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2014
2月4日
SpecialEdition NISSANのFF LMP1カーに成功の可能性はあるか?   エンジニアの目

Photo:NISSAN

 昨日発表されたNISSANのLMP1カーは、噂通りFFだった。確実な情報が限られることから、可児旭エンジニアと共に、NISSANのFF LMP1カーの成功の可能性を探ることとしました。日本のモータースポーツに関わる方々であれば、可児旭氏の名前を知らない方は居ないと思いますが、可児旭氏は、KYBにおいて、童夢やアウディのLMPカー用としてエレクトリックパワステを開発した人物です。そのエレクトリックパワステは、現在ほとんどのLMPカーに採用されてるだけでなく、統一シャシーとなる以前のJAF-GT500やJAF-GT300マシンの多くにも採用されました。可児旭氏は、KYB退社後、AIMを経て、エンジニアリング会社のARJ株式会社を設立して、現在LMPカーのサスペンション開発や電気自動車のサスペンションを開発しているエンジニアです。
 現在進行形のエンジニアであるため、FF LMP1カーの可能性を語るのに相応しい人物であると判断しました。

●FFのLMP1カー         前後の重量配分はF:R=70:30?
 NISSANは内部レイアウトが判るイラストを公開したため、コクピット前にエンジンを配置して、エンジン前にトランスミッションは置かれて、フロント車軸を駆動していることが判明しました。リア周りは、完全には判りませんが、NISSANが公開した写真と動画を見る限り、左右のホイールの間に車軸は存在しないようです。マーシャル・プルートが後方から撮影した写真を見ると、リアホイールの中心付近に車軸が存在しないことから、純粋にフロントのみを駆動するようです。

 もし、リアを駆動するのであれば、ホイール内にモーターを設置して、電気モーターによる駆動の可能性しかありませんが、ロードカーならともかく、バネ下重量が重くなるため、レーシングカーがホイール内モーターを採用する可能性はないでしょう。

 前後のタイヤは、フロントが幅310mm、直径710mm、ホイール径は、通常のLMP1カーより2インチ小さな16インチです。リアは幅200mm、直径710mm、ホイール径は、フロントと同じ16インチです。2014年以降のLMP1カーのタイヤは、最大直径28インチ(710mm)、最大幅14インチ(310mm)ですから、NISSANのリアタイヤは、ルールより110mmも狭いこととなります。

 FFと言う以前に、理論上、前後のタイヤの容量は、そのクルマの前後の重量配分と同じとすることによって、コーナーリングの際、ニュートラルな操縦性を実現することが可能となります。一般的な前後の重量配分が45:55程度のLMPカーの場合、多少フロントタイヤの容量を小さくすることによって、ニュートラルな操縦性が可能となります。

 非常に大ざっぱな見方となりますが、NISSANのLMP1カーの前後のタイヤ幅の差から推測すると、前後の重量配分は70:30程度の超フロントヘビーの可能性があります。イラストと写真によって、ラジエターとインタークーラーは、ホイールベース内ではなく、フロント車軸の外側のオーバーハングに置かれていますから、この点でもフロントヘピーであることが予想出来ます。

 リアに電気モーターが設置されてないのであれば、エンジンとリカバリーエネルギーの両方のパワーをフロントで駆動することとなります。この大パワーをフロントのみで駆動するのであれば、フロントヘビーの重量配分は避けられないのかもしれません。

Illustration:NISSAN

●エネルギーリカバリーシステムはKERSのみ?       燃費が良好でも、勝ためには速さが必要
 大方の予想では、エンジンは1.6リットル〜2リットル程度のコンパクトなV4かV6ターボエンジンでしたが、発表されたGT-R LM NISMOは、比較的大きな3リットルの60度V6ツインターボエンジンを組み合わせました。
 同時にNISSNは運動エネルギーリカバリーシステム(KERS)を備えることを公表しました。リアタイヤに車軸が見あたらないため、ホイール内モーターでない限り、フロント車軸にのみ、電気モーターを備えて、回生と駆動を行うものと予想出来ます。

 2014年以降の現在のLMP1のレギュレーションは、燃料タンクとエンジンの間に燃料流量計を設置することが義務つけています。現在のLMP1カーは、この燃料流量計によって、2013年と比べて30%程度良好な燃費であることが求められています。燃料流量計によって、使用出来る燃料の量を制限することによって、発生可能なエンジン出力を制限しています。

 NISSANは、比較的大きなターボエンジンを搭載したことによって、同じ出力を発生する場合でも、低いブースト圧でも可能で、あるいは、フリクションが少ない低い回転数での運転が可能となるため、良好な燃費が可能となります。高ブースト+超低回転の組み合わせの可能性もあるでしょう。ルールより100mmも幅の狭いリアタイヤを使うことによって、路面とタイヤの間の転がり抵抗が小さいことも、燃費の面では有利でしょう。

 2014年以降のLMP1カーは、組み合わせるエネルギーリカバリシステムについて、1周毎取り出せるエネルギー量を、2MJ、4MJ、6MJ、8MJの4段階から選択することが出来ます。リカバリーされたエネルギーの放出量が大きいほど、エンジンと燃料タンクの間に設置される燃料流量計は、小さな値が義務つけられます。2014年の場合、トヨタとポルシェが6MJ、アウディが2MJを選択しました。しかし、昨日NISSANは、エネルギー放出量を明らかとしませんでした。
 もちろん、リカバリーされたエネルギーの放出量が大きい程、燃費は良好となります。

 NISSANは、フライブリッドと契約したと噂されています。フライブリッドのエネルギーリカバリーシステムは、トランスミッションに直接フライホイールを連結して、回生エネルギーを蓄えます。例えトランスミッションで減速しなくても、エンジンの回転数は数千回転に過ぎませんが、フライホイールの回転数は4万回転ですから、その間にCVT等を入れて、回転数の差を是正するシステムです。Sports-Car Racing Vol.20で紹介した様に、3年前ルマンにも登場しました。

 フライブリッドシステムは非常に効率が高い一方、エンジンの直ぐ側にシステムを備えることが条件となるため、もし、フライブリッドシステムを使うのであれば、エンジン前方にレイアウトしなければなりません。よりフロントヘビーとなるでしょう。

 また、イラストと写真を見ると、2つのターボチャージヤーには何も連結されていません。そのため、F1GPマシンやポルシェ919の様な、排気熱リカバリーシステムは使われていないようです。エネルギーリカバリーシステムが、フロント車軸に設置されたKERSのみである場合、リカバリー量は、それほど大きくありません。しかも、駆動に使用する電気モーターもフロント車軸の1つだけとなるため、1周毎取り出すエネルギー量も小さいでしょう。2014年のアウディの様に2MJ程度に過ぎないかもしれません。

 リカバリーエネルギーの放出量が判らないため、エネルギー放出量とエンジン出力が判りませんが、NISSANは良好な燃費であることを公表しています。簡単にルマンにおける燃費と速さの関係を計算してみましょう、仮に30%燃費が優れて、ピットインの回数を減らすことが可能でも、ライバルと比べて、5秒以上遅いラップタイムであれば、勝つことは出来ません。

●最大のアドバンテージは、高い空力性能
 早い段階から、ミュルサンヌコーナーのマイク・フラーは、FF LMP1カーの可能性を主張していました。その理由は、フロントを駆動することによって、リアタイヤを小さく出来ることから、リア周りから空力に邪魔なアイテムを排除することが可能で、リアウイングをはじめとする空力デバイスの性能を改善出来ることでした。しかも、マーシャル・プルートが撮影した写真を見ると、1992年のイーグル・トヨタMKVの様に、ボディ内側に大きな空洞が設けられ、ノーズから取り入れられた空気がリアエンドまで一気に導入されています。クルマの中で最も空気圧が高い部分はノーズ部分ですから、ノーズから取り入れた空気を直接リアまで導入出来るのであれば、リアウイングだけでなく、床下のディフューザーの効果を高めることも可能となります。

 未確認情報ですが、NISSANのFF LMP1カーは、シャーロットに設立されたウインドシアの1/1風洞で開発されたと噂されています。ウインドシアの1/1風洞は、F1GPチームの風洞より大きく、測定値に狂いがないと言われています。この噂が事実であれば、今後NISSANのFF LMP1カーは、どんどん空力性能を改善することが出来ると考えられます。
 ちなみに、ウインドシアの1/1風洞は、イーグル・トヨタMKVを開発したAARが大きく関わっているようです。実際にデルタウイングを開発したのもAARです。ここら辺から、NISSANのFF LMP1カーを開発したのはAARと噂されています。

Illustration:NISSAN

●最大のウイークポイントは小さなタイヤ!
 エンジンによる駆動とリカバリーされたエネルギーの駆動を、共にフロントタイヤだけで行うと予想されるため、フロントタイヤの仕事量が非常に大きくなってしまいます。通常より2インチも直径小さい16インチのホイールを使うことによって、タイヤのサイドウォールが変形し易く、しかも、タイヤ内の空気量が増えることから、前後方向のトラクションの面では有利です。空気量が大きいことから、タイヤ温度が変化し難く、300km/hを超える高速で走るユノディエールにおけるタイヤの耐久性の面でも有利です。しかし、ホイール径が小さいと、サイドウォールが変形して、横方向の力は低下してしまいます。

 また、通常ホイールの内側にブレーキを設置するため、通常と同じ様に、ホイールの内側にブレーキを設置するのであれば、小さな直径のブレーキしか設置出来ません。LMP1の場合、ブレーキの直径は最大15インチまで許されていますが、16インチ径のホイールの内側に15インチ径のブレーキは設置出来ません。車重はライバルと変わりませんから、大きなマイナスです。

 これまでSports-Car Racingで何度も掲載していますが、LMPカーのタイヤのルールは、フロントもリアも同じです。LMP1の場合幅14インチ、直径28インチです。この数値はホイールに組んだ状態で計測したものですから、一般的にタイヤの幅は310mm、直径710mmとなります。クルマと路面との接点はタイヤだけです。どんなに空力性能が優れていても、小さなタイヤを履くのであれば、エンジン出力を活かすことが難しいだけでなく、コーナーリングの能力も低くなってしまいます。

 前後に同じ大きなサイズのタイヤを履くと同時に、前後の重量配分を同程度とすることが出来るのであれば、1つのタイヤが負担する重量が減るため、理論上より大きなシャシー性能を得ることが可能となります。そのため、近年のLMPカーは、フロントに大きなタイヤを履いても、良好な操縦性を発揮出来る様、どんどんフロント寄りの重量配分となっています。この傾向はLMPカーだけでなく、GTカーにも及んでいます。

 つまり、ニッサンのFF LMP1カーの様に、リアに100mmも幅の狭いタイヤを履いた場合、レギュレーションの面から考えても、速さを発揮することは出来ません。重いフロントの重量を支えるだけでなく、エンジンとリカバリーエネルギーの両方の駆動、そしてステアするための横方向のパワーを受け持つフロントタイヤの負担は非常に過酷です。逆に、極端に幅の狭いリアタイヤは、能力が低いだけでなく、実戦においては、暖めるのが難しいことが予想出来ます。

 仮にNISSANのFF LMP1カーが、素晴らしいパワー、そして先に記した様に、1/1風洞で開発した素晴らしい空力性能を持っていたとしても、ルマンのサルテサーキットには、大きなダウンフォースが威力を発揮する中速以上のコーナーは、メゾンブランシェを含むポルシェカーブ、ダンロップブリッジ先のチャペルコーナーくらいしかなく、ラップタイムに影響を与える多くのコーナーは、ダウンフォースだけでなく、良好なシャシーバランスが求められる低中速コーナーです。

Photo:NISSAN

●可能性は、ユノディエールで極端に速い最高速度を発揮した場合
 しかし、NISSANのFF LMP1カーが、全く可能性のないゲテモノとは言い切れないようです。
 先に燃費と速さのシミュレーションを示しましたが、このシミュレーションは、単純に速さと燃費の関係だけを想定したものです。速いラップタイムを可能とする方法は考慮していません。
 FFによって低中速コーナーで速さを発揮出来なくても、もし、速いストレートスピードを発揮出来るのであれば、ルマンのサルテサーキットには、ユノディエールに3つ、ミュルサンヌからインデイアナポリス、アルナージュからポルシェカーブの間に計5つのロングストレートが存在します。3リットルV6ターボエンジンが大きなパワーを発揮するのであれば、小さなリアタイヤによる小さな路面抵抗、優れた空力性能によって、極端に速い最高速度を発揮する可能性があるかもしれません。

 現在のLMP1カーの最高速度は、350km/h程度がボーダーラインですが、もし、NISSANのFF LMP1カーが、コンスタントに380km/hを超える最高速度を発揮する様であれば、少なくともルマンで速さを発揮することが出来るかもしれません。

 しかし、その場合でも、小さなタイヤと、たぶん小さいと推測されるブレーキがウィークポイントであるのは変わりません。

 また、2006年にアウディがディーゼルエンジンをルマンに持ち込んだ際、アウディは600馬力と主張しました。既に何度もSorts-Car Racingで掲載した様に、その頃のディーゼルエンジンに与えられたルールは理論上850馬力以上が可能でした。実際2007年にアウディは800馬力以上を可能としたと考えられています。当時プライベートチームが使っていたガソリンエンジンの出力は、せいぜい640馬力ですから、ディーゼルエンジンは圧倒的なアドバンテージを持っていました。

 このような、ディーゼルエンジンを優遇するルールをACOが作った理由は、当時ヨーロッパで普及していたディーゼルエンジンをモータースポーツへ登場させるためです。その結果、ディーゼルエンジンを登場させたアウディが、勝利を獲得しました。
 アウディの場合、2000年以来ルマンの王者に君臨して、ルマンを支え続けていた功績も考慮されているでしょう。

 現在ほとんどのロードカーが採用しているFFによって、ルマンに勝つことが出来るのであれば、ディーゼルエンジンと同様の社会的な影響を与えることも可能となるでしょう。しかし、ACOやFIAは、トヨタやポルシェが、高い効率を目指して、真剣に取り組んでいる状況で、FFを理由として、有利なルールを与えるのは難しいと思います。

 しかし、何年か、NISSANがFF LMP1カーでルマンに参加して、トヨタやポルシェに負け続けた後、ディーゼルエンジンを優遇した時と同じ様に、FIAやACOは、FFを優遇するルールを設けるかもしれません。
 例えば、タイヤのルールを変更して、現在の様な、前後とも最大幅14インチ、最大直径28インチと決めるのでなく、前後のタイヤの最大幅の合計を28インチ、最大直径の合計を56インチとするのであれば、NISSANは、フロントに幅17インチ、直径30インチの巨大なタイヤを履き、リアに幅11インチ、直径26インチの小さなタイヤを履くことが可能となります。
 ついでに車重を50kg軽減するのであれば、FF LMP1カーが、ルマンで勝つことも不可能ではないでしょう。

11月19日
SpecialEdition GTAとSROがGT3カーのBOP決定について契約

Photo:Sports-Car Racing


 現在、世界中のGTレースの多くは、GT3カーによって行われている。日本のSuperGTも例外ではなく、GT300クラスの参加車の80%以上はGT3カーだ。つまり、GT500を含むSuperGTの総ての参加車の半分以上はGT3カーによって占められている。
 つまり、GT3カーの性能指針に手違いがあると、レースシリーズそのものが大変なこととなってしまう。

 GT3カーの性能は、多くのクルマに門戸を広げる理由から、同じ車重と同じ排気量のエンジンには同じ大きさのリストリクターを組み合わせる、と言った画一的なルールでなく、手っ取り早く、実際に走らせることによって性能を決定していた。
 FIAGTによって管理されていた頃、シーズン開幕前、複数の信頼すべきプロフェッショナルドライバーが、同じサーキットで走らせることによって、エンジン出力、車重、シャシー性能を変更することによって決定していた。非常に曖昧だった。

 1990年代に非公式に誕生したGT3カーを、2005年取り上げて、正式にルールを設けてGTレースを実施したのはステファン・ラテル・オーガニゼイション(SRO)だ。当時SROはFIAGTのオーガナイザーで、FIAGT3シリーズとしてヨーロッパ中に展開した。その後ADAC等ヨーロッパ中でGT3カーのGTレースシリーズは行われるようになったが、FIAGTやFIAGT3のオーガナイザーであるSRO自身も、ブランパンのスポンサーを得てブランパンGTシリーズを作り上げた。FIAGT3と同じGT3カーで行われるにも関わらず、SROがブランパンシリーズを作り上げたには大きな理由があった。

Photo:Sports-Car Racing

 元々非常に曖昧な方法によって性能を決定するGT3カーが誕生した時、「参加出来るのはジェントルマンドライバーのみ」と言う条件を設けて実現にこぎ着けている。ジェントルマンの意味は、一言で表すとアマチュアと言うことだ。ゴルフを参考にして、参加するジェントルマンドライバーはハンデが設けられていた。この頃GT3カーは、裕福なミリオネラの遊びに過ぎなかった。
 様々なクルマは登場したこともあって、GT3カーは大きな人気を集めた。そこで遊びとして行われるGT3と一線を画して、プロフェッショナルドライバーも参加出来るGT3レースシリーズとして、SRO自身がブランパンシリーズを作り上げた。

 速さを決定する方法が非常に曖昧であったことから、プロフェッショナルドライバーが走らせるGTレースが誕生する様になると、性能指針(BOP)を巡って、様々な問題が発生する様になった。そこで独自に性能指針(BOP)を設定するGTレースシリーズが現れるようになった。その中で最も信頼されているシリーズが、SROのブランパンシリーズだ。
 現在のブランパンシリーズのBOP決定方法は、FIAGT時代のものを一歩進めたもので、同じサーキットでプロフェッショナルドライバーが走らせるだけでなく、クレルモンフェランのミシュランのテストコースにGT3カーを持ち込んで、Gセンサーを取り付けて走らせることによって、可能な限り、曖昧な部分を解消する努力を行っている。さらに、2014年から、サーキットを、高速サーキット、テニクカルサーキット、ストップ&ゴーのサーキットの3つに分けて、各々に応じたBOPまで設定している。

 しかし、ブランパンやADACは、総てのクルマが同じタイヤを履いて走っているため、速さを特定し易い。それに対して、日本を中心として行われているSuperGTは、世界でも珍しい、4つのタイヤメーカーがしのぎを削るGTレースシリーズだ。当然ながら、総てのクルマが同じタイヤを使うワンメークタイヤと比べると、大きくタイヤのグリップも高い。そのため、従来もヨーロッパでは適正だったBOPが、グリップの高いSuperGTのタイヤを使って走ると、大きな差が生じることが少なくなかった。

Photo:Sports-Car Racing

 そこで今年からGTAは、FIAGTと比べると、多少、実際の状況を反映しているブランパンシリーズのBOPを、GT300のGT3カーに設定してシリーズを運営している。その結果、昨年までと比べると、極端な問題は無くなったが、問題が皆無な訳ではなかった。
 2014年の実績を踏まえGTAは、BOP設定についてSROと話し合った。その結果、SROに委託して、4つのタイヤメーカーが参入しているSuperGTでの使用を考慮したGT3カーのBOPを作ることとなった。

 具体的には、3月始めポールリカールにおいてBOPテストを行い、基本となるブランパンシリーズのBOPを決定する。たぶん、それ以前のテストや2014年の実績を加味して3種類のサーキットに応じたBOPが同時に設定されるだろう。その後3月末、日本で行われるSuperGTのテストにおいて性能を特定して、SuperGTで使われるBOPが決定される。
 つまり、ブランパンシリーズとSuperGTは基本は同じでも、違うBOPを使う可能性もあるようだ。

 ブランパンのためSROがポールリカールやクレルモンフェランで行っているBOPテストは、主にGT3カーを作るメーカーが拠出する資金によって行われている。残念ながら、日本の場合、総てのGT3カーのメーカーが統括する部署(代理店)を設けている訳でないため、少なくとも2015年については、GTAがSROに対して、BOPを決定する資金を支払う。

Photo:Sports-Car Racing

9月3日
SpecialEdition GT300マザーシャシー構想 2015年は4台 本命はトヨタ・オーリス?

Photo:Sports-Car Racing

 3年前林みのるは、「マザーシャシー」と名付けた統一シャシー構想を公表した。現在ではDTMやGT500をイメージする方も居るだろうが、当時マザーシャシー構想は、NASCARのカーボンファイバーコンポジットモノコック版と考えられた。簡単にマザーシャシー構想を説明すると、統一したフレーム(カーボンファイバーコンポジットモノコック)+サスペンション++ブレーキ+エンジン+ミッション+αのシャシーを開発して、それに、各々のレーシングチームが好むボディを組み合わせるプランだった。F4(4年前の)やF20同様、林みのるらしい、着せ替え人形構想だ。

 しかし、統一したエンジンがニッサンのエンジンであれば、トヨタのボディにニッサンのエンジンの組み合わせとなるため、GTレースの特徴である、各々のクルマのアイデンティティが大きく失われてしまう。現在のGTレースの最大の支援者である、裕福なスポーツカーファンの興味を失わせてしまうことから、これまで、いわゆるレース関係者以外のGTレースファンの興味を惹かなかった。と言うより、マザーシャシー構想は、GTレースを崩壊させるプランと判断されていた。

Photo:Sports-Car Racing

 しかし、既製の自動車メーカーのクルマを販売しているディーラーが、自分達が販売しているクルマによってGTレースでの活躍を望んでも、そのクルマがレースに適しているとは限らない。しかも、開発するには、優秀な技術力が求められるし、もし、外部の専門業者(コンストラクター)に委託して開発するのであれば、大きな開発費用が求められる。この様なディラーチーム等にとって、既に出来上がっているシャシー、サスペンション、エンジン、ミッション等が存在するのであれば、ボディだけを用意すれば、着せ替え人形、あるいはミニ四駆の様に、簡単にGTレースカーが完成する。
 GTレースファンの興味を惹かなくても、マザーシャシー構想は、この様な会社が歓迎するプランと判断されていた。

  しかし、クルマのアイデンティティを強く残すだけでなく、高性能かつ安価(2014年の場合、約4,000万円)なFIA GT3カーが存在するため、クルマのアイデンティティを大きく阻害するマザーシャシー構想は、GTレースファンの興味を惹かなかった。
 先に述べた様に、プライベートチームにとって最大の支援者は、裕福なスポーツカーファンであるため、ほとんどのレーシングチームは、消極的に「GT3カーより、安いのであれば、検討しよう」との意見が多かった。

Photo:Sports-Car Racing

 このマザーシャシー構想は、童夢(+JMIA)からGTAに売り込まれた。JAF-GTルールに基づいてGT300マシンを開発するレーイングチームが少なかったこともあって、GTAは童夢のプランに興味を示した。安くて速い、しかも各々のクルマのアイデンティティを強く残したGT3カーが存在するため、GTAにとって、安価であることが大切だった。残念ながら、GTAの予想と違って、マザーシャシーは、それほど(?)安価ではなかった。

 1年ほど前GTAは、「1,000万円以上は払わない」と発言して、マザーシャシー推進派とレーシングチームの両方を驚かせた。
  もし、エンジンとボディ無しであっても、それ以外の部分が1,000万円で手に入るのであれば、大歓迎されただろう。しかし、実際にマザーシャシーに付けられて価格は、統一エンジンに認定されたニッサンのLMP2エンジン+カーボンファイバーコンポジットモノコック+サスペンション+ヒューランド製ミッション+αだけで約4,500万円だった。ボディを含まないため、ボディを含んで、クルマとして完成した価格は約6,000万円と判断されている。
 少なくとも、2014年のGT3カーと比べると、1,500万円も高い。しかも、クルマのアイデンティティは希薄だった。
 ちなみに、童夢はGTAに対して、開発費として5,000万円を請求している。しかし、GT300のエントリーの90%がFIA GT3カーであることを考えると、せいぜい数台のため、実際にGTAが5,000万円も払ったとは考え難いが?

Photo:Sports-Car Racing

 それでもGTAは、マザーシャシー構想を強行した。マザーシャシーのポイントは、同じシャシーを使って、着せ替え人形の様に、様々なボディを載せ替えることであるため、GTAは、各々のレーシングチームが好む様な、様々なボディの製作を望んだ。しかし、どこかに国のパクリクルマではないから、各々のクルマのカタチと名前を使用する権利を、各々のメーカーから許可を受けなければならない。しかし、GTRのGT3カーを開発して販売しているニッサンは、GTR、そしてZの使用権を拒否した。トヨタもレクサスRCのGT3カーを開発していたため、トヨタもレクサスRCの使用権を拒否した。ホンダも既にCRZのJAF-GTカーを開発して走らせていたため、CRZ、そして、誰が要望したのか?判らないが、フィットの使用権も拒否した。
 つまり、既にGTAや童夢意図したクルマのGTレースカーは存在していた。

 GTAと童夢は、トヨタ86のカタチのボディをマザーシャシーに組み合わせる計画をスタートした。もちろん、この段階でトヨタは、トヨタ86の使用権を承諾した訳ではなかった。トヨタの対応が曖昧であったことから、製作を強行しただけだった。

Photo:Sports-Car Racing

 先週鈴鹿でトヨタ86のボディを組み合わせたマザーシャシーが発表された。ブレーキやミッション等のパーツが間に合わないため、走る姿を見ることは出来なかったが、トヨタファンに拒否されないよう、ニッサンのLMP2エンジンはGTAエンジンと名付けられて公開された。その姿を見たトヨタ86の責任者は「知的所有権を与えないものの、妨害はしない」と発言して、取り敢えず、トヨタ86のボディを取り付けたマザーシャシーはスタートすることとなった。

 今後トヨタ86マザーシャシーカーは、9月11日に岡山でテストを行って、そのままタイのブリナムへ送られる。そして、SuperGT第7戦へタイトヨタのサポートによってエントリーされる。ドライバーは土屋武士、タイヤはヨコハマだ。しかも、その後タイで行われる2つのレースへも参加することとなるようだ。

Photo:Sports-Car Racing

 ところで、マザーシャシーの販売状況は、どうなのだろうか? GTAによると、今年中に4台の契約を目指しているようだ。その内1台は、ムーンクラフトが作るロータスだ。このクルマはミッドシップとなるため、マザーシャシーのモノコック、サスペンション、エンジン(?)と使って、実際には、相当違うクルマとなりそうだ。残りの3台については、現在のところ、製作は行われてない。しかし、1台は、現在GTRを走らせているレーシングチームが購入すると考えられている。たぶん、このチームが購入するクルマが、トヨタ86のボディを取り付けた最初のカスタマーカーとなるだろう。
 残念ながら、LMP2エンジンは為替レートの変動に合わせて、2ヶ月毎価格が改訂されている。円安によって、GTAが発表してる価格は、2年も前のものとなってしまった。ヒューランド製ミッションも同じ様に大きく値段が上がっている。そのため、この4台だけが、1年前に公表された価格で販売されるようだ。もし、今後もマザーシャシー構想が崩壊せず、追加生産されたとしても、来年以降作られるマザーシャシーカーは、大きく値上げされることが予想されている。

 曖昧ながらも、トヨタ86のボディと名前の使用が可能となったが、どうやら、最も好意的な反応を示しているタイトヨタは、86ではなく、オーリスのボディを取り付けたマザーシャシーカーを要求しているようだ。


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