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4月18日
■Special
Edition LMS Rd1 Monza Race
Report
レギュレーションの正当性に疑問を投じるレース

Photo:Sports-Car Racing
現在のACOレギュレーションは、メーカーが参加し易いよう、メーカーと同じ目線で構想されている。ヨーロッパのメーカーにとって最大の関心事とは、生産台数の過半数を占めるディーゼルエンジンによって、ルマンを制することだ。そのため、ACOは、ガソリンエンジンと比べると、大幅に優遇したレギュレーションをディーゼルエンジンに対して与えている。
LMP1の場合、ガソリンエンジンがせいぜい640馬力に過ぎないのに対して、ディーゼルエンジンは、理論上850馬力を許容するリストリクターの使用が許されている。しかし、現在の技術では、1気筒あたり60馬力程度が限界と考えられているため、最大気筒数の12気筒であっても720馬力程度と考えられている。
つまり、最良のディーゼルエンジンであれば、総てのガソリンエンジンに対して80馬力のアドバンテージを得ることが可能だ。
*注:Sports-Car Racing
Vol.16とVol.17を参照してください
3月末にポールリカールで行われた公式テストでも、プジョーの908クーペに搭載される5.5リットル100度V12ディーゼルターボエンジンは、とても700馬力も発生しているようには見受けられなかった。この考えは、2007年LMS開幕戦モンツァのレースウィークが始まっても変わらなかった。
ところが、土曜日の午後に行われた予選になると、2台のプジョー908は、それまでとは、まったく別のクルマのように、圧倒的な加速力で童夢やペスカロロを引き離した。最終コーナーのパラボリカでプジョーの真後ろに付いたヤン・ラマースは、ホームストレートに入ると同時にあっという間に引き離されてしまった。
これだけ圧倒的なパワーを持ちながら、これまで披露したなかった理由は、信頼性に問題があると考えられたため、決勝レースでは、ペスカロロや童夢にもチャンスがあると考えられていた。
決勝レースがスタートされると、2台のプジョー908クーペが、競り合いながら第1シケインに飛び込んできた。写真でも明かなように、2台の908クーペはサイドbyサイドで第1シケインをクリアしていった。
その後ろは団子状態で、ステファン・モカのシュロースローラ、No.16ペスカロロ、(去年と見違える速さの)2台のクラージュ、ヤン・ラマースの童夢S101.5、No.17ペスカロロが、激しい先陣争いを展開している。
次第にシュロースローラとジャン・マルク・グーノンのクラージュが集団から抜け出して3位争いを展開して、5位にNo.16ペスカロロ、No.12クラージュ、RfH童夢S101.5、No.17ペスカロロが6位争いを繰り広げた。ペースは童夢やペスカロロの方が明かに速いが、ストレートスピードの速さでクラージュが童夢を抑えている。
P2クラスはASMローラが一歩抜けだしている。GT1クラスは、ポールポジションからスタートしたORECAサリーンを抜いてリュック・アルファンのコルベットがトップで第1シケインに進入してきた。しかし、背後からORECAサリーンが激しく攻め立てているため、順位が入れ替わる可能性も高い。
GT2クラスは、ビッグレースで初めてポールポジションを獲得したポルシェ997GT3RSRが先頭を走っているが、トップ2台だけがポルシェで、その背後には4台のフェラーリF430GT2が追走している。
18周目ラルブルコンペティションのNo.51アストンマーティンの左リアホイールが脱落してしまった。コース上にマシンがストップしたため、このアクシデントをきっかけとして、コース上は大混乱に陥った。そのため21周から25周にかけてセイフティカーがコースインした。
ところが、ピットロードが閉鎖されなかったため、次々とピットに入るクルマが続出して、セイフティカーはトップのプジョーの前に出ることが出来なかった。そのため、2台のプジョーが、まるまる1周得することとなった。
レースが再開されると、2台のプジョーは、ガソリンエンジンカーより、1周2秒も速いラップタイムで引き離しにかかった。

Photo:Sports-Car
Racing
その頃、ヤン・ラマースの童夢は、やっとクラージュを抜くことに成功した。続いて、長い間競り合っていたシュロースローラとグーノンのクラージュが第1シケインで絡んでしまい、共にスピンしてしまった。その横をNo.16ペスカロロとラマースのRfH童夢がすり抜けていった。
このアクシデントは、クラージュがローラに追突するように見えた。しかし、ステファン・モカとジャン・マルク・グーノンは、それ以前から何度も接触しており、互いのラフプレイの結果だったようだ。このアクシデントをきっかけとして、シュロースローラは脱落してしまった。

Photo:Sports-Car
Racing
セイフティカーランが長かったため、走行を続けたチームは、最初のスティントを多めに周回している。しかし、童夢やペスカロロのガソリンエンジンカーとまったく同じ30周目にプジョーもピットに入ってきた。
リストリクターは大きいままでも、10%大きな熱価を理由として、今年ディーゼルエンジンカーは10%小さい81リットルの燃料タンクを義務つけられている。そのため、もし、プジョーが童夢やペスカロロより先にピットに入るのであれば、ガソリンエンジンカーにもチャンスがあると考えられていた。残念ながら、その期待は消えることとなった。
最初のピットイン直後、RfH童夢は、直ぐにピットに入ってきた。ラマースはスローパンクチャーを訴えているが、原因はタイヤかすを拾ったことのようで、なかなかペースを上げられない。
そうこうしている内に、ラマースはGT2クラスのフェラーリと接触して、ステアリングのナックルアームを壊してしまった。このアクシデントによって、RfH童夢は4位から脱落することとなった。
圧倒的と思われたプジョーもピット作業のミスが多く、ピット作業が長びく状況となっている。どういう訳か、左側のドアの閉め忘れを繰り返している。
また、No.8は、心配されたトランスミッションのトラブルによって、ピットに張り付くこととなった。どうやら、ミッション本体ではなく、パドルシフトを含むシフトリンケージの問題らしく、レースに復帰することに成功した。

Photo:Sports-Car
Racing
そのため、淡々と走り続けたNo.16ペスカロロが2位に上がって、それをNo.8プジョーが、1周2秒ずつ追い上げる展開となった。
60才を過ぎ、昨年秋身体を壊したアンリ・ペスカロロだったが、耐火スーツに身を包んで、最後までサインガードでチームを指揮を取り続けた。そして、2位のままNo.16ペスカロロは、フィニッシュすることに成功した。
しかし、ペスカロロチームには笑顔はなかった。
ASMが脱落した結果、P2はホルガローラが優勝した。金曜日ピット作業のミスで4人のメカニックが火傷を負ったリュック・アルファンは、参加そのものが危ぶまれていたが、素晴らしい速さで、ORECAが脱落した後GT1クラスを独走した。
GT2クラスは、またしてもポルシェは勝てなかった。序盤の混乱が治まると、GTCフェラーリがトップを奪って、中盤以降3台のフェラーリがトップ争いを繰り広げて、最終ラップまで同一周回の闘いを展開していた。
80馬力もアドバンテージがあって、しかも、それを潤沢な予算を持つファクトリーチームが使うのであれば、走る前から結果は明かだろう。
とても公正なルールとは思えない。
このような変則ルールが許されるのは、ディーゼルエンジンのチャレンジャーが姿を現す、最初の段階だけであって、2年目にも、このような不公平なレギュレーションが運用されているのは、明かに間違っている。
ガソリンエンジンカーの多くが決勝レースにポイントを置いたのに対して、真っ向からプジョーにポールポジション争いを挑んだシュロースローラ、そして、不公平と判っていながら、苦しいレースを行ったペスカロロの努力を称えたい。
1 P1@No.7
Team Peugeot Total GENE Marc/MINASSIAN Nicolas Peugeot
908 Hdi FAP 173laps
2 P1 No.16 Pescarolo Sport COLLARD
Emmanuel/BOULLIONJean-Christophe Pescarolo Judd
172Laps
3 P1 No.8 Team Peugeot Total LAMY Pedro/SARRAZIN
Stephane Peugeot 908 Hdi FAP 171Laps
4 P1 No.17 Pescarolo
Sport PRIMAT Harold/TINSEAU Christophe Pescarolo Judd
170Laps
5 P1 No.13 Courage Competition GOUNON
Jean-Marc/MOREAU Guillaume Courage LC70 AER 168Laps
6 P2@No.27 Horag Racing LIENHARD Fredy/THEYS
Didier/VAN DE POELE Eric Lola B05/40 Judd 165Laps
7 P1 No.18
Rollcentre Racing BARBOSA Joao/KEEN Phil/HALL Stuart
Pescarolo Judd 163Laps
8 P2 No.25 RML ERDOS Thomas/NEWTON
Mike MG Lola EX264 AER 161Laps
9 GT1@No.72 Alphand Aventures ALPHAND
Luc/POLICAND Jerome/GOUESLARD Patrice Corvette C6.R
160Laps
10 GT1 No.50 Aston Martin Larbre BOUCHUT
Christophe/GARDEL Gabriel/GOLLIN Fabrizio Aston Martin DBR9
159Laps
11 GT1 No.73 Alphand Aventures BLANCHEMAIN
Jean-Luc/DUMEZ Sebastien/VOSSE Vincent Corvette C5-R
159Laps +51.629
12 GT1 No.59 Team Modena GARCIA
Antonio/HALLIDAY Liz Aston Martin DBR9
158Laps
13 GT1 No.61 Racing Box PERAZZINI Pier
Giuseppe/CIOCI Marco/TAVANO Salvatore Saleen S7-R
155Laps
14 GT2@No.97 GPC Sport
DE SIMONE Fabrizio/HERNANDEZ Sergio/BONETTI Alessandro Ferrari
F430 GT2 154Laps
15 GT2 No.78 Scuderia Villorba CAFFI
Alex/ZARDO Denny Ferrari F430 GT2
154Laps +19.258
16 GT2 No.96 Virgo Motorsport BELL
Robert/SIMONSEN Allan Ferrari F430 GT2
154Laps +1:03.586
17 GT2 No.81 Team LNT KIMBER-SMITH
Tom/WATTS Danny Panoz Esperante GTLM
153Laps
18 GT2 No.83 GPC Sport DRUDI Luca/ROSA
Gabrio/MOWLEM Johnny Ferrari F430 GT 2 152Laps
19 GT2 No.76 Imsa
Performance NARAC Raymond/LIETZ Richard Porsche 997 GT3
RSR 152Laps +23.551
20 GT2 No.94 Speedy Racing Team
BELICCHI Andrea/CHIESA Andrea/KANE Jonny Spyker C8 Spyder GT2R
151Laps
21 GT2 No.77 Felbermayr Proton LIEB Marc/POMPIDOU
Xavier Porsche 997 GT3 RSR 151Laps +7.816
22 P1 No.12
Courage Competition FREI Alexander/COCHET Jonathan
Courage LC70 AER 150Laps
23 P2 No.31 Binnie
Motorsports BINNIE Bill/TIMPANY Allen/BUNCOMBE Chris Lola
B05/40 Zytek 150Laps +13.320
24 GT2 No.92 Thierry Perrier
HESNAULT Philippe/SMITH Nigel/BELTOISE Anthony Porsche 997 GT3
RSR 149Laps
25 P1 No.14 Racing For Holland LAMMERS
Jan/HART David/BLEEKEMOLEN Jeroen Dome S101.5 Judd
146Laps
26 GT2 No.90 Farnbacher Racing WERNER Dirck/EHRET
Pierre/NIELSEN Lars Erik Porsche 997 GT3 RSR
144Laps
27 P2 No.35 Saulnier Racing NICOLET Jacques/FILHOL
Alain/JOUANNY Bruce Courage LC75 AER
143Laps
28 GT2 No.79 Felbermayr Proton FELBERMAYR Horst
Sr/RIED Gerold/COLLIN Philip Porsche 996 GT3 RSR
143Laps +14.855
29 P2 No.44 Kruse Motorsport BURGESS
Tony/DE POURTALES Jean/SIEDLER Norbert Pescarolo Judd
139Laps
30 P1 No.15 Charouz Racing CHAROUZ Jan/MUCKE
Stefan Lola B07/17 Judd 138Laps
31 GT2 No.84 Chad Peninsula
Panoz HARTSHORNE John/McINERMEY Sean/McINERNEY Michael
Panoz Esperante GTLM 134Laps
32 GT2 No.99 JMB Racing BASSO
Maurice/McCORMICK Bo/DAOUDI Stephane Ferrari F430 GT2
133Laps
33 P2 No.20 Pierre Bruneau ROSTAN Marc/BRUNEAU
Pierre/PULLAN Simon Pilbeam MP93 Judd
133Laps +52:04.160
**以上完走
34 GT2 No.85 Spyker
Squadron KOX Peter/JANIS Jarek Spyker C8 Spyder GT2R
125Laps
35 P1 No.19 Chamberlain Synergy EVANS
Gareth/BERRIDGE Bob/OWEN Peter Lola B06/10 AER
123Laps
36 GT2 No.88 Felbermayr Proton RIED
Christian/FELBERMAYR Horst Jr/GRUBER Thomas Porsche 997 GT3
RSR 94Laps
37 P2 No.40 Quifel ASM Team AMARAL
Miguel/DE CASTRO Miguel Angel/BURGENO Angel Lola B05/40
AER 90Laps
38 P1 No.3 Scuderia Lavaggi LAVAGGI
Giovanni/PUGLISI Marcello Lavaggi LS01 Ford
57Laps
39 GT1 No.55 Team Oreca ORTELLI Stephane/AYARI
Soheil Saleen S7-R LMGT1 52Laps
40 P2 No.45 Embassy Racing
HUGHES Warren/CUNNINGHAM Neil Radical SR9 Judd
49Laps
41 GT2 No.95 James Watt Automotive DANIELS Paul/COX
Dave/CAMATIAS Joel Porsche 997 GT3 RSR
45Laps
42 GT2 No.82 Team LNT LASSERRE Lucas/DEAN Richard
Panoz Esperante GTLM 38Laps
43 GT2 No.89 Markland Racing
THIIM Kurt/THYRRING Thorkild/SORENSEN Henrik Moller Corvette
C6 Z06 29Laps
44 GT2 No.98 Ice Pol Racing Team
LAMBERT Yves/LEFORT Christian/BOUVY Frederic Ferrari F430 GT2
25Laps
45 GT1 No.51 Aston Martin Larbre FISKEN
Gregor/ZACCHIA Steve/FRANCHI Gregory Aston Martin DBR9
17Laps
46 P2 No.21 Bruichladdich Radical GREAVES
Tim/MOSELEY Stuart Radical SR9 AER 3Laps
4月4日
■Special Edition
なぜ、アウディはALMS参戦継続を決定したのか?

Photo:AUDI AG
◆アウディは負ける予定だった
2007年のACOレギュレーションは、ディーゼルエンジンカーに対して10%少ない81リットルの燃料タンクを義務付けている。この理由は、ガソリンと比べてディーゼルの方が10%大きなエネルギーを持っているためだった。その結果、アウディとプジョーは81リットルタンクを使用することとなった。
実際はどうなのか?と言うと、昨年のルマンで、アウディR10は、1スティントあたり、トップ争いを行ったペスカロロや童夢より1周程度多い13〜14周走行している。
ACOが10%小さい燃料タンクを義務付けた理由は、周回数を整えることであるのが判るだろう。
そのため、2007年のルマンは、燃費よりも、本当の速さと信頼性がポイントとなると思われていた。
2006年までのP2クラスは、理論上P1カーと同じ速さで走ることも可能だった。しかし、P1とP2の格付けを明確にするため、ACOは2007年のレギュレーションで、P2カーのリストリクターを5%小さくすること決定していた。つまり、もう少し頑張れば、P1を破れるかもしれなかったP2カーは、2007年のスポーツカーレースで、クラス優勝争いを行うことだけが義務付けられていた。
繁栄を極めるヨーロッパと違って、北アメリカのALMSは、P1クラスは、ほとんどアウディのワークスチームだけで、P2クラスにポルシェやアキュラの有力エントラントが集中してしまった。
そこで、ALMSを運営するIMSAは、P2カーに対して、昨年と同じ大きさのリストリクターを与えて、P1クラスのアウディと総合優勝争いをさせようと目論んだ。
ところが、アウディのディゼルエンジンカーは、完全に2007年のレギュレーションが適用されて、10%小さい81リットルの燃料タンクが義務付けられたままだった。
ルマンのサルテサーキットは、1周13.65kmであるから、通常のサーキットで換算すると2.7周程度に相当する。ALMS開幕戦が行われたセブリングの場合、1周5.92kmであるから、サルテサーキットのセブリングの2.3倍の長さだ。大雑把に計算すると、アウディR10は、ペスカロロや童夢よりも、セブリングで6周余分に走行可能と考えられる。
ところが、ペスカロロや童夢は、アウディと同じ車重のP1カーだ。
P2カーは、出力が約150馬力小さく、車重が150kg軽いため、同じ燃料タンクのガソリンエンジンのP1カーよりも、サルテサーキットで1〜2周、セブリングで8〜9周程度多く走ることが可能だった。
アウディのディーゼルエンジンカーに当てはめると、昨年までの状態であっても、セブリングで2周程度P2カーより少ない周回数しか走れない。
2007年に10%少ない81リットルの燃料タンクを義務付けられた場合、アウディのディーゼンルエンジンカーは、P2カーよりも5周程度早くピットに入らなければならない。
速さがほとんの同じで、5周も燃費に差があるのであれば、勝つ可能性が大きく阻害されてしまう。
第一、格下のP2カーにやっと勝つか、場合によっては負けるのであれば、イメージダウンとなる。
2月にIMSAがレギュレーション変更をアナウンスした時、直ぐにアウディスポーツのウルフガング・ウルリッヒが、ALMSからの撤退を含めた反対声明を公表するに至った理由はここにあった。
◆IMSAは眠っていた虎を起こしてしまった
反対声明を発表する一方で、アウディスポーツでは慎重にシュミレーションが行われていた。その後、R8時代の終盤のように、さらに一歩進めたギリギリのシュミレーションが行われた。
登場したばかりのR10は、重く巨大な5.5リットル90度V12ディーゼルターボエンジンを搭載することを優先して開発されたことから、より速く、より高効率を突き詰めたデザインではなかった。
R10を走らせるレーシングチームも、最良の効率を追求するよりも、最新技術の満干全席であるR10を確実に走らせることを優先してレースオペレーションを行っていた。
2006年の場合、P1クラスのファクトリーチームはアウディだけでったことから、大きなアドバンテージがあると判断されたため、このような状況が許されたのだろう。
しかし、慎重なシュミレーションの結果、まだ、やり残している部分を数多く見出したと言う。
そうして、しばらく行われなかった突き詰めた開発とレースオペレーションの実施が決定された。
最初のレースとなったALMS開幕戦セブリング12時間に向けて、アウディは暑く湿度の高いセブリング用のボディとエンジンを用意した。エンジンの詳しい内容は公表されなかったが、より高効率を目指して、突き詰めた開発が施されていたのだろう。ボディの方は、本来の2007年バージョンと違って、2006年バージョンと同じように、ラジエターを通過した後の熱い空気を逃がすため、サイドボディに大きなスリットが数多く設けられていた。
決勝レースでは、スタートからしばらくの間、アウディのディーゼルエンジンカーは、ポルシェやアキュラのP2カーより5周も早くピットに入った。このまま互いにトラブルが無いのであれば、何時間か後には、ポルシェのP2カーがアウディのディーゼルエンジンカーをばん回するハズだった。
ところが、ポルシェは電圧の不具合によって、次々とコンピューターにトラブルを抱えて、パドルシフトシステムが正常に作動しない状況に陥ってしまった。
その結果、アウディはアキュラのP2カーと兎と亀の闘いを繰り広げたが、アキュラはポルシェほどの速さでなかったため、アウディのディーゼルエンジンカーが優勝した。
セブリング12時間によって、アウディは様々なデータを獲得した。特にエンジンは、より良い効率で運転することが可能と判断された。しかし、No.1のR10がスターターモーターを壊して、交換するためピットに張り付いていた。その原因の追及を優先すべきとの意見もあったようだ。
詳しい説明は無いものの、たった5,000回転で運転されるディーゼルエンジンであるため、その原因が振動とは考え難く、常識的には熱が原因と判断すべきだろう。
しかし、より高効率で運転するのであれば、特にディーゼルエンジンは、大きな熱を発生すると考えるべきで、その熱を逃がさないことが高効率のポイントの1つと判断しても間違いないだろう。
判断が分かれるところだろうが、3月27日アウディスポーツは、ALMS参戦継続を決定した。
そして先週末、Stピータースバーグで行われたストリートレースへR10は挑戦した。予想通り、ポルシェのP2カーの方が、アウディのディーセルエンジンカーより速く走った。
アウディスポーツは、マルコ・ヴェルナーとエマニュエレ・ピロの乗るNo.2によって、最良の燃費を追求する計画だった。逆にアラン・マクニッシュとリナンド・カペロが乗るNo.1は、徹底的に速さを追求していた。少しでも大きなパワーを絞り出し、ドライバーは常に全開で走行することが求められた。
決勝レースになると、アラン・マクニッシュは、スタートでポルシェのP2カーと接触しながら抜いてしまい、ペナルティを課せられてしまうが、ペナルティのピットストップからレースに復帰すると、ポルシェを上回るペースで走り回って、レースリーダーに返り咲いた。
もう1台のマルコ・ヴェルナーの乗り組んだNo.2は、最良の燃費を追求すると共に、燃料タンクの最後の一滴の燃料まで使って走行していた。
アウディスポーツにとっても予想外だったかもしれないが、ストリートレース故彼方此方でアクシデントが発生したため、ライバルのポルシェとアキュラのP2カーは、次々と予定よりも早くピットに入ってしまった。そのため、最後の一滴の燃料を使うことを目的として、ピットインを遅らせたNo.2
R10が一時的にレースリーダーとなってしまった。
No.2 R10が最後の一滴の燃料を使い切ってピットに入ると、代わってレースリーダーとなったのは、全開で走り続けるNo.1
R10だった。
どうやら、IMSAは、眠っていた虎を起こしてしまったようだ。

Photo:AUDI AG
4月1日
■Special Edition
2007 ALMS Rd2 St Petersburg Race Report アウディがストリートレースでポルシェに勝った

Photo:AUDI AG
明らかに150kg軽いP2カーの方が、速く走ることが可能だった。にも関わらず、アウディはP2カーを破ってストリートレースを制覇した。
◆スタートでアウディとポルシェが脱落
決勝レースは午後5時から行われた。
抜き難く、逆に前に出てしまえば抜かれ難いストリートコースの性格を考えると、スタートで前に出てしまうことが、有利でレースを進める条件となる。
2列目3番グリッドからスタートしたアラン・マクニッシュは、このことを最優先にしてスタートしようとしていた。逆にポールポジションのロマ・デュマは、後ろのアラン・マクニッシュのアウディに最大の注意をしながら、スタートを迎えようとしていた。
午後5時9分グリーンフラッグが振られた。ロマ・デュマのNo.7ペンスキーポルシェを先頭にして、綺麗にローリングスタートが切られると思われた。しかし、ロマ・デュマとアラン・マクニッシュは、巧妙に駆け引きを行っていた。巧妙な駆け引きの末スターティングラインを通過する前に、112kgmの大トルクを活かしてアラン・マクニッシュのNo.1アウディR10は、ロマ・デュマのNo.7ポルシェを接触しながら抜いて前に出てしまった。

Photo:ALMS
マクニッシュとデュマの駆け引きによって、スターティングラインを通過する前マクニッシュはデュマを抜いてしまった。右上にアウディと接触したペンスキーポルシェから脱落したパーツが飛んでいるのに注意。
アラン・マクニッシュのNo.1アウディR10を先頭にして1コーナーへ進入するが、もちろん、直ぐにペナルティの指示が出されて、マクニッシュはピットに入ってきた。
駆け引きに成功したロマ・デュマも、接触によって、ターン4から右リアタイヤの空気圧を失って、ピットに入ることとなった。
先頭争いを行う2台が脱落したため、2番グリッドからスタートしたライアン・ブリスコーのNo.6ペンスキーポルシェがトップとなると思われた。しかし、ブリスコーのペースは上がらず、マリノ・フランキティのNo.26AGRアキュラがレースリーダーとなった。
マリノ・フランキティは圧倒的に有利と思われた。しかし、ターン8で左サイドからタイヤバリアにクラッシュしてしまい、リアウイングに損傷を受けてしまった。
マリノ・フランキティは、No.2アウディR10にブロックされたためのアクシデントによってダメージを受けたと、IMSAに報告している。
その頃ライアン・ブリスコーの乗り組むNo.6ペンスキーポルシェは、オーバーヒートの兆候を示してペースが上げられなかった。テレメトリーによって症状を確認したポルシェのエンジニア達が、慎重に対策を探っていた。
◆自力でマクニッシュのアウディR10がトップに返り咲く
ジャンプスタートによるペナルティによって、アラン・マクニッシュのNo.1アウディR10は一旦10位まで後退してしまったが、この日のマクニッシュは、素晴らし集中力で次々と順位をばん回しつつあった。たった15分後にはマルコ・ヴェルナーの操るNo.2アウディR10を抜いて5位まで進出していた。
その5分後には、ペースの上がらないライアン・ブリスコーのNo.6ペンスキーポルシェとマリノ・フランキティのNo.26AGRアキュラを抜いてトップに躍り出た。
GT2クラスは、大パワーを活かして、スタートでNo.71Tafelポルシェがトップに立つが、No.31ピーターセン/ホワイトライトニングとNo.62リシーのフェラーリが迫っていた。
No.1アウディR10が最初のピットストップを行った際、No.26AGRアキュラがトップに立つ。しかし、その直後、マリノ・フランキティはターン10でタイヤバリアに接触してしまった。そのため、あっけなくアラン・マクニッシュのNo.1アウディR10が再びレースリーダーの座を取り戻した。
ライアン・ブリスコーのNo.6ペンスキーポルシェは、まだオーバーヒートを解決出来ずにペースが上がらず、P2クラスのトップはルイス・ディアスのNo.15フェルナンデスローラ/アキュラとなった。
スタートから1時間が過ぎようとする午後6時、No.3コルベットは、ドライブシャフトを壊してターン3とターン4の間でストップしてしまった。これによって、たった2台のGT1クラスは、もう1台のNo.4コルベットだけとなってしまった。
そろそろ辺りは暗くなり始めており、コース上では彼方此方でマシンが接触して、たくさんのクルマがペナルティを受け、2度目のイエローコーションが提示された。
レースが再開されると、アラン・マクニッシュのNo.1アウディR10がトップ、2位をルイス・ディアスのNo.15フェルナンデスローラ/アキュラが走る。しかし、直ぐにNo.1アウディR10は2度目のピットストップを行って、タイヤ交換、燃料補給、そしてドライバーをアラン・マクニッシュからリナンド・カペロに後退したため、オーバーオールリーダーは、1回ピットストップしただけのNo.2アウディR10となって、No.15フェルナンデスローラ/アキュラは2位のポジションを守っている。
スタートから1時間が過ぎて、GT2クラスはジェイミー・メローのNo.62リシーフェラーリとトーマース・エンゲのNo.31ピーターセン/ホワイトライトニングフェラーリが一騎打ちを繰り広げている。
午後6時26分、クリス・ダイソンのNo.20ダイソンポルシェとステファン・ヨハンソンのNo.9ハイクロフトアキュラがターン10で接触してしまった。共にレースに復帰するが、遅れてしまった。クリス・ダイソンはその直後にもターン6でスピンしてしまった。
このアクシデントによって、3度目のイエローコーションが提示された。
午後6時40分レースが再開されると、GT2クラスは、トーマス・エンゲのNo.31ピータセン/ホワイトライトニングフェラーリが、ミカ・サロのNo.62リシーフェラーリを2.463秒だけリードする。フェラーリ勢を追い上げるNo.45フライングラザードポルシェは、右フロントサスペンションを壊して、ピットに張り付いている。
No.2アウディR10をドライブするマルコ・ヴェルナーとNo.15フェルナンデスローラをドライブするルイス・ディアスは、共に1回ストップでドライバー交代もしていなかった。2時間45分レースの場合、1人のドライバーは最大2時間までしかドライブ出来ない。スタートから1時間50分が過ぎようとする時、No.2アウディR10は2度目のピットストップを行い、ドライバーをエマニュエレ・ピロに交代した。
No.15フェルナンデスローラは、その頃No.20ダイソンポルシェと接触してしまい、その直後、2時間ルールスレスレの午後7時3分2度目のピットインを行った。
No.15フェルナンデスローラがピットインしたため、P2クラスのリーダーはNo.26AGRアキュラとなるハズだった。しかし、No.26AGRアキュラは、2度目のピットストップの際、傾いていたリアウイングを交換したため、P2クラスのトップはアンディ・ウォーレスの操るNo.16ダイソンポルシェとなった。
その10分後(午後7時11分)、GT2クラスのトップを走っていたNo.31ピーターセン/ホワイトライトニングフェラーリは、ターン3とターン4の間でドライバーサイドからコンクリードウォールに叩き付けられてしまった。
火災が発生したが、トーマス・エンゲは助手席側のドアから救出され無事だった。このアクシデントによって、GT2クラスのトップは、ミカ・サロのドライブするNo.31リシーフェラーリとなった。
もちろんイエローコーションが提示されたが、レースが再開されると、レースリーダーはリナンド・カペロの操るNo.1アウディR10となった。
P2クラスは2台のペンスキーポルシェが再びリードしている。

Photo:AUDI AG
そして過酷な2時間45分が終了した。
重い車重と小さな燃料タンクに苦しみながらも、アウディR10は2連勝を達成した。
今回No.2アウディR10は、燃料を最大限使い切ることを目的としたシュミレーションを行っており、セブリングのように、P2カーより5周も早くピットインする事態は解消されつつある。しかし、しばしばイエローコーションが提示されたため、実際に、どれくらいリカバリーしていたのか?外部では判断出来ない。アウディのコメントによると、「来週再び12時間レースを行っても、5周前にピットインすることはない」とコメントしている。
明らかにアウディよりも速く走ることが出来たペンスキーポルシェにとって、2倍以上の巨大なトルクを持つアウディが、スタートで勝負に出ることは、充分に予想出来た。残念ながら、ペンスキーの防御作戦は失敗したと言うべきだろう。しかし、様々なトラブルに苦しみながら、望外の総合3位と4位に輝くと共に、アキュラを寄せ付けずP2クラスの1位と2位を獲得した。

Photo:AUDI AG
1 P1 No.1 AUDI R10TDI Audi Sport North
America 114laps
2 P1 No.2 AUDI R10TDI Audi Sport North
America +0.426秒
3 P2 No.6 Porsche RS Spyder Penske +26.350秒
4 P2 No.7 Porsche RS Spyder Penske +26.466秒
5 P2 No.9 Acura ARX-01a Highcroft +34.079秒
6 P2 No.15 Lola B06/43 Acura Fernandez 113laps
7 P1 No.37 Creation CA06H Judd Intersport 112laps
8 GT1 No.4 Corvette C-6R Corvette Racing 11laps
9 GT2 No.62 Ferrari F430GT Risi Competizione 109laps
10 GT2 No.45 Porsche 997GT3RSR Flying
Lizard 108laps
11 P2 No.16 Porsche RS Spyder Dyson 108laps
12 GT2 No.21 Panoz Esperante GTLM Panoz
Team PTG 107laps
13 GT2 No.44 Porsche 997GT3RSR Flying
Lizard 107laps
14 GT2 No.71 Porsche 997GT3RSR Tafel 106laps
15 GT2 No.73 Porsche 997GT3RSR Tafel 106laps
16 GT2 No.54 Porsche 997GT3RSR Team Trans
Sport 104laps
17 GT2 No.18 Porsche 997GT3RSR Rahal Letterman 100laps
18 P2 No.20 Porsche RS Spyder Dyson 98laps
19 GT2 No.22 Panoz Esperante GTLM Panoz
Team PTG 97laps
20 GT2 No.31 Ferrari F430GT Petersen/WhightLightning 87laps
21 P2 No.26 Acura ARX-01a AGR 84laps
22 P1 No.12 Lola EX257 AER Autocon 38laps
23 GT1 No.3 Corvette C-6R Corvette Racing 37laps *Rドライブシャフト
24 P2 No.8 Lola B07/40 MAZDA BK
Motorsport 26laps *R電気系
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