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2015
11月2日
●ブランパンGTシリーズアジア開催

Photo:Sports-Car Racing

 既に掲載した様に、昨年末GTアジアからポール・ヤオのホンコンスーパーカークラブが脱退した。その後ポール・ヤオは、アジアへの進出を目論んでいたステファン・ラテルのSROと手を組んで、2017年ブランパンGTシリーズアジアの開催する。
 7月に大まかな内容は明らかとなったが、10月末SROは2017年のブランパンGTシリーズアジアの内容を発表した。

 当初SROは、インターナショナルGTチャレンジのアジア地域での展開を目論んでいた。そのため、富士や鈴鹿でGT3カーで行われる長距離耐久レースを望んでいたようだが、ホンコンスーパーカークラブの支援を取り付けたこともあって、2017年のブランパンGTシリーズアジアは、明らかにGTアジアに対抗する内容だ。レースフォーマットだけでなく、記載されるサーキットもGTアジアと大きく変わらない。未発表のインターナショナルGTチャレンジのカレンダーとはバッティングしないそうだ。

 下に掲載したカレンダーを見ると明らかな様に、4月にマレーシアのセパンでシリーズは開幕し、その後、GTアジア同様コンテナによって移動して、タイのブリナム-チャンで第2戦を開催する。タイのレースが終了すると、再びマシンと機材をコンテナに積み、日本へ運び、6月末に鈴鹿、8月に富士でレースを開催する。富士のレースが終了した後再びマシンと機材をコンテナに積み込み中国へ移動して、9月に上海、10月にチェジンでレースを開催する。
 ブランパンGTシリーズアジアのゼネラルマネージャーとダイレクターには、ブリテッシュGTチャンピオンシップとセパン12時間のマネージャーであるベンジャミン・フラナソヴィーチが就任した。

Photo:Sports-Car Racing

 元々GTアジアはマレーシアのセパンを拠点とし、多くのマシンと機材はセパンのサーキット内のガレージや、場合によっては、セパンの敷地内に置かれたコンテナに保管されている。日本を拠点とするレーシングチームを除くと、セパンでテストや練習走行を行い、GTアジアが契約した船によって、転戦している。どうやら、元々モータースポーツアジアでGTアジアに関わっていた人物もブランパンGTシリーズアジア(所属はホンコンスーパーカークラブ?)へ移籍した様で、アジア全域をコンテナによって移動するGTアジアのノウハウが、そのままブランパンGTシリーズアジアでも使われるようだ。

 GT3とGT4のクラスが設けられるが、現在のところ、余程たくさんのエントリーを集めない限り、GT3とGT4は一緒にレースを行う。もちろんマシンのBOPはSROが行い、予想通りタイヤはピレリのワンメイクとなる。SROの他のGT3カーレースもピレリを使っていることから、最適なBOPが設定されることだろう。ピレリは、非常に安価な価格でタイヤを供給するようだ。
 どうやら、流れはGTアジアからブランパンGTシリーズアジアに傾いたようだ。

2017 Blancpain GT Series Asia Calendar
4月8-9日 Sepang International Circuit(MYS) 2x 1hr races
5月20-21日 Chang International Circuit (THA) 2x 1hr races
6月24-25日 Suzuka International Circuit (JPN) 2x 1hr races
8月19-20日 Fuji International Circuit (JPN) 2x 1hr races
9月23-24日 Shanghai International Circuit (CHN) 2x 1hr races
10月21-22日 Zhejiang Circuit (CHN) 2x 1hr races

10月27日
●アウディがスポーツカーレースから撤退

Photo:Sports-Car Racing

 昨日アウディは、2016年限りでルマンを含むスポーツカーレースから撤退してフォーミュラEへ集中することを発表した。
 2014年に誕生した新制WECの最初の目的は、地球温暖化の抑止ときれいな空気の実現だった。地球温暖化の抑止について、アウディが開発するディーゼルエンジンは相応しかったかもしれない。しかし、きれいな空気の実現について、排出ガス浄化が難しいディーゼルエンジンにとって、非常に困難な要求だった。最終的にWECが成立した際、事実上きれいな空気を実現するルールは削除された。もちろん、この決定は、ディーゼルエンジンを使うアウディへの配慮だった。

 2014年に誕生した新制WECへ、アウディと同じVWグループからポルシェが登場した。長年スポーツカーレースと共に歩んできただけでなく、2014年にポルシェが開発した排気熱エネルギーリカバリーシステムを組み合わせた2リットルガソリンターボエンジンは、WECのレギュレーションに最適だった。逆にアウディは、ディーゼルエンジンの問題だけでなく、排気熱エネルギーリカバリーシステムを上手く開発することが出来なかった。2016年最初の構想では排気熱エネルギーリカバリーシステムの採用を計画して、我々にも、排気熱エネルギーリカバリーシステムの使用を公表していた。しかし、2016年になって排気熱エネルギーリカバリーシステムの実用化を諦め、4輪をコントロールして、フロントブレーキから6MJ(ルマンの場合)のエネルギーを回生するシステムに切り替えた。

 昨年9月北アメリカでVWグループのディーゼルエンジンの排出ガス浄化の不正が明らかとなった。VWグループに対して、様々なペナルティが科せられ、膨大な額の賠償金の支払いが予想される状況となった。
 この様な状況から、既に昨年末、アウディのWECからの撤退は予想されていた。
 そして昨夜アウディは、2016年限りでスポーツカーレースから撤退することを発表した。

Photo:Sports-Car Racing

9月29日
●GTアジアとブランパンGTアジア

Photo:Sports-Car Racing

 10年前に誕生したGTアジアは、ホンコンスーパーカークラブを率いるポール・ヤオと、マレーシアを拠点としてモータースポーツアジアを運営するデビッド・ソネンシャーによって運営されていた。一般的には、マカオGPに付加買う関わるホンコンスーパーカークラブのミリオネラ達が、自分達のスーパースポーツカーによるGTレースシリーズ望んだことによって誕生した。しかし、一般的に言われている様に、ホンコンスーパーカークラブのミリオネラ達がデビッド・ソネンシャーにGTレースシリーズをオーダーした訳ではない。もちろん、彼らが用意した金でシリーズが運営されていた訳でもない。

 しばらくの間、有能なデビッド・ソネンシャーと賢いポール・ヤオによって、GTアジアは大躍進を遂げた。日本で3か2つのレースを行い、日本でも見ることが出来なかった最新のGTレースカーによる華やかなGTレースシリーズとして、人気を集めた。しかし、有能であるが故、デビッド・ソネンシャーとポール・ヤオは衝突することも多かった。その結果、昨年12月マカオGPの後ポール・ヤオは引退宣言した。そして平和的にポール・ヤオはGTアジアから手を引いた。

 ポール・ヤオは事実上ホンコンスーパーカークラブを率いていたため、ポール・ヤオがGTアジアから離れることによって、GTアジアのエントリーの半分を占めるホンコンスーパーカークラブからのエントリーも無くなると思われた。
 確かにホンコンスーパーカークラブからの2016年のGTアジアへのエントリーは減った。しかし、2016年については、デビッド・ソネンシャーの方が上手だった。GTアジアへ参加するレーシングチームは、東南アジアの飛び抜けたミリオネラ達だ。GT3カーを販売するヨーロッパのメーカーの多くも、高価なGT3カーを販売するため、GTアジアへ参入していた。

Photo:Sports-Car Racing

 彼らは、特定のレーシングチームを自分達のサポートチームとして契約することによって、顧客の取り込みを図った。アストンマーティン、フェラーリ(ミケロット)、ベントレー等がサポートチームを設定していた。そのため、GTアジアでは常に最新のGT3カーが走った。華やかさを演出した大きな理由となっている。逆にサポートチームを設定しなかったメーカーのGT3カーは、ヨーロッパや日本でポピュラーであっても、GTアジアで見ることは出来なかった。
 彼らがサポートチームと契約する際の重要な条件は、シーズンを通してGTアジアへ参加することだった。そのため、2016年のGTアジアは、純粋なジェントルマンチームが姿を消しただけで、強力なサポートチームは参加している。これらのサポートチームの中にはホンコンスーパーカークラブの面々も含まれている。
 しかし、それでも、2015年に30台を超えていたGTアジアのエントリーは半分に減った。

 予想通りポール・ヤオは引退しなかった。引退宣言を行った時、既にポール・ヤオは、ブランパンシリーズを運営するSROのステファン・ラテルと話し合っていた。もちろんポール・ヤオは、デビッド・ソネンシャーに代わってステファン・ラテルと共に、アジア地域を転戦するGTシリーズを運営するためだった。
 2014年エンデュランスGTシリーズの創設を宣言したステファン・ラテルは、12月セパンでアジアを中心としたGTシリーズを作ることを発表した。しかし、その時点では、ステファン・ラテルもSROもアジアについての情報が少なかったようで、非常にちぐはぐな内容を公表して、東南アジアのモータースポーツ関係者を呆れさせている。その後、情報収集に力を尽くしたようで、当時東南アジア全域で開催されていたGTアジアを参考にして構想を練っていたようだが、有能なデビッド・ソネンシャーとの提携は到底不可能であるため、一方のポール・ヤオとの関係を深める努力をしていたようだ。
 つまり、ポール・ヤオとステファン・ラテルの両者にとって、願っていたシリーズだった。

Photo:Sports-Car Racing

 既にステファン・ラテルは、2017年にブランパンGTアジアシリーズの開催を発表した。現在発表されているカレンダーは、4月セパン、5月ブリナム、6月鈴鹿、8月富士、10月上海、12月セパンだ。モータースポーツアジアのスタッフを勧誘しており、GTアジアのノウハウを活かして、セパンを拠点として、4月にセパンでレースを行った後、マシンと機材をコンテナに積み込み、タイ、日本、上海を転戦して、12月マレーシアへ戻ってくる。残念ながら、期待されたマカオGPはシリーズに含まれない。

 対するデビッド・ソネンシャーのGTアジアも2017年のカレンダーを公表した。と言うより、2016年のカレンダーに修正を加えることとなり、2016年のカレンダーが確定したのが5月となった。新しいカレンダーには、復活が期待された(拠点の)セパンが無かった。公表された2017年のGTアジアのカレンダーは、確定したものではないが、韓国、日本の岡山、富士、中国で2つ、タイ(ブリナムかバンセン)を予定しているようだ。セパンの状況等を併せて判断すると、ブランパンが成功するように見える。

 しかし、モータースポーツアジアはGTアジアだけを開催している訳でなく、ランボルギーニやアウディ、さらにポルシェのワンメイクレースのプロモーターも務めている。既にモータースポーツアジアは、2017年にGT4カー(とGT4レベルのクルマ)のレースも開催することを発表しており、4つのメーカーが協力することを公表している。

 もし、2017年にGTアジアとブランパンGTアジアシリーズの両方が開催された場合、2017年日本で4つの国際的なGTレースが開催されることとなる。今年、有力な東南アジアのレーシングチームの幾つかは、GTアジアだけでなく、日本でGTレースカーを保管して、スーパー耐久シリーズにも参加している。2017年に4つの国際敵なGTレースが開催されるのであれば、この傾向は、より一層高まるだろう。場合によっては、新たに日本GT3カーのレースシリーズの開催を目論むプロモーターが現れるかもしれない。

Photo:Sports-Car Racing

9月28日
●2018年BMWがルマンのGTクラスへ復帰 ハイブリッドGTカーか!

Photo:Sports-Car Racing

 伝統的にBMWは、ディーラーで売っているのと同じカタチのプロダクションカーレースを重視している。BMWの主力商品はセダンであるため、ツーリングカーレースに参加してきた。スポーツカーレースにおいても、背の高いセダンによってGTクラスへ参加して、名だたるスーパースポーツカーを破ってきた。近年もM3によってALMSやルマンに挑戦して、何度もタイトルを獲得した。2012年のルマンでは、背の高いM3によって、フェラーリやポルシェを差し置いてポールポジションを獲得して、スーパーカーメーカー達を慌てさせた。

 しかし、GTクラスでセダンによってスーパースポーツカーを破っても、スポーツカーレースの最高峰であるルマンで総合優勝することは出来ない。そのため、1990年代BMWは、ウイリアムズGPと手を組んで、LMPカーによってルマンへ挑戦した。そして1999年BMW V12LMRによって、トヨタやメルセデスを破って、ルマン優勝を成し遂げた。

 2014年WECが成立した。しかし、期待されたプジョーが脱落したため、アウディ、ポルシェ、トヨタの3つのメーカーによってWECは総合優勝争いが行われることとなった。そのため、WECとACOは、“いくつかのメーカー”に対してWECへの参入を誘っていた。“いくつかのメーカー”の中で有力候補はフォードとBMWだ。

 フォードは、1966年にフォードGTによってルマンで初優勝してから2016年で50周年を迎えることから、ルマンへの復帰について前向きだった。しかし、2014年に成立した新制WECは、1980年代のグループCを近代化したもので、リカバリーエネルギーの使用が前提となる。既に何年もリカバリーエネルギーの研究を行っている3つのメーカーに対して、フォードが追いつくのは非常に難しかった。しかも、高度なリカバリーエネルギーを開発するには非常に大きな金が必要だった。そこで新たにフォードGTを開発してGTEカテゴリーでルマンに復帰することとなった。

 21世紀のフォードGTは、元チームゴウのブライアン・ウイリスが開発した。ブライアンは、GTEカーと言っても、LMPカーに匹敵する内容でフォードGTの開発を進めた。LMPカーとの違いは、リカバリーエネルギーを使わないことと、見ようによってはロードカーに見えることだけだった。ルマンに登場したフォードGTは、他のGTEカーとは一線を画した速さを披露した。

Photo:Sports-Car Racing

 もう1つのBMWは、リカバリーエネルギーの開発に関心を持っていた。既にBMWは、高度なリカバリーエネルギーの実用化について、慎重に開発を進めていた。最初にフォーミュラEへの参入を決定していた。
 優秀なBMWの登場は、WECやルマンにとって、非常に大きな話だった。しかし、高度なリカバリーエネルギーシステムを備えたLMPカーを開発するには、フォーミュラEとは比べものにならない大きな金が必要だった。BMWの首脳陣は、大きな予算の計上を認めなかった。しばらくの間、BMWの要望によって、WECとACOの中で、予算の圧縮について、様々な話し合いが行われた。既にWECとACOは、様々なコスト削減案を実施しているが、F1GP同様、効果的な内容は1つも無かった。しかも、これらのコスト削減案は、新たな開発やテストを削減する内容であることから、既に参入しているメーカーに有利で、新たに参入するBMWにとって、逆に大きな障害となる。

 6月のルマンの際、WECがBMWに対して、LMPでなくGTでの参加を薦めていることが明らかとなった。しかし、現在のGTEカーは、ロードカーのカタチをしたレーシングカーであって、開発競争を抑制するため、リカバリーエネルギーどころか、ロードカーでも当たり前の初歩的なハイテクでさえ、使用が認められていない。
 つまり、元々のBMWの希望とはかけ離れた内容のクルマのレースだった。

 BMWは、北アメリカでの販促目的から、7年前からレイホール・レッターマンによって、M3やZ4のGTEカーをALMSで走らせていた。現在もこの活動は続けられており、今年はM6のGTEカーをIMSAで走らせている。
 IMSAで走らせているM6 GTEカーをルマンで走らせれば、容易に実現可能な内容だ。

 昨日BMWは、2018年WECとルマンのGTカテゴリーへ復帰することを発表した。
 現在、明らかなのは、この内容だけだ。しかし、現在WECとACOは、2018年にGTカテゴリーの内容をモデファイすることを計画している。漏れ伝え聞く内容によると、2つのプランの内1つを選択するか、2つのGTカテゴリーを設けるプランが存在するらしい。既に1つのプランの採用は決定しているらしいが、もう1つが消滅した訳ではないようだ。どうやら、新しいGTクラスの一方は、リカバリーエネルギーの採用も可能であるようだ。

 リカバリーエネルギーの採用を望んでいるのは、BMWを含むメーカー達であることは明らかだ。現在のGTEカテゴリーのGTE-Proクラスは、LMPH以上にメーカーのファクトリーチーム同士が熾烈な闘いを繰り広げるメーカー戦争の場であることから、スムーズにルールが作られる可能性が高い。LMPクラスのLMPH同様、プライベートチームにとって、このような高度なGTレースカーは手に余ることから、そのため、2つのGTカテゴリーが検討されているのだろう。

Photo:Sports-Car Racing

6月19日
●2017年のルマン LMP1は空力を変更して、HとLの速さを整える

Photo:Sports-Car Racing

 2014年に施行された現在のLMP1は、エネルギーリカバリー(ハイブリッド)の使用が義務付けられるLMP1Hとエネルギーリカバリーを使わないLMP1Lの2つのカテゴリーが存在する。LMP1Lはプライベートチームのみが参加出来るカテゴリーであることから、ルマンで優勝を狙うメーカーのファクトリーチームは、リカバリーエネルギーが義務付けられるLMP1Hにしか参加出来ない。もちろん、昨年参加したFFのLMP1Hカーは、テストディで取り付けられていたリカバリーエネルギーを、決勝レースの際取り外して登場したため、この時点でアウトだ。今年は、このような問題が起きない様、テストディの車検、通常のパブリック広場の車検の後、火曜日にもLMP1Hの6台だけが、3回目の車検を受けている。

 木曜日ACOは、恒例のプレスコンファレンスを開催して、2017年のルールの大まかな内容を公表した。
 2011年ファクトリーチームのLMP1カーとプライベートチームのLMP1カーは、平均2.5秒差だった。しかし、2015年ファクトリーチームのLMP1HカーとプライベートチームのLMP1Lカーの差は7.5秒まで拡がった。6時間レースの場合、2011年が4~5LAPだったものが、2015年は11~15LAPまで拡がった。これまでも、FIAとACOが、この差の是正を怠っていた訳ではない。FIAとACOは、LMP1Lのエンジン出力の向上を目論んだが、LMP1Lのため、優秀なエンジンを開発するAERだけであることもあって、プライベートチームは、どんなに多めに見積もっても、たった750馬力のエンジン出力で、ファクトリーチームの1000馬力のLMP1Hカーと闘わなければならなかった。第一エンジン出力を上げると、駆動系の負担が増える。しかも、増える燃料消費率に併せて、走行可能距離を整えようといたら、燃料タンクを大きくしたり、給油パイプを太くしなければならない。

 そこでHとLの速さを整えるため、2017年のLMP1は、空力のルールを変更する。速すぎるHは、リアのディフューザーの高さを50mm引き下げられる。同時に最低地上高を15mm引き上げる。逆に遅いLは、リアウイングの幅と前後長の両方を拡大する他、フロントノーズの左右に取り付けられる空力アイテム(多くの場合カナードウイング)について、クルマの全幅(1,900mm)を超えて拡大することが許される。空力を性能調整の手段として大々的に勝つ湯するため、2018年にはDRSリアウイングの採用を目指していることも公表された。細かな数値は、これ以上公表されなかった。また、これまでも暫定的に設定されることがあった車重の軽量化について、正式にLMP1Lは830kgとすることが公表された。

6月17日
●ポルシェ919の2リットルターボエンジンの圧縮比は16:1!

Photo:Sports-Car Racing


 2014年に登場した919LMP1Hカーは、飛び抜けたテクノロジーによって開発されているようだ。昨年登場した改良モデルは、ライバルに先駆けて、初めて8MJのリカバリーエネルギーを達成した。シーズンを通して圧倒的な速さを披露して、WECのシリーズチャンピオンを獲得すると共に、ルマンでも17年ぶり(911GT1以来)に優勝を成し遂げた。我々は、919の速さのポイントを、効率の高いフロントブレーキからのエネルギー回生(MGU-K)、レギュレーションを巧妙に使い切る、ターボエンジンに組み合わせられた排気熱エネルギーリカバリーシステム(MGU-H)、そして、コンパクトで軽いリチウムイオンバッテリーにエネルギーを貯えるシステムにあると考えていた。
 現在のLMP1Hは、ルマンの場合、リカバリーエネルギーを、1周毎最大8MJしか放出出来ない。つまり、リカバリーエネルギーは、常に100%使用出来る訳ではない。常に100%使用出来るエネルギーは、従来通りエンジンパワーだ。

Photo:Porsche

 以前から919の2リットルターボエンジンは、驚異的に高い圧縮比であることが、噂されていた。しかし、2週間前ポルシェと話をするまで当方は、疑心暗鬼だった。なぜなら、高いブースト圧をかけると、デトネーションやノッキングの危険が発生する。そのため、1980年代のグループC時代の後半、高性能なターボエンジンは、ノッキングセンサーを備えて、ノッキングの危険を関知すると、直ちに点火時期を遅らせて、燃焼室を保護した。ノッキングセンサーによる燃焼室の保護は、現在ではロードカーでも使われているが、噂された圧縮比は16:1と極端に高かった。NAエンジンでも16:1の圧縮比のエンジンは少ない。

 低回転でブースト圧が高まらない状況では、高い効率が見込める高い圧縮比が望まれる。しかし、高回転でブースト圧が高まった状況では、ノッキングやデトネーションの危険を避けるため、低い圧縮比が相応しい。そのため、当方はポルシェが可変圧縮比を実用化しているとさえ考えていた。なぜなら、1年以上前ポルシェは、コンロッドの長さを油圧によって変更する可変圧縮比の特許を申請しているからだ。動いているコンロッドへの油圧の供給方法が、ポイントのシステムだ。
 しかし、このシステムの実現には、今後3年から5年が必要と考えられている。

 昨日、再度ポルシェと話す機会があったことから、再度、どのようにして、高い圧縮比を可能とするのか?質問したところ、以下の様な回答を得た。現在919の具体的な圧縮比は教えられないが、あなたの推察と大きな違いはない。919は直噴によって燃料を供給している。非常に緻密な燃料供給が可能だ。そのため、高い圧縮比で高いブースト圧の場合、薄い燃料を供給することによって(リーンバーン)、デトネーションやノッキングを避けることが出来る。F1GPのエンジンと似たコンセプトだ。
 つまり、低回転/低ブーストでは燃料を濃く、高回転/高ブーストでは燃料を薄くすることによって、可変圧縮比と同様の効果を得ているということだが、NAエンジンであっても16:1の圧縮比は高すぎる。そのため、もう一歩踏み込んだ緻密なエンジンコントロールが行われているようだ。この鍵は、ターボチャージャーに組み合わせられるMGU-Hと関係がありそうだ。
*Sports-Car Rcing Vol.22にて掲載予定

3月30日
●タイサンがSARDと共にSuperGTへ復活 シフトはディレクションと共に復帰

Photo:Sports-Car Racing

 2014年限りでSuperGTでの活動を休止したタイサンは、SARDと共にSuperGTへ復帰することを決定した
 現在のSuperGTは、ほとんどのサーキットの最大出走台数に迫る多数のエントリーを集めている。そのため、シーズンエントリーを基本としているだけでなく、長年シーズンエントリーを行っていたレーシングチームであっても、2年間シーズンエントリーを休むと、既存のエントリーの権利を失ってしまう。2014年末で活動を休止したタイサンとシフトは、今年シーズンエントリーを行わなければ、この権利を失ってしまうが、シフトはディレクションと連携して、再びSuperGTへ登場した。既に、先週末富士で行われたSuperGTテストから、新しいランボルギーニは登場して(No.63として走行)、素晴らしい速さを披露している。

 タイサンは、ルマンでの活動も望んでいることから、今年のSuperGTの計画をまとめるのが遅れてしまった。最終的にSARDと提携することを決定してのは、ほんの数ヶ月前のことだった。最初、2016年については、既存のGT300マシンを購入して走らせる計画だったようだが、最終的に、新たにニューマシンを購入して活動を再開することを決定した。

Photo:Sports-Car Racing

 タイサン/SARDが選んだマシンは新しいアウディR8だ。しかし、決定が遅れたことから、6月末にならないとアウディはR8を日本へデリバリー出来ないことが判明した。8月からの復帰も検討したようだが、シーズンエントリーでなければ、既存のエントリーの権利を失ってしまうことから、急遽、旧型のR8を導入して、開幕戦岡山から活動を再開することを決定した。
 タイサン/SARDが導入する(旧)R8は、2012年にGainerが走らせて、開幕戦岡山で優勝したクルマそのものだ。その後2014年ヴァージョン(旧R8の最終型)にアップデイトされ、昨年までSuperGTで走っていた。
 ドライバーは、中野信治、密山祥吾、元嶋祐弥の3人、タイヤはヨコハマだ。ドライバーのルーキーテストが必要だが、4月4日富士スピードウェイで第2戦まで走らせるR8のテストを兼ねてルーキーテストは行われる。

3月29日
●2016年のSuperGTは、開催サーキットを3種類に分類してGT300のBOPを設定

Photo:Sports-Car Racing

 2年前SuperGTは、SROが作成したブランパンシリーズのBOPをベースとして、SROがSuperGT向けにモデファイしたBOPをGT300に設定することを決定した。SuperGT向けと言う理由は、ブランパンシリーズに限らず、世界中のほとんどのGT3カーのレースは、ワンメイクタイヤによって行われているが、SuperGTのGT300クラスは3つのタイヤメーカーが参入しているためだ。
 また、JAF-GT300やマザーシャシーカーとの微妙な性能調整が必要だったことも、SuperGT向けが求められた理由だった。

 SuperGTのGT300クラスのBOPのベースとなっているブランパンシリーズのBOPは、現在、レースが開催されるサーキットをコースの性格に応じて3つのグループに分類して、各々のコースのグループ毎各車のBOPを設定している。3つのグループとは、A:ハイスピード、B:通常のミディアムコース、C:高低差のあるコースだ。コースの性格に応じたBOPが求められた理由は、標高によって大きくエンジン出力に影響を受けるNAエンジンとターボエンジンの性能拮抗化だけではない。

 元々GT3カーは、ミシュランのクレルモンフェランのテストコースを使って、Gセンサーを装着して、理論的な性能を解明することによって、各車のBOPを確定していた。しかし、昨年ブランパンシリーズやADACシリーズがピレリのワンメイクとなったことから、ミシュランは離れた。その結果、昨年から、新たにホモロゲイションを申請するGT3カーは、各々のGT3カーを作るメーカー自身が、各車の内容を決定して、そのクルマを買ったカスタマーが実戦で走らせる前に、速さを証明することによって、BOPを設定され、ホモロゲイションを与えられている。ほとんどのGT3カーが、2016年にモデルチェンジしたため、このルールは、一般的に2016年レギュレーションとも呼ばれている。
*注:元々GT3カーの速さは、Sports-Car Racing Vol.21に掲載した3つのグラフによって、基本となる性能が設定されています。この性能を想定したグラフは2016年レギュレーションでも変わりません。

Photo:Sports-Car Racing


 理論的な裏付けが希薄であることもあって、新しいルールによって登場したGT3カーは、速さが違う場合も少なくなかった。このような、GT3カー同士の速さの問題もあって、SROは、コースの性格に応じたBOPを設定することとなったようだ。
 しかし、具体的な速さを特定するのは非常に難しい。そこで、各々のクルマが、得手不得手とするコースがあるのを無視して、ある程度、あらゆるコースで速さを拮抗化させようとしている。

 昨年末SROは、2016年のSuperGTにも、サーキットの性格に応じたBOPを設定することを決定した。
 ブランパンシリーズ同様、SuperGTを開催するサーキットを、コースの性格に応じてA,B,Cの3つのグループに分け、A:富士、B:岡山、もてぎ、鈴鹿、ブリナム、C::SUGO、オートポリスに分類された。先に述べた様に、ある程度各々のクルマの性格を無視することによって、速さを整えると言う意味は、場合によっては、ストレートスピードが遅い代わりコーナーリングスピードが速かったクルマに、トップクラスの速いストレートスピードを発揮させる程の大きな変更が盛り込まれている。

 元々SROは、SuperGTについて、ブランパンシリーズに準じたコースBOPを導入する意向だった。しかし、SROは、SuperGTのGT300クラスが、ピレリタイヤのワンメイクで行われているブランパンシリーズと違って、3つのタイヤメーカーが参入していることから、大きく状況が異なることを知った。そこで、取りあえずブランパンシリーズのものをベースとした各々のコースBOPを設定して、テストを行った後、正式に各コース毎のBOPを設定することとなったようだ。

 3種類のコースに応じたBOPも、通常のBOP同様、エンジン性能、車重、車高、燃料給油パイプの口径(*注:エンジン性能を調整するエンジンと燃料タンク間のリストリクターでない)の4つを変更することによって行われる。2016年ホモロゲイションのターボカー(BMWとフェラーリのこと)は、リストリクターでなく、各回転域の最大ブースト圧を変更することによって、エンジン性能はコントロールされる。2015年までにホモロゲイションを獲得したクルマについては、従来通りリストリクター、あるいは各回転域の最大ブースト圧、もしくは、その両方が変更される。ほんの僅かな変更と考える方が多いだろうが、ストレートスピードが遅かったクルマに、見違える様なストレートスピードを与える程の大きな差がある。

Photo:Sports-Car Racing


 既に、開幕戦岡山(グループB)と第2戦富士(グループA)の暫定BOPが設定され、岡山と富士で公式テストが行われた。1週間前に行われた岡山テストの際、何台かのクルマは、有利なBOPを与えられたが、ほとんどのメーカーは対応出来なかった。総てのチームの状況を確認出来ないが、岡山テストの際、素早くコースBOPに対応したのは、最も大きな性能向上処置を与えられたAMGだった。大きなリストリクター(33.2mm×2→36mm×2)と軽い車重(1,350kg→1,295kg)を与えられた4台のAMG GTは、一挙に1秒以上のタイムアップを果たした。
 残念ながら、岡山テストの際、どのクルマが、新しいコースBOPに従った内容で走って、どのクルマがコースBOPに対応してないか?判断出来なかったことから、どのクルマが、本当に岡山で速いのか?皆目見当が付かなかった。

 1週間後、唯一のグループAサーキットである富士で公式テストが開催された。岡山と違って、多くのチームがコースBOPに従った内容で走ったと考えられているが、非常に気温が低かったこと、そしてBMWの様に、やっと本格的に走り始めたクルマが存在したこともあって、富士の場合も、どのクルマが本当に速いのか? 少なくとも、我々には、岡山同様判然としなかった。
 しかし、どんなに気温が低くても、ある程度の信用すべきデータは得られた様で、現在公表されている富士(グループA)のコースBOPは、様々な点で見直されると考えられている。

 昨日(3月28日)、開幕戦が行われる岡山(グループB)のコースBOPが正式に発表された。発表の方法は、コースBOPを単独で発表するのでなく、昨年までと同じ様に、各々のクルマの出走条件として発表された。つまり、第2戦以降、コースBOPに、前レースにおける速さを判定した内容を加味して、出走条件として発表される。
 大きく速さを増したAMG程でないが、性能向上処置を獲得したクルマは、他にも存在する様に思える。逆に性能を引き下げられたクルマもあるようだ。1週間前の公式テストと違って、総てのクルマが、コースBOPに従って、正しい内容で走る。来週末まで、どのクルマが本当に速いのか? 我々は判断することが出来ない。

Photo:Sports-Car Racing


3月17日
●2016年のGT3レギュレーション 2016年公認のターボエンジンはリストリクター無し!

Photo:Porsche

■上限価格は、あくまでも紳士協定だった
 複雑な話だが、一口でGT3と言っても、世界中のGT3カーが走るレースシリーズは、総てが同じルールで行われている訳ではない。ベースとなるテクニカルレギュレーションが基本的であるだけで、速さに関わる部分のレギュレーションの多くは、ほとんどの場合、レースシリーズ毎、独自に設定されている。特にアルコールを10%含有するE10燃料を使うIMSAのGTDカテゴリー(GT3カーが参加するクラス)は、他のシリーズと比べると、リストリクターの大きさや燃料タンクの容量が大きく異なっている。
 そのため、もしかしたら、より戸惑わせることとなってしまうかもしれないが、今年GT3の基本レギュレーションが変更されたことから、201年のGT3レギュレーションを大まかに紹介しよう。

 2006年にGT3と名付けられて誕生しカテゴリーは、他のレースカテゴリーと違って、統一したテクニカルレギュレーションはなく、各々のクルマに応じたルールが設定されている。速さの調整は、最終的に総てのクルマが同じコースを一緒に走って特定したため、同じ排気量のエンジンでも、クルマの速さに応じて、違うサイズのリストリクターを装着したり、違う重さの車重や、違う大きさの燃料タンクを与えた。このような曖昧な内容のルールの理由は、元々GT3は、アマチユアの遊びのためのレースとして誕生したからだ。そのため、参加するドライバーは、ゴルフ同様、プラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズの4つのステイタスを設定され、ステイタスに応じて、ハンデが与えられた。しかも、最初ほとんどのGT3レースは、トップのプラチナドライバーの参加を認めなかった。先に述べた様に、GT3は、真剣勝負のレースでなく、アマチュアが楽しむためのカテゴリーだった。

 Sports-Car Racing Vol.21に掲載したGT3特集を見てもらうと、GT3が誕生した経緯が判ると思うが、各々のクルマの速さに応じて、異なったテクルカルレギュレーションを設定したため、事実上、どの様なロードカーをベースとしても、速さを追求することが可能だ。つまり、レースに向かないクルマをベースとしたり、元々高価なクルマをベースとしてGT3カーを作った場合、とんでもない高価格のGT3カーが登場する可能性があった。そこで、曖昧なテクニカルレギュレーションに代わって、販売価格に上限を設けることによって、過当競争を防止した。この様な概念が可能となった理由は、もちろん、メーカーの真剣勝負の場でなくアマチュアの遊びのためのカテゴリーであることを、GT3に参加するメーカーが納得したことだった。

 しかし、レギュレーションで販売価格の上限を規定するのは非常に難しく、最初レギュレーションでなくブルテンで上限価格を公表した。Sports-Car Racing Vol.21の特集で掲載した様に、ブルテンで公表された上限価格は非常に曖昧で、上限価格のルールは、レギュレーションではない。あくまでも、GT3カーを販売するメーカー(コンストラクター)間の口約束に過ぎなかった。
 最初西ヨーロッパでの販売価格を30万ユーロ(*注:最初のインフォメイションでは29万5,000ユーロ)、その後35万ユーロ(*注:こちらも、最初のインフォメイションは34万5,000ユーロ)としてメーカー達は約束したが、この価格にはVAT(*注:日本の消費税に相当)や輸送代金、さらにオプションパーツを含むことについての記載も無かった。そのため、タイヤやホイール等を含まない内容を、しかもVAT無しとして上限価格内で実現したメーカーも存在した。

 それでも、ドイツの3つのメーカーが、GT3をメーカー自身のモータースポーツ活動でないと判断し、GT3を「カスターマースポーツ」を名付けて、プライベートチームの活動であることを約束して、世界中で大々的にGT3カーを販売した結果、GT3の紳士協定は上手く機能して、アット言う間にGT3は世界中に普及した。もちろん、GT3に参入したメーカー達は、クルマ単体で35万ユーロ(2016年のレートで約4,500万円)と言う、非常に高価な商品を、世界中でたくさん販売することに成功した。
 しかし、以前と同じ様に、総てのモータースポーツ活動は、自身の優秀さを証明するためと考えるメーカーも存在した。

 これらのメーカー達は、GT3には画一的なレギュレーションはなく、各々のクルマに応じたレギュレーションによって開発して、実際に走らせてによって、速さを判定していることに注目した。このルールを活用すれば、モータースポーツに相応しくないクルマであっても、トップクラスの速さを発揮することが可能だった。
 問題は、先に述べた様に、モータースポーツに適さないクルマを速く走らせようとすると、開発と製作に大金を要することだった。
 ところが、彼らは、GT3の上限価格のルールがレギュレーションでなく、あくまでも約束であることを発見してしまった。
 その結果2014年ベントレーとマクラーレンが6,000万円を超える高価なGT3カーを登場させることとなった。

Photo:BMW

■2016年のGT3は、3つのメーカーだけが、上限価格を約束しただけ
 ベントレーやマクラーレン以外にも、当時の35万ユーロの上限価格に不満を持つメーカーが存在したため、2014年頃を境として上限価格のルールは崩壊したと思われた。Sports-Car Racing Vol.21の特集において、詳しく掲載したが、2014年ポルシェは、991GT3R GT3カーを42万5,000ユーロで販売することを計画した。当時の為替レートでは何と約5,8000万円だ。それ以前の997GT3Rと比べると約50%の値上げだ。2014年に公表された991GT3Rは、フロントサスペンションにGTEヴァージョンの991RSRと同じWウィッシュボーンサスペンションを備えていた。同じ2014年ポルシェは、北アメリカのGTDカテゴリーのため、カレラカップカーに4リットルエンジンと大きなタイヤを組み合わせた991GTアメリカを販売した。991GTアメリカは、大きなタイヤを履くもののオーバーフェンダーはなく、フロントサスペンションもロードカーと同じストラットタイプのままだったが、ほとんど同じエンジンを備えるにも関わらず、価格は2014年に公表された最初の991GT3Rのたった半分の約3,000万円だった。

 ご存じの通り、2014年に公表されたWウィッシュボーンサスペンションの991GT3Rには、その後計画が棚上げとなった。当方は、あまりの値段の高さによって、計画を見直したのかと思っていたが、今年のデイトナ24時間の際、オリジナルと違うWウイッシュボーンフロントサスペンションの公認が不可能であることが判明して、計画を見直したことが明かとなった。
 推測となってしまうが、ポルシェは、GTEヴァージョンの991RSRと同じWウィッシュボーンフロントサスペンションを備えるベースカーの販売を検討したのかもしれない。しかし、2015年5月に新たに発表された991GT3Rはオリジナルと同じストラットタイプのフロントサスペンションを備えていた。しかも、値段は42万9,000ユーロに値上げされていた。高度なWウィッシュボーンサスペンションをオリジナルと同じストラットタイプに戻したにも関わらず、逆に値段が上がったことから、当方は不可解と思っていた。今年1月に行われたデイトナ24時間の際、ポルシェは、値段が上がった理由について、純粋に為替レートの変動と説明した。この説明を行った際、ジョークと判断すべきかもしれないが、「2014年より4万ドル安くなっており、そのうち3万ドルがサスペンションのコスト」との発言まで出た。先に述べた様に、ジョークかもしれないが、非常に説得力がある。

 ところが、メルセデス、アウディ、BMWの3つのドイツのメーカーは、上限価格のルールの維持を望んでいた。この3つのメーカーは、現在DTMを実施している様に、誰か一人だけが抜けがけするのでなく、互いが見える範囲で成長することを望んでいる。日本に例えると、トヨタ、ニッサン、ホンダと似ているかもしれない。特にアマチュアのための「カスタマースポーツ」であれば、勝つために開発競争することなく、高価なクルマの販売だけを目的として、GT3に関わることが可能だった。彼らは、より高い販売価格を設定するのでなく、販売価格、さらにランニングコストまで、コントロールすることを望んでいた。
 GT3に対する目論みは、3つのメーカーの間でも、完全には一致していなかったようだが、販売価格について、基本価格を38万ユーロにすることを約束したようだ。この場合も、あくまでも基本的な約束であって、VATやオプションパーツは該当しない。

 同時にメルセデスは、エンジンのマイレッジ保証を20,000kmに設定した。600馬力に迫る高性能車にとって、20,000kmの保証はロードカーと同じ内容だ。アウディやBMWは、新しい上限価格は納得したようだが、エンジンマイレッジの制約については、彼らはメルセデスとは違う考えを持っているようだ。リーズナブルな価格、ロードカーと変わらない驚異的に長いエンジンマイレッジによって、噂を信じるのであれば、メルセデスは70台以上のAMG GT3の注文を獲得しているらしい。
 しかし、驚異的に長い20,000kmのエンジンマイレッジを実現するため、AMGは小さな33.2mm×2のリストリクターの装着を申請した。昨年のSLS AMG GT3のリストリクターが36mm×2であるから、理論上10%も出力は低下してしまう。

 現在のところ、ワンメイクタイヤを使うヨーロッパの場合、2016年のGT3カーに大きく速さの差は無いようだ。しかし、5年前日本にGT3カーが登場した時から言われている様に、日本のSuperGTは、3つのタイヤメーカーが参入していることから、各々のタイヤメーカーが、どんどん高いグリップを発揮するタイヤを開発する。高いグリップのタイヤは、優れたグリップを実現するだけでなく抵抗も大きいことから、どうしてもストレートスピードが低下してしまう。そのため、小さなリストリクターを取り付けた新しいAMG GT3は、SuperGTの場合、想定以上に、大きくストレートスピードが低下しているようだ。

Photo:Marcedes

■2016年のGT3のBOPは、メーカーの自己申告が基本
 2016年のGT3は、昨年までの様に、同時に同じサーキットを走って速さを特定するのでなく、GT3カーを作るメーカーが、リストリクターの大きさや車重等を自己申告することが建前だ。そして、実際にデビューする前までに、何らかのカタチで速さを証明することが求められている。昨年アウディやメルセデスは、しばしばニュルブルクリンクで行われるVLNシリーズに参加して速さを証明する一方、BMWやポルシェもニュルブルクリンクでテストを行って、走行データを提示して、速さを証明した。

 この様な速さを特定するルールそのものが変更されたことから、各車の速さについて、疑心暗鬼状態だった。しかし、先週ブランパンシリーズの公式テストがポールリカールで行われた際、各車の速さの差は僅かと判断された様だ。もちろん、新しいAMG GT3は、決して速いストレートスピードを持たないが、ラップタイム自体は、大きく遅かった訳ではない。
 ポールリカールでブランパンシリーズの公式テストが行われる前、ポールリカールで速さに大きな差があるのであれば、シーズン開幕前でも性能調整が行われると考えられてた。総てのクルマがポールリカールで走った訳でないため、今後性能調整が行われる可能性は否定出来ないが、現在のところ、少なくとも、第1戦が終了するまでは、現在のBOPが使われると考えられている。

 一足早く口走ってしまったが、2016年のGT3は、従来の様に、ミシュランのクレルモンフェランのテストコースにおいて、Gセンサーを装着して、理論上の走行データを解明したり、あるいは、ポールリカールやバルセロナで、同時に複数のプロフェッシヨナルドライバーが走らせて、速さを特定している訳ではない。正確な理由は不明だが、現在GT3カーのタイヤは、ヨーロッパの多くのレースシリーズはピレリ、ルマンスプリントカップとGTアジアがミシュラン、IMSAがコンチネンタル、スーパー耐久がヨコハマだ。従来の様にミシュランは、GT3のルール作りに協力する理由は無いだろう。この影響だけではないだろうが、2016年のGT3は、クルマを作るメーカー自身が性能指針を自己申告して、そのGT3カーの速さを証明することが求められている。

 ほとんどの場合、公認を取得する前、いくつかのレースに章典外で参加することによって速さを証明しているが、BMWやポルシェの様に、不特定多数のクルマが走るオープンテストで走ることによって、速さを証明する例もある。いずれの場合も、データをFIAやACO、SRO、ADACに提出することによって、各々のシリーズの公認を得ている。残念ながら、詳細を確認出来なかったが、SuperGTの場合、SROに提出されたデータによって、速さを特定して、SuperGT向けのBOPが設定されるのだろう。

Photo:AUDI

■2016年に公認されたGT3カーのターボエンジンはリストリクター無し
 この様に2016年のGT3は、メーカー自身がクルマの速さを証明することが根幹となっている。つまり、従来の様にリストリクターによって、発生可能なエンジン出力を制限する理由は薄れている。例え排気量が同じであっても、ファミリーカーのエンジンとレーシングカーのエンジンに同じ大きさのリストリクターを取り付けたら、よりファミリーカーのエンジンの方が大きく出力が低下する。そのため、従来のGT3であっても、同じ大きさのエンジンに同じサイズのリストリクターが取り付けられた訳ではない。各々のエンジンに合わせて、同程度の出力を発生する(違うサイズの)リストリクターが取り付けられていた。

 つまり、従来もリストリクターによって、エンジン出力を設定する理由は少なかった。2012年のFIA(他の一部のシリーズでは2011年から)は、GT3のターボエンジンについて、リストリクターのサイズだけでなく、4,000rpmから7,500rpmの間で500rpm毎(2015年の場合)最大ブースト圧を設定していた。もちろん、最大ブースト圧の証明は、そのクルマを作ったメーカーに任せられていた。しかも、性能調整する場合、ターボエンジンは、リストリクターだけでなく、最大ブースト圧を考慮しなければならなかった。
 そこで2016年のGT3は、ターボエンジンについて、リストリクターの装着を免除して、各々のクルマに応じて2,000rpmから、そのクルマの最大出力を発生する回転するまで、総ての回転域(低回転域は2015年同様500rpm毎、高回転域では随時)で最大ブースト圧を義務付けた。その代わり、そのクルマ作るメーカーに対して、エンジン性能を証明することを求めた。既にBMWとフェラーリが、ターボエンジンを組み合わせた2016年のGT3カーを登場させている。

 GT3の場合、2016年のルールが総てのクルマに適応される訳ではない。2015年までに公認されたクルマの場合、新たに2016年に公認を申請しないのであれば、多くのシリーズは、基本的に2015年か2014年のルールを適応することによって参加を認める。例えば昨年SuperGTのGT300でチャンピオンを獲得したニッサンGTR ニスモGT3やマクラーレン650Sは、2015年に公認を取得していることから、2015年ルールに従って、リストリクターを取り付けた状態で走ることとなる。
 2015年のクルマを走らせるレーシングチームの中には、2016年ルールのターボカーがリストリクターを装着しないことから、圧倒的なストレートスピードを発揮すると勘違いしている人々が居るが、2016年ルールのターボカーは、事実上、総ての回転数において最大ブースト圧が設定されているため、理論上、想定以上の出力を発生することは出来ない。もし、2016年ルールのターボカーが極端に速い最高速度を披露するのであれば、そのクルマを作ったメーカーの証明を疑うべきだろう。

2月16日
●2016年ルマン24時間の60台のエントリーリスト決定 日本のプライベートチームは落選!

Photo:Sports-Car Racing

 5日ACOとFIAは、パリで2016年のルマン24時間、WEC、ELMSのエントリーリストを発表した。ルマン24時間は、スターティンググリッドのリミットより、はるかに多いレーシンングチームがエントリー申請を行うことから、2000年代になってACOは、ルマン24時間に参加出来る55台を選定して、そのエントリーリストを公表してきた。しかし、2012年に復活したWECは、FIAとACOが戦闘状態に陥った1980年代では考えられなかった状況だが、ルマンのサルテサーキット内にオフィスを設けている。
 もちろん、FIAがWECのオフィスをルマンに設けた理由は、スポーツカーレースがルマンを中心として回っていて、トップレベルのスポーツカーレースがルマン抜きで存在出来ないことを痛感した結果の決定だが、その結果、今年ACOとFIAは、共同でルマン24時間、WEC、ELMSのエントリーリストを発表するイベントをパリで開催することとなった。

 WEBで同時中継されたことから、ご覧になった方々も多いと思うが、今年60台に増やされたルマン24時間、WECの32台、そして44台のELMSのエントリーリストが発表された。詳しくはエントリーリストを見てもらいたいが、ルマンのエントリーリストは、LMP1クラスが、ポルシェとアウディが、それぞれ1台ずつ減ったことやニッサンの撤退によって減ったが、LMP2とGTEが増えたことによって、なかなか賑やかなエントリーとなった。当方にとって予想外な内容は、昨年ELMSタイトルを獲得したグリーブスは、2台のLMP2カーをルマン24時間にエントリー申請したが、1台しかリザーブリストに掲載されたことだ。

 元々グリーブスは、WECとELMSの両方のシリーズに同じ2台のLMP2カーを走らせる計画だったが、ご存じの様に、WECとELMSのカレンダーの都合によって、同じ2台のシャシーを走らせることが不可能となったため、スポンサーが望んでいるヨーロッパで行われるELMSだけに活動を変更したことが、1台のエントリーがリザーブリストに掲載された理由と考えられる。
 リザーブリストの1番であるため、間違いなく復活することだろう。
 逆にGドライブは2台のエントリーを認められた。この理由は、2台目のエントリーがJOTA(ジオタ)のギブソンであることだ。2台のエントリーを望むGドライブと、ギブソンに近い存在で、グリーブスと共に、昨年大活躍しながら、無冠に終わったJOTAの両方を受け入れるため、ACOが知恵を絞った結果だろう。

 残念ながら、日本からエントリーしたプライベートチームは選考から漏れた。名前は公表しないが、このレーシングチームは、日本の2つの老舗のレーシングチームがジョイントするカタチのエントリーだったが、LMPでなく、多数がエントリーしたGTクラスであること、そして、WECをはじめとするシリーズに参加していないことが、選考から漏れた理由と考えられている。
 WECへは、ラルブルコンペティションのコルベットで山岸大がエントリーを実現した。ルマンへは台湾のAAIやマレーシアのクリアウォーター、そして国籍はスイスだがAsianLMSでタイトルを勝ち取ったレースパフォーマンスがルマンへのエントリーを実現したため、他にも2~3人の日本人ドライバーが走ることとなりそうだ。

 33台にエントリーを減らしたWECと比べて、ELMSはエントリーを大きく増やした。シーズンエントリーで44台と言うことは、数の上だけでもSuperGTを上回る。しかも、トップカテゴリーのLMP2は、何と15台もエントリーを集めた。WECのLMP2のエントリーが、たった10台であることを見ても、今年のELMSの盛況ぶりが判る。既にトヨタは、平川亮がELMSのLMP2クラスへ参加することを公表したが、現在のところ、チームは明かではない。

2016年ルマン24時間エントリーリスト

2016年WECエントリーリスト

2016年ELMSエントリーリスト

1月26日
●2016年ルマン24時間の15台の招待リスト決定 日本のプライベートチームもエントリー申請!

Photo:Sports-Car Racing

 先週末セパンでAsianLMS最終戦が終了したことによって、2016年のルマン24時間レースの招待チームが決定した。中野信冶が乗り組んだレースパフォーマンスもAsianLMSのLMP2チャンピオンを獲得したため、ルマンの招待券を手に入れた。日本と関わりの深いレーシングチームとしては、他にも、ELMSのLMP2チャンピオンを獲得したグリーブス、さらに今年スーパー耐久シリーズへの参加を計画しているクリアウォーターレーシングが、AsianLMSのGTチャンピオンを獲得し、LM-GTEの招待券を獲得した。先週末(22日)、ルマン24時間レースのエントリー申請は締め切られていることから、今後本格的なエントリー選考作業が行われる。また、日本の1つのプライベートチームも、2016年のルマン24時間レースへエントリー申請を行った。トヨタのワークスチームを除くと唯一の日本チームだ。ACOが受け入れることを期待したい。
 最終的な2016年のルマン24時間レースのエントリーリストは、2月5日パリで発表される。

■2016年ルマン24時間レース招待チーム
ポルシェチーム:2015ルマン24時間LMP1優勝*LM P1カテゴリーへ1台
KCMG:2015ルマン24時間LMP2優勝*LM P2カテゴリーへ1台
コルベットレーシング:2015ルマン24時間LM-GTE Pro優勝*LM-GTE Proカテゴリーへ1台
SMPレーシング:2015ルマン24時間LM-GTE Am優勝*LM-GTE Amカテゴリーへ1台
グリーブスモータースポーツ:2015ELMS LMP2チャンピオン*LMP2カテゴリーへ1台
フォーミュラレーシング:2015ELMS LM-GTEチャンピオン*LM-GTE(ProまたはAm)カテゴリーへ1台
BMWチームMarcVDS:2015ELMS LM-GTE2位*LM-GTE(ProまたはAm)カテゴリーへ1台
TDS レーシング:2015ELMS GTCチヤンピオン*LM-GTE Amカテゴリーへ1台
チームLNT:2015ELMS LMP3チャンピオン*LMP2カテゴリーへ1台
Michael Shankレーシング:Tudor United SportsCar Championshipによる選出*LM P2カテゴリーへ1台
スクーデリア コルサ:Tudor United SportsCar Championshipによる選出*LM GTE Amカテゴリーへ1台
レースパフォーマンス:2015AsianLMS LMP2チャンピオン*LMP2カテゴリーへ1台
クリアウォーターレーシング:2015AsianLMS GTチャンピオン*LM-GTE(ProまたはAm)カテゴリーへ1台
DCレーシング:2015AsianLMS LMP3チャンピオン*LMP2またはLM-GTE Amカテゴリーへ1台

1月13日
●GTAは、12月に開催されるセパン12時間レースの際、SROと共に仕事を行うことを約束

Photo:Sports-Car Racing

 今年SROは、世界中でGT3カーを中心とした耐久レースのシリーズ インターナショナルGTチャレンジを開催する。しかし、現在人気の耐久レースは、ニュルブルクリンクの様に、各々のレース自身が大きなステイタスを待ち、それらのレースを中心として成立していることから、シリーズ化は難しかった様で、今年、取りあえず4つのレースによってシリーズをスタートする。

 昨日GTAとSROは、12月にセパンで開催されるセパン12時間レースの際、共に仕事を行うことを約束した。非常に微妙な表現だが、従来GTAは、SuperGTに参加するチームに対して、他のレースシリーズへの参加を禁止していた。そのため、2年前富士で行われたAsianLMSの際、SuperGTのポイントを与えることを条件としてGT300カーの参加を許した。

 昨日行われた発表では、セパン12時間の際GTAとSROが一緒に仕事を行うとしか明らかとされなかったが、ステファン・ラテルは、SuperGTのGT300カーと表現してSuperGTのレーシングチームの参加をアピールしていることから、GTAが、セパン12時間の際、SuperGTのレーシングチームの参加を容認したものと考えられる。タイヤについては、現在のところ不明。

2016インターナショナル GT チャレンジ
Rd.1 2月6-7日 リキモリ バサースト12時間(AUS)
Rd.2 3月5-6日 ブランパイン ジ・アメリカ12時間(USA)
Rd.3 7月28~31日 トタル スパ24時間(B)
Rd.4 12月10-11日 セパン12時間(MAL)

1月12日
●デイトナ24時間テスト開始 2016年北アメリカで走るポルシェ991GT3Rは5台

Photo:Porsche Cars north America

 10日からデイトナスピードウェイにおいて、30-31日に開催されるデイトナ24時間レースのテストディが開催された。今年のデイトナ24時間は、ポルシェがGT-LMクラスに991RSR GTEカーを走らせるだけでなく、BMWもRLRによって新しいM6GTEカーを走らせる。そして、最も注目されるのは、新しい991GT3Rが世界で初めてレースにデビューすることだ。
 今年北アメリカで5台の991GT3Rが走る。既に昨年末5台すべてが顧客にデリバリーされており、デイトナテストにも5台の991GT3Rが登場した。今年多くのGT3カーがモデルチェンジしたため、ライバル達より約800万円高価な991GT3Rは、少々販売に苦戦していることが伝えられている。デイトナテストは、500馬力の4リットルフラット6を搭載する991GT3Rにとって、最初の大々的なテストであるだけでなく、最初の一般的なお披露目の場所となった。

1月12日
●GTアジアが新しい2016年カレンダー発表 やはりマカオGPは無し

Photo:Sports-Car Racing

 今日GTアジアは、新しいカレンダーを発表した。予想通りホンコンスーパーカークラブが関わるマカオGPはなく、従来セパンで行われていたテストディも、開幕戦が行われる韓国で、開幕戦の3日前に実施することが決まった。日本で予定されていた岡山と富士の2つのイベントのカレンダーは、昨年末に公表された通り。今日発表されたのはGTアジアだけで、TC3等AFOSの他のレースシリーズについては発表されなかった。これらのシリーズについては、追って発表される見込み。

テストディ 5月9-10日 コリアインターナショナルサーキット(KOR)
Rd.1/2 5月13~15日 コリアインターナショナルサーキット*AFOS(KOR)
Rd3/4 5月10~12日 チャンインターナショナルサーキット*AFOS(TH)
Rd.5/6 7月1~3日 岡山国際サーキット*GTアジア(JPN)
Rd.7/8 7月15~17日 富士国際スピードウェイ*Super Formula(JPN)
Rd.9/10 9月2~4日 上海国際サーキット*TBC(CHN)
Rd.11/12 10月21~24日 ゼァージァン国際サーキット*AFOS(CHN)

1月11日
●ACOがセパンでLMP3とGTカップカーによるAsian LeMans Sprint Cup開催 エントリーは何処から?

Photo:Sports-Car Racing

 昨年ACOは、中国のS2Mを排除して、ACO自身によるアジアのルマンシリーズ開催を決心した。仕切り直された新制AsianLMSは、ヨーロッパや日本がシーズンオフの時期に開催して、ヨーロッパと日本のエントラントを勧誘するため、冬のシリーズとして行われている。現在でも、シリーズは行われており、今月末セパンで最終戦が行われる。

 アジア地域でたくさんのGTレースカーやプロフェッショナルなレーシングチームは日本に存在する。しかし、10月に富士で行われた開幕戦を見ても明らかな様に、AsianLMSは日本からのエントリー獲得に失敗したため、せっかくS2Mを排除したにも関わらず、新制AsianLMSは非常に寂しいエントリーで行われている。もちろん、大々的な振興策が求められる状況だが、ACOは、まったく違う、5月から9月にセパンだけで行われるスプリントレースシリーズの実施を発表した。

 金曜日にACOが発表した新しいシリーズは、セパンだけで3イベント開催される。この時期、既にヨーロッパや日本ではレースシーズン真っ盛りであることから、ヨーロッパや日本からの参加は不可能だ。最初、当方は、現在ホンコンスーパーカークラブとGTアジアが、困った関係にあることから、ホンコンスーパーカークラブとGTアジアの話し合いが完全に決裂することを前提として、GTアジアが日本へ遠征している間、ホンコンスーパーカークラブの参加を見込んだシリーズと思った。

 しかし、ACOの発表をよく見ると、GTアジアの中心であるGT3カーは対象としていない。ACOの新しいシリーズは、LMP3カー、CNカー(新しいカーボンモノコックの)、そしてGTカップカーだけのレースだ。LMP3カーは知っているだろうが、CNカーとは、かつてジョン・マンゴレッティのISRS(後のFIA SCC)で走っていた小さなプロトタイプスポーツカーのことで、現在でも新しいルールが作られており、最新のルールはカーボンファイバーコンポジットモノコックの使用も可能だ。しかし、日本国内のJAF・F4同様、完全にカーボンファイバーコンポジットモノコックに切り替えられた訳でなく、イタリヤやスペインで行われているCNカーのレースは、アルミモノコックとカーボンファイバーコンポジットモノコックの2種類のCNカーが走っている。
 そして、GTカップカーとは、ポルシェカレラカップカーやマセラッティトロフィオ、ランボルギーニガヤルド、アウディR8、フェラーリチャレンジカーのことで、人気のGT3カーは含まれない。
 つまり、セパンでスポーツ走行を楽しんでいる様な、GTカップカーを勧誘するためのイベントと考えられている。

 現在アジア地域には、3台から4台のLMP3カーが存在する。CNカーも2014年ACOの勧めによってフランク・ユーが導入していることから、手放してないのであれば2台が存在する。これら総てが登場するのであれば、5台から6台のプロトタイプスポーツカーが走ることとなるが、カレンダーを見ても判る通り、ヨーロッパと日本のレースとバッティングしていることから、参加出来るのは、ヨーロッパや日本と関係ない、レーシングチームに限られる。エントリーが何処から来るのか?少々不明だ。

Photo:Sports-Car Racing

Rd.1 5月27~29日
Rd.2 8月5~7日
Rd.3 9月2~4日

1月9日
●GTアジアは何処へ行く

Photo:Sports-Car Racing

 東アジア全域を転戦する唯一のレースシリーズはGTアジアだ。GTアジアは、約10年前、マカオGPと深く関わるホンコンスーパーカークラブのミリオネラ達が、彼ら自身が所有するスーパースポーツカーによるGTレースシリーズを望んだことからスタートしている。ホンコンスーパーカークラブを率いるポール・ヤオは、当時東アジアで存在が認められるようになったモータースポーツアジア(*現在の名称)のデビッド・ソネンシャーに相談した。デビッド・ソネンシャーは、当時東南アジアで唯一の最先端のサーキットであったマレーシアのセパンに拠点を構えていた。香港やマカオにパーマネントサーキットは存在しないことから、その頃でさえ、ホンコンスーパーカークラブの面々は、ほとんどの場合、自分のスーパースポーツカーをマレーシアまで運んで、セパンで練習走行を行っていた。そこで、セパンを拠点として、セパンにGTレースカーや機材を保管して、セパンから東アジア全域へ転戦するGTレースシリーズが作られた。それがGTアジアだった。

 東アジア全域と言っても、当時セパンを除くと東アジアで最先端のサーキットは日本にしかなかった。最終戦は彼らの地元で行われるマカオGPだったが、デビッド・ソネンシャーは、シリーズの半分を日本で行うことを構想した。また、ホンコンスーパーカークラブのメンバーの中に、東アジアの財界の大物達が多数を存在した。そこで、年間エントリー代金を約200万円(当時)として、その中にセパンから日本への往復の輸送代金を含めた、非常に魅力的なプランも設定した。この驚異的な低価格は、日本で3イベント行うと想定して、儲け無しで設定されたものだった。スポンサー無しではあり得ない料金プランだった。

Photo:Sports-Car Racing

最初GTアジアのエントリーは、もちろんホンコンスーパーカークラブのジョントルマン達だった。しかし、毎年、最新のGT3カーが登場したことから、直ぐにGT3カーを作るメーカーが注目して、支援を行った。
 第一、GTアジアがスタートした時、リーマンショック前だったこともあって、FIA自身、アジアの魅力的なマーケットに参入する切っ掛けとして、大々的にGTアジアを支援したため、スムーズにスタートしていた。

 パーマネントサーキットが存在しない香港と違って、セパンが存在するマレーシアでは、マレーシア、シンガポール、オーストラリアのミリオネラ達によるモータースポーツの文化が育っていた。もちろん、日本ほど大規模ではないが、GTアジアが成立すると、直ぐにマレーシアを中心とする地域の人々も、次々とGTアジアへ参加した。現在ではエントリーの1/3を占める程に増えている。続けて、日本のジェントルマン達がGTアジアへ注目した。近年GTアジアの日本シリーズは2~3イベント行われているが、これらの日本のイベントへは、通常のメンバーに加えて、日本から10台以上のエントリーが加わる。年間を通じてGTアジアへ参加する日本のレーシングチームや日本人ドライバーも増えている。

 ホンコンスーパーカークラブを率いるポール・ヤオは、ミリオネラであっても、決して札束で貧乏人のほを叩くような人物ではない。自ら、パドックで交通整理を行っている様な人物だ。当方は,最初ポール・ヤオをコース管理のおっさんと勘違いした程だ。
 デビッド・ソネンシャーも、旧植民地に居る、何もしないイギリス人ではない。当方が知る限り非常に有能で、次々とプランを提案して、自分自身で香港や日本へやって来て、話し合いを行っている。昨年末TC3(2リットルツーリングカー)のアジアシリーズを創設する際、デビッド・ソネンシャーは、0泊3日で日本まで交渉に来ていた程だ。

 ところが、有能であることもあって、もれまでもポール・ヤオとデビッド・ソネンシャーは、しばしば対立することもあった。昨年12月初めタイで、2人の対立は決定的となった。そして、ホンコンスーパーカークラブとモータースポーツアジアの協力は2015年限りとして、2016年から、それぞれ別の道を歩むと決心した。
 しかし、既に、2016年のカレンダー申請は終了している。そのため、その後2人は、正式には何も発表していない。
 もし、2016年、少なくとも、表面上は従来通りのままGTアジアを開催したとしても、2017年は不可能だろう。

 GTアジアが、非常に困った状況に陥ったことは間違いない。今後2人の関係が修復するか・あるいは、2人は大人の対応をするかもしれないが、この状況は、日本から出ることが出来ないレースシリーズにとって、大きなチャンスを与えることとなった。もし、日本のレースシリーズが、デビッド・ソネンシャーと交渉して合意を得ることが出来るのであれば、日本を飛び出すことが出来なかったレースシリーズは、直ぐにでも、東アジア全域で大々的なレースシリーズを開催することが可能だ。また、ポール・ヤオと交渉して、日本でホンコンスーパーカークラブのイベントを開催するのであれば、マカオGPのレースウイークの中で、日本のレースシリーズを実施することも不可能ではない。
 もちろん、これらの提案と交渉を行う能力が、日本のレースシリーズには求められるが、今最も注目されるニュースだ。

*Sports-Car Racing Vol.21参照