション運用方法  Part.1 
2011年のGT300はA,B,C,D,E,Fの6つのカテゴリーに分類


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○世界中のあらゆるGTマシンが走るGT300
 SuperGTのため、JAF-GTレギュレーションが設けられている。しかし、現在日本の3つのメーカーが開発するマシンが参加しているGT500だけがJAF-GTルールのマシンによるレースであって、もう一つのGT300へは、JAF-GTレギュレーションに基づいて開発されたマシンだけでなく、2010年までのFIAGT2、FIAGT3、ACOGTE等、世界中の様々なルールに基づいて作られたGTレースカー、さらに世界中のどのレギュレーションにも合致しないクルマさえ参加している。
 これらの様々なGTレースカーを同じ速さで走らせることがGTAには求められている。

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○4つのJAF-GT   2012年のJAF-GTはパイプフレームとミッドシップ
 現在SuperGTのGT300では、参加するクルマをA,B,C,D,E,Fの6つのカテゴリーに分けている。A,B,C,DはJAF-GTを基本とするカテゴリーだ。しかし、完全に2011年のJAF-GTルールに従って開発されたマシンはカテゴリーAだけで、2011年の場合、2009年にJIMゲイナーが開発したフェラーリF430(No.10)が唯一登録されている。他のB,C,Dカテゴリーは、何らかの意味でJAF-GTレギュレーションを拡大解釈して作られたマシンだ。
 カテゴリーBは2012年のJAF-GTルールを先取りしたマシンで、元々開発された際、当時のJAF-GTルールを拡大解釈して作られたマシンも含まれる。つまり、GT300の状況を考慮した結果、2012年のJAF-GTレギュレーションは構想されている。
 2011年の場合、APRのカローラ、レクサスIS、R&Dスポーツのレガシーの3車がカテゴリーBに属する。

 現在、正式に2012年のJAF-GTレギュレーションは決定されていないため、参考程度と判断してもらいたいが、2012年のJAF-GTのGT300レギュレーションは、2009年のGT500同様、前面投影面積を同程度に整えるため、屋根を低くすることが許される一方、エンジンの搭載位置も自由となってミッドシップとすることも可能だ。しかし、カーボンファイバーコンポジットモノコックは厳禁で、フレームを作り直す場合、鉄パイプを組み合わせたスペースフレームのみが認められる見込みだ。
 2011年に登場する3車の中で、R&Dスポーツのレガシーはニューマシンだ。R&Dスポーツのレガシーは、昨年モデルまで、事実上カーボンファイバーコンポジットモノコックだったが、今年鉄パイプのスペースフレームで作り直されている。

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○カテゴリーDは2011年限り
 カテゴリーCは、ガライヤやヴィーマックの様な、生産を前提としたロードカーをベースとしたマシンだ。実際ヴィーマックはロードカーとレーシングカーを合わせて20台程度販売されている。しかし、FIAやACOのGTルールは、年間生産台数2,000台以下の小メーカーであっても、25台のロードカーと12台のレーシングカーを作らなければホモロゲイションを獲得することは出来ない。そのため、SuperGTでのみ、特別に参加を許されたマシンのカテゴリーと言えるだろう。

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 JAF-GTの最後のカテゴリーDは、JAF-GTのA,B,Cだけでなく、他の総てのカテゴリーに当てはまらないマシン達だ。生産GTと言える紫電やモスラー、既に登場から10年が経過したポルシェ996GT3RS(FIAGT2)、元々のGT3バージョンのままでは戦闘力が不足しているため、大幅に性能向上処置を与えられたランボルギーニ・ガイヤルドが該当する。
 昨年からSuperGTは、主にコストの問題から、GT300に参加するFIAGTルールのGTレースカーについて、従来のGT2ではなくGT3カーを基本とすることを決定している。そのため、SuperGTへ新たにFIA等海外のルールに従って作られたニューマシンを持ち込む場合、GT2ではなくGT3とすることを、1年前に連絡している。

 しかも、2010年FIAGTがGT1ワールドチャンピオンシップを強行した際、それまでFIAGTの中心だったGT2クラスへの配慮を忘れてしまった。新しいGT2カーの多くは、レースが存在しないFIAへホモロゲイション申請しないで、現在スポーツカーレースの中心となっているACOのホモロゲイションのみを取得した。2011年ACOは、それまでGT2と呼ばれていたカテゴリーを唯一のGTカテゴリーとして、新たにGTEと改名した。その結果2011年に開発されたGTEカーは、総てがACOにのみホモロゲイション申請して、事実上ACOのGTEと同じ内容であるFIAGT2のホモロゲイションは無視している。
 SuperGTはFIAGTルールをベースとして性能調整を行っているため、ルール上FIAGT2のホモロゲイションを持たないクルマの性能を調整することは出来ない。2011年JIMゲイナーが持ち込んだフェラーリ458GTCは、最新最強のGTEカーだが、FIAには、最新のGTEカーが走るレースが存在しないことから、フェラーリはACOのホモロゲイションしか取得していない。
 その結果SuperGTは、フェラーリ458GTCの性能調整を行うガイドラインを失ってしまった。
 このような事情から、期待のニューマシンであるJIMゲイナーのフェラーリ458GTCもカテゴリーDを指定された。
 フェラーリ458GTCについては、先に述べた様に、SuperGTがFIAルールのGTマシンを持ち込む場合、GT2ではなくGT3を選択こともあって、カテゴリーDへ指定されている。

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 カテゴリーDに指定されたマシンは、基本的に2011年末までしかSuperGTに参加することは出来ない。もし、2012年以降もSuperGTへの参加を望む場合、従来性能向上処置を与えられているポルシェ996GT3RSやランボルギーニ・ガイヤルドは、それらの性能向上処置を剥奪されて、元々の状態で参加しなければならない。逆に大きな性能調整を課せられている紫電やフェラーリ458GTCは、さらに大きな性能調整を課せられることを通告されている。

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○FIAGTルールの場合GT3を選択したSuperGT        高いGT3人気の理由はリセールバリュー
 カテゴリーEは2010年までのFIAGT2カーだ。先に述べたGT1ワールドチャンピオンシップを巡る問題から、実際は2010年新たにFIAGT2のホモロゲイションを申請したGT2カーは事実上存在しない。つまり、正確に言うとカテゴリーEは2009年までのFIAGT2カーだ。2011年の場合、2007年と2009年の2つのポルシェ997GT3RSR、2007年と2009年のフェラーリ430GTC、2009年のアストンマーティン・ヴァンテッジが該当する。

 これらの中で、もしかしたら、今後混乱する可能性があるのはフェラーリ430GTCだ。2009年までの430GTCは、車重1,145kg(1,125kgの時期有り)と幅12インチのタイヤを組み合わせていた。しかし、2010年バージョンの430GTCは、車重1,245kgと幅14インチのタイヤを組み合わせている。コンプリートカーの場合、2010年バージョンの430GTCはACOのホモロゲイションしか取得していないため、SuperGTでは458GTC同様カテゴリーDに指定されてしまう。
   現在ACOのILMCやルマン24時間、さらにLMSやALMSのGTE-Am(アマチュア)クラスは、1年落ちのGTE(旧GT2)カーしか走ることが出来ないが、現在参加しているマシンの総てが2010年バージョンだ。そのため、現在のところ、2010年バージョンの430GTCは、ヨーロッパと北アメリカでニーズがある。実際日本へは2010年バージョンの430GTCは1台も輸入されていない。しかし、2012年になると、2011年バージョンの458GTCがGTE-Amクラスでも走ることが可能となる。つまり、2010年バージョンの430GTCが市場に出回る可能性があるが、このような理由から、SuperGTへの導入は期待出来ない。

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 カテゴリーFは、FIAのGT3カーだ。先に述べた様に、主にコストの問題から、SuperGTは、GT300へ参加するFIAルールのGTカーを従来のGT2ではなくGT3に変更した。GT3カーはGT2カーの約半分の価格であるため、今年日本へも多数が上陸した。その後東日本大震災の影響によって参加計画を取り止めたチームも存在するが、ポルシェ997GT3R、シボレー・コルベットZ06、BMW Z4が登場した。今後フェラーリF430GT3やマクラーレンMP4-12Cの登場が見込まれ、人気の存在となっている。
 2011年スーパー耐久にもGT3カーのクラスが設けられた。GT3カーの高い人気の理由は、安い価格だけでなく、GT3カーのレースは世界中で行われているため、一旦買った後、他へ転売することが可能と言う、大きなリセールバリューを持っている。
 逆にJAF-GTルールに従って作られたGT300レースカーは、SuperGTでしか走ることが出来ないため、SuperGTへ参加するチームの間でしか売り買いを行うことが出来ない。ほとんどリセールバリューは期待出来ない。

Photo:Sports-Car Racing

Part.2へ続く********************

2011年SuperGTにおけるレギュレーション運用方法 Part.3  JAF-GTがFIA GT3と付き合う方法

2011年SuperGTにおけるレギュレーション運用方法 Part.2  性能調整の方法

3月2日
SpecialEdition プジョーがフロントからも回生する908HYBRID4発表 4月24日のルマンテストディで走行

Photo:Peugeot-Media

 2年半前プジョーは908HYハイブリッドカーを発表している。LMSシルバーストーンの際908HYのデモランを行って、電気モーターのみでのサイレント走行も披露している。
 908HYは初代908、つまり、5.5リットル100度V12ディゼルターボを積んだ第一世代の908をベースとして電気モーターを組み合わせたマシンで、電気モーターがフロントにも配置されるのか?それともザイテックの様に電気モーターはリアのみに存在して、トランスミッションと連結されているだけか?公表されなかった。

 当時のレギュレーション、と言うより、正式には当時ハイブリッドのレギュレーションは存在しなかったため、ACOの統一解釈と言うべきかもしれないが、当時フロントに電気モーターをレイアウトすることは許されてなかった。このルールを考慮してプジョーは名言を避けたようだが、その後プジョーが公表した908HYのイラストでも、電気モーターはリアのみに設置されていた。
 フロント車軸からの回生が大きな議論の対象となる理由は、回生するためには電気モーターを設置しなければならない。フロント車軸に電気モーターを設置した場合、回生するだけでなく、フロント車軸のモーターを駆動に使うコンストラクターが現れることを恐れているのだ。現在モータースポーツにおいて、4輪駆動は認められていない。フロント車軸に電気モーターを設置しても、4輪駆動とならない、新たなルールが必要であるからだ。

 その後明確なハイブリッドのルール作りが行われ、一旦は2011年からフロント車軸からの回生を認めること、そしてエネルギー貯蔵量を1MJとすることが発表された。 しかし、昨年4月にACOで行われたテクニカルミーティングの際、プジョーとアウディは、2011年レギュレーションの見直しを要求した。その結果ACOは、2011年ルールとして、フロント車軸からの回生は条件付きで認めるものの、エネルギー貯蔵量については半分の500KJとすることを決定した。
 ACOが決めた、フロント車軸にも電気モーターを設置してフロントから回生する条件は、電気の流れを計測するデータロガーを設置することだった。このデータロガーは、従来のルールに盛り込まれているマネージメントシステムとは別のものだ。フロント車軸に電気モーターを設置した場合、フロント車軸の電気モーターは回生のみを行って、駆動しないことをデータロガーによって証明させようとしている。

Photo:Peugeot-Media

 昨日プジョーはジュネーブモーターショーにおいて、908HYBRID4ハイブリッドカーを発表した。
 908HYBRID4は、1月に発表された第二世代の3.7リットルV8ディーゼルターボを積む908をベースとしてハイブリッドカーに仕立て上げたマシンだ。どこに電気モーターが存在するのか?プジョーは発表を避けたが、電気モーターによって駆動されるのはリアホイールのみであることを明確に主張している。
 電気モーターの出力はACOルール通り60KW(80馬力)、貯蔵容量もACOルール通り500KJだ。電気を貯蔵するのはポルシェのフライホイールではなく、パソコンと同じリチウムイオンバッテリーだ。

 昨日プジョーは、もう一つの興味深い発表を行っている。今年ACOは4月24日にサルテサーキットにおける唯一の公式テストディを開催するが、その際、実際にはレースで走らないクルマを走らせることも認めて、最大67台が走行可能と発表している。3週間前この発表が行われた時、我々は、違うボディを取り付けたマシンや、違うセッティングのエンジンを搭載したマシンが走るものと判断した。ところが、昨日プジョーは、908HYBRID4をルマンのテストディで走らせることを発表した。
 全開区間が長いサルテサーキットの場合、ブレーキング時に回生可能なエネルギーは少ないと考えられている。しかし、実際にハイブリッドカーが走ったのは1999年のパノスの例のみであるため、サルテサーキットにおける回生について、詳しい情報は誰も持っていない。そのため、2012年レギュレーションを作るため、プジョーは908HYBRID4をテストディで走らせると考えられている。

1月19日
SpecialEdition 最大10台!のGT3カーが日本へ上陸 彼らの目標はSuperGT? それともスーパー耐久?

Photo:Sports-Car Racing

●格下のGT3は、ハイテク満載
 昨年SuperGTはFIAのGT3カーの参加を受け入れた。SuperGTの場合、JAF-GTルールによって作られたクルマ以外でも、“特認”ルールによって、世界中の総てのクルマが参加することが可能だ。これまでもTransAmカーや事実上のプロトタイプカーまで様々なクルマが参加している。彼らが参加する際の条件は、“特認”される際、既存のJAF-GTマシンに合わせた性能調整を受け入れることだった。
 しかし、元々GT300カテゴリーはFIAやACOの旧GT2と相互乗り入れすることを想定していたため、格下のGT3カーが参加することによって、FIAやACOの旧GT2マシンで参加するチームは戸惑ったかもしれない。

 FIAやACOの旧GT2が基本的にレーシングカーとして作られたのに対して、FIAのGT3カテゴリーは、ロードカーをベースとしたレースとして構想されている。そのため、ロードカーでは当たり前でも、レースでは禁止されている様々なハイテク装備をそのまま使用することが可能だ。ABSやトラクションコントロールは当たり前、パドルシフトやフェラーリのようにセミオートマチックギアボックスを装備するクルマまで存在している。
 ほとんど唯一禁止されている項目は4輪駆動だけだ。そのためアウディやランボルギーニは、4輪駆動のR8やガイヤルドをわざわざ2輪駆動で作り直したスポーツカーを生産している。

Photo:AUDI AG

●1.8リットルのロータスと6リットルのアストンマーティンが一緒に競い合うアマチュアのレース
 ロードカーの場合、あらゆるクルマが一緒に走るのが当たり前であるから、4年前ロードカーをベースとした現在のGT3カテゴリーが構想された際、クラス分けを行わず、あらゆるクルマが一緒に走るレースとすることが前提となった。当時もっとも小さいクルマは1.8リットルの4気筒エンジンを積んだロータスエリーゼで、もっとも大きな6リットルV12を積むアストンマーティンDBRS9とは400馬力以上もパワーが小さかった。
 そこで様々なハンデキャップを設けることによって、同じ速さを実現しようと試みた。

 当時GTレースのトップカテゴリーはGT1で、その下にはポルシェとフェラーリが熾烈な闘いを繰り広げる、人気のGT2が存在した。プロフェッショナルなレーシングチームの興味はGT1とGT2であったことから、新制GT3カテゴリーはアマチュアドライバーを対象としたレースとして構想されている。
 1.8リットルのロータスと6リットルV12のアストンマーティンの速さを整えるだけでなく、大きくテクニックが違うアマチュアドライバーが同じ速さで走ることが可能なよう、ゴルフのようなドライバーのテクニックに応じたハンデキャップを設けている。

 クルマの速さを整えるため、ロードカーには存在しないリストリクターがGT3カーには取り付けられている。しかし、最初に設定されたリストリクターは、パワーを引き下げることが目的ではなく、速さをコントロールする際の指針に過ぎないため、ほとんどの場合、本来のパワーに影響を与えない異常に大きなサイズが設定されている。ポルシェの場合スロットルとほとんど同じ直径で、1,000馬力を許容する直径76mmのリストリクターが設定されていることでも、GT3のリストリクターの役目がわかるだろう。
 速すぎるのであれば、車重と共に巨大なリストリクターを少しずつ絞って、速さを整える仕組みだ。
 また、フォードGTやフェラーリの様にGTレースカーと大きく変わらないクルマが存在する一方、フォードマスタング等のスポーティカーも存在するため、速さを整える方法として、車高を変更する場合もある。

Photo:Mercedes-Benz

●GT3カーはSuperGTとスーパー耐久の両方シリーズに参加できる
 2011年スーパー耐久シリーズがGT3カーを対象としたSTXクラスを新設した。これによって、GT3カーはSuperGTと共にスーパー耐久へも参加が可能となった。具体的にはスーパー耐久でSTXクラスが設けられるのは日本国内の場合開幕から4レースだけで、期待のアジアシリーズの方は、どうやら今年中国での開催は不可能であるらしいため、日本国内の4つと韓国の1つのレースでシリーズは構成されるようだ。8月末にはシリーズは終了してしまうため、他のレースへの参加を望むチームは少なくないだろう。

 SuperGTの場合、8つのレギュラーシリーズと11月にJAF-GPが開催される。しかし、SuperGTとスーパー耐久は基本的にスケジュールがバッティングしてないため、理論上両方のシリーズに参加することは不可能ではない。もし、不具合があるとすると、6月12日ルマンで24時間レースが開催されている時、韓国でスーパー耐久のアジアシリーズが開催されていることだ。同じ12日、参加ドライバーがバッティングすると考えられるポルシェカレラカップの日本シリーズのレースが富士スピードウェイで開催されているだけでなく、翌週にはマレーシアのセパンでSuperGTが開催される。どれか1つは参加を諦めなければならない。

●SuperGTよりスーパー耐久バージョンのGT3の方が速い
 同じGT3カーでの参加が可能と言っても、SuperGTとスーパー耐久でまったく同じ内容のクルマで参加できる訳ではない。スーパー耐久の場合、FIAの性能調整に従うと発表しているため、ヨーロッパで走っているGT3カーは、何も手を加えることなく走ることが可能と考えられる。ところが、SuperGTの場合様々なハイテクを装備することから、参加する際、性能調整を受け入れることとなる。昨年登場したポルシェ997GT3Rの場合、直径53mmのリストリクターを取り付けることが参加の条件だった。逆にヨーロッパでは車重1,250kgであったのに対して、50kg軽い1,200kgの車重で走ることが許されている。
 リストリクターのサイズが直径76mmから53mmに縮小されると、大きくパワーが引き下げられると考える方も居るだろうが、先に述べた様に、元々GT3カーのリストリクターは、性能の指針であるため、本来のパワーを削がない巨大なサイズが設定されている。GTAが装着を義務つけた直径53mmが、理論上700馬力以上を許容することでも、極端に大きくパワーを引き下げることを意図したものではない。
 昨年11月富士スピードウェイで行われたJAF-GPの際、GT3カーの997GT3Rは、GT2カーの997GT3RSRよりも速い最高速度を記録しているため、パワーのアドバンテージは変わらないだろう。

 しかし、スーパー耐久に参加する際、FIAそのままの内容で走ることが可能であるため、同じGT3カーが走った場合、これまで下のカテゴリーと考えられてきたスーパー耐久で走るGT3カーの方が、上のカテゴリーと思われてきたSuperGTで走るGT3カーよりも間違いなく速く走ることだろう。

Photo:FIA GT3-DPPI

●10台のGT3カーは、どちらのシリーズへ参加するのか?
 当たり前の話だが、GT3カーの価格はGTE(旧GT2)カーの半分強に過ぎない。ポルシェカレラカップカーに幾らか上乗せすれば手に入れることが可能だ。この安さは大きなアドバンテージだ。そのため、たくさんのレーシングチームが購入を検討しているようだ。何とかの皮算用で勘定してみると、最低6台、多い場合10台以上のGT3カーが新たに日本へ上陸する。不景気の嵐が吹き荒れる日本のレース界では驚異的な話だ。
 これに匹敵する出来事は、昨年林みのるのJMIAが主導して、ほとんど死んだカテゴリーと考えられていたF4にカーボンファイバーモノコックマシンを登場させたことだろう。JMIAのカーボンファイバーモノコックF4は、昨年だけでも3
つのコンストラクターによって12台が販売されている。

 コックスは新たに4台の997GT3Rを販売したことを認めている。アウディスポーツはノバと代理店契約を結んで、早くもR8LMSの1号車を一ツ山レーシングへデリバリーした。アウディ自身が積極的であることから、2号車のデリバリー先が決まるのも遠い話ではないだろう。
 ちなみに、これまでVWやアウディのモータースポーツに関する窓口はコックスだった。そのため、アウディスポーツの代理権もコックスが手に入れるものと考えられていた。しかし、コックスは、同じカテゴリーで最大のシェアを誇るポルシェのモータースポーツの代理店であるため、アウディスポーツはノバと契約した。
 他にもフェラーリやアルピナBMWと交渉しているレーシングチームが存在している。残念ながら、フェラーリの場合、新しい458GT3の完成が遅れているため、シーズン開幕には間に合いそうではない。アルピナが開発したB6クーペは、元々軽いクルマではないため、Z4 GT3の開発が進むのであれば、そちらを導入する可能性もある。

 これらのGT3カーはSuperGTへもスーパー耐久へも参加が可能であるため、もし、どちらか一方のシリーズに集中して参加することとなると、シリーズの命運を左右する存在となる可能性を秘めている。特にスーパー耐久が、これらのGT3カーの勧誘に成功するなら、大きなアドバンテージを得ることとなるだろう。
 マシン自体は、多少手を加えるだけで、両方のシリーズに参加できるが、障害がない訳ではない。
 スーパー耐久の場合、プロドライバーは1人しか乗り組むことはできない。対するSuperGTの場合、シーズン中コースを占有したテストが制限されるため、SuperGTで走らせた同じGT3カーでスーパー耐久に参加した場合、GTAによってコースを占有したテストと見なされる可能性があり、何らかの制限が加えられるかもしれない。
 占有テストの件については、ドライバーを変更すれば可能との判断もあるため、現実的には、通常スーパー耐久に参加するGT3カーによって、ドライバーを変更して、シーズン後半のSuperGTに参加するプランだろう。
 成功をつかむのはどちらのシリーズだろうか?


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